重症化率、経口薬の確保数、病床の余裕は? オミクロン株の疑問を専門家が徹底解説

重症化率、経口薬の確保数、病床の余裕は? オミクロン株の疑問を専門家が徹底解説

  • デイリー新潮
  • 更新日:2022/01/15

倍々ゲームで増えはじめたオミクロン株。たとえ重症化しにくくても、感染者や濃厚接触者になれば社会活動は制限され、重症化リスクもないわけではない。光は見えつつあるが、いま手を抜いては元も子もない。正しく警戒するためのすべてを、ここに示したい。

***

No image

オミクロン株が猛威を振るう渋谷(22年1月1日)

【写真4枚】メルク社の経口薬「モルヌピラビル」

これほど急激な感染者の増加は、専門家を含むほとんどの人にとって、想定外だったようだ。

週刊新潮」1月13日号では、オミクロン株の蔓延が始まったことを記すうえで、1月3日に東京都の1日当たりの新規感染者数が、3カ月ぶりに100人を超えたと強調した。が、感染者はその後、倍々ゲームで増え、8日には1224人に達した。

同じ8日に沖縄県では1759人の新規感染者を記録。やはり急激に増えた広島県、山口県と一緒に、まん延防止等重点措置が適用されてしまった。事態が進む速さが、デルタ株までと比較にならない。

ちなみに、「まん防」の対象になった3県は、周知のように、米軍基地から感染が広がったと考えられているが、その大本であるアメリカでは、1日当たりの新規感染者数が100万人を超える日も出ている。

7日の時点で、埼玉県ではオミクロン株と疑われるケースが約8割と説明していたが、それから数日を経て、いまでは新型コロナウイルスは、ほぼオミクロン株に置き換わったと考えていいのではないか。

2月上旬に東京で5千人か

では、感染者はどこまで増えるのだろう。名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター長、平田晃正教授は、東京都の1日当たりの新規感染者数は「ピークは3月後半の4千人弱」と予測していたが、

「沖縄などから思った以上に早く、オミクロン株が東京にも流入した可能性があります。また年末年始のデータでは、忘年会開催の割合が前年の3倍、新年会も2倍程度だったようで、主にこの2点が考慮されていなかったため、予測にズレが生じたと思う。これらが感染者増にかなり影響していると考えられます。このためピークの時期は、以前の予測より2週間ほど早まって2月上旬、感染者数は少なく見積もっても5千人に達するのではないでしょうか」

こう説明する平田教授は、オミクロン株の感染力をワクチン効果の相違も含めて、デルタ株の2倍程度と見積もっている。感染力がさらに強ければ、感染者数はもっと増えるだろう。

一方で、重症化率や死亡率はデルタ株と比較して低いという情報もあるが、感染が判明すれば、たとえ無症状であっても隔離されて社会活動を制限され、周囲の濃厚接触者にも迷惑が及んでしまう。

だから、病原性の高低にかかわらず、感染しないに越したことはないが、感染してしまった場合、適切な医療は受けられるのか。家族を守るにはどうしたらいいか。行方が見えにくいときほど、敵を知り、敵を取り巻く状況に通じることが、最大の防御につながる。以下にその方途を記したい。

感染力はデルタ株の3倍?

Q.感染力はデルタ株の何倍なのか?

東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「概ねデルタ株の3倍と考えていいのではないか」

と言い、続ける。

「なぜ感染しやすいかですが、オミクロン株にはヒトの細胞にくっつきやすい特性があること、また、肺よりも鼻の細胞につきやすい可能性があることが挙げられます。身体の奥深くよりも、表面に近いところで増殖しやすければ、体外に多くのウイルスを出しやすいわけです」

だが、東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センター長の水谷哲也教授の話にも耳を傾けたい。

「現状のデータを見るかぎり、オミクロン株の感染力はデルタ株の3~5倍程度と考えるのが妥当だと思います。しかし、その数字自体に大きな意味はありません。国や地域、個人ごとのワクチン接種状況や感染予防対策の度合い、人口および対人交流密度などの要因によって、実際の感染リスクは変わってくるからです。感染力という数字だけを見て、過度に恐れる必要はないと考えます」

Q.空気感染力が増したのだろうか?

浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は、こう説明する。

「エアロゾル感染は認められても、空気感染はないと思います。エアロゾル感染が、同じ部屋にいてうつることを示す一方、空気感染は、空気中に浮遊しながらも強い感染力を保ち、隣の部屋にいても感染するほど、タフなウイルスであることを意味します。とはいえ結核、麻疹(はしか)、水疱瘡の三つが指定されているのみで、オミクロン株にそこまでの感染力はないと思います」

ただし、寺嶋教授はこう付け加える。

「以前は密な空間に30分いたら感染したとして、オミクロン株では、たとえば10分で感染するといった状況が考えられます」

マスクは着用の仕方がポイント

Q.特にどういう場所で感染しやすいのか?

愛知医科大学病院循環器内科の後藤礼司医師が言う。

「オミクロン株も、あくまでも新型コロナウイルスの変異株ですから、以前と変わらず3密空間です。風邪もインフルエンザも同様です。しっかり換気することが重要ですが、それができている空間はいま、かなり少なくなっています。冬は寒いので、ずっと窓を開けている飲食店はほとんどなく、1時間に1回の換気も行われにくい。冬にウイルスが流行しやすいのは、空気の乾燥のほかに、こういった理由もあるのです」

むろん、感染力の高さも考慮に入れておいたほうがよさそうで、埼玉医科大学の松井政則准教授は、

「条件にもよりますが、電車などで感染者がくしゃみをしたら、その車両の人にはうつってしまうでしょう。現在、無症状の人も相当いるはずで、国内の感染者数は、公表されているよりもずっと多いはずです」

と話す。リスクが広く分布しているようだが、どうすればいいか。東京都医師会の角田徹副会長は、

「飛沫感染が主なので、東京都医師会としても、個人レベルで感染対策を、いままで以上にしていただく必要があると考えています」

と訴える。その際、最も有効とされるのはマスクの着用だと思われるが、

Q.ウイルスがマスクを通過したりしないか?

「オミクロン株は、ウイルスがより小さくなったわけではないので、マスクを通りやすくなったということはありません」

と寺嶋教授。ただし、注意事項を矢野医師から。

「重要なのは着け方。ウイルスはマスクと顔のわずかなすき間から漏れ、侵入もするので、顔とマスクのすき間をできるだけ埋めることが重要です。きちんと着用すれば感染予防効果が非常に高いのは、オミクロン株に対しても同じです」

また、松井准教授は、

「ウレタンや布製のマスクではダメ。不織布のものが効果は一番高いことがハッキリしています」

と加える。しかし、後藤医師によれば、

「クリスマス時期や年末年始、感染者が少なくなっていたときは、ウレタンや布のマスクがかなり増えていました」

マスク着用の仕方は、見直したほうがよさそうだ。

家庭感染の防ぎ方

Q.家庭内感染はどう防げばいいか?

松井准教授が言う。

「電車内よりずっと密な家庭内では、家族のだれかがオミクロン株を持ち込んだら、すぐに全員が感染してしまうと思います。家庭内にリスクの高い高齢者や基礎疾患がある方、もしくは受験を控えたお子さんがいる場合は、食事の場所や生活空間を分け、こまめに換気をするなどの対策をしたほうがいいと思います。寒くても1時間に1、2回は窓を開けましょう」

水谷教授も強調する。

「ただでさえ感染力が強いので、家庭内感染はこれから増えていくと考えられます。飲食店やイベントなどの3密回避は、国が主導して行えますが、家庭内の対策には政府も容易に介入できません。しかし、感染対策で一番難しいのは、実は家庭内感染をいかに防ぐか、です。特に受験を控えたお子さんがいる家庭では、これから1カ月程度は、家族団らんの場でもマスク着用を心がけることなども、考慮していいと思います」

Q.高齢者や持病もちも重症化しにくいのか?

「重症化のリスクはデルタ株にくらべ、イギリスでは3分の1だといわれていましたが、日本の様子を見ていると、もっと低いようにも見えます」(松井准教授)

とはいえ、高齢者が安心していいということではない。後藤医師が言う。

「現状、感染しているのは、仕事を含めて社会活動が活発な若者が中心ですが、かかったときの危険性は、高齢者のほうが高いでしょう。持病があり、合併症を引き起こす危険性があるなど、余力がありませんから」

日本の65歳以上の高齢者は、ワクチン2回接種率が92.1%に達し、それで重症化が抑えられる可能性が指摘されている。しかし、水谷教授によれば、こんな盲点もあるようだ。

「高齢者は誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高く、注意が必要です。オミクロン株に“上気道でウイルスが増殖しやすい”という特性があるということは、結果的に、口腔内でのウイルス増殖を招きます。誤嚥性肺炎とは、口の中で増殖したウイルスなどが肺に達して起きる肺炎。高齢者の死亡率が高い誤嚥性肺炎とコロナ感染が併発すれば、非常に危険で、細心の予防対策を続けてほしいです」

病床の状況は

Q.熱が出たら病院で診てもらえるのか?

「感染者が増えてきたいま、指定病院でなくても発熱患者は別の窓口を設け、受けつけていると思います。ただ、冬場は診療体制が整いにくく、心筋梗塞や肺炎も冬に多くなります」

と、後藤医師は言う。だから寺嶋教授も、

「いきなり病院を訪れるのは、避けたほうがいい」

と注意喚起し、続ける。

「風邪のような症状があったら、発熱外来やコロナ診療を行っている近くの病院を探し、電話してみましょう。自治体の発熱相談センターに電話し、紹介してもらう手もあります」

Q.そもそも病床は足りているのか?

角田副会長が話す。

「国は当初、オミクロン株の感染力が強いのを理由に、感染者は全員入院という措置をとるように求めていましたが、感染者が増えるとそれは難しい。第5波までと同様、感染者は家族への感染を避けるためにも、ホテル等の療養施設に入っていただきたく、現状、都の療養施設は感染者を受け入れる余裕が十分にあります。療養施設なら、私どもも患者さんを効率的に診察できます。在宅診療に関しても、各自治体の先生方が受け入れ態勢について、ネットワークをしっかりと構築できていると思います」

では、入院が必要な状態になったときはどうか。

「東京都の確保病床数は6919床で、入退院時に消毒が必要なので、稼働の上限は全体の8割程度ですが、5600床程度は使えます。10日時点の入院患者は767人なので、まだ余裕があります。第5波では、保健所による入院調整の業務が回らなくなりましたが、その後、都庁の調整本部の機能が、かなり強化されています。その点でも、第5波のときより有効に病床を利用できるようになっているはずです」

一方、矢野医師は、以下のような懸念を示す。

「医療従事者の感染が増えていますが、病院内でうつったケースは稀で、大半は同居家族が感染し濃厚接触者になったか、家庭内で感染したと考えられる。現状、医療体制は整っていますが、医療従事者の感染がこれ以上増えれば、医師や看護師の不足から医療機関が機能不全に陥り、医療逼迫を招く事態も否定できません」

沖縄でなにが起きているか

感染者が急増した沖縄の現状も、聞いておいたほうがよさそうだ。沖縄県の北部地区医師会病院の田里(たさと)大輔医師(呼吸器・感染症科)が説明する。

「隔離するための宿泊施設を、増やす必要があると思います。感染者の増え方が早いと、そういうところにしわ寄せが来ます。沖縄ではホテルが使えず自宅療養になり、家族にうつさないために車中泊をするようなケースも出ています。感染者が増えすぎて保健所が追い切れず、検査のキャパシティも超え、検査予約も4、5日待ち。クリニックも対応できず、“症状が軽ければ自宅で様子を見てください”と言うしかない。検査も、受診や診断も、ホテル療養も難しくなっています。見かけ上、患者が減ってきているのは、検査ができていないから。今後、全国的に同じことが起こりうるので、療養施設の確保、検査体制の拡充を急いだほうがいいと思います」

そうならないためにも、不織布マスクの正しい着用など、個人の対策が重要だということだろう。

経口薬に期待できるのか

Q.メルク社が開発した経口薬「モルヌピラビル」はすぐに飲めるのか?

角田副会長は、

「第5波と違うのは、経口薬があること。国は昨年末までに、全国に20万回分のモルヌピラビルを配布しています。都への割り当ては約1割で、60代以上の重症者や、基礎疾患のある軽症者から中等症の方に処方できるようになっています」

さらに確保数でいえば、

「政府は60万人分を確保しているといいます。約6千の機関で処方のための登録が済んでいるようで、今後、医師の処方箋があれば、入手は可能になってきます」(寺嶋教授)

だが、矢野医師は「過剰な期待を寄せないほうがいい」と、こう説く。

「高齢者や基礎疾患がある人、重症化リスクの高い患者に限定して処方されると考えるべきで、効果も入院や死亡リスクを30%程度低下させるものにすぎません。また、副作用として胎児への悪影響の可能性が指摘されるので、妊婦はもちろん、若い女性全般への処方も控えられるでしょう」

松井准教授が加える。

「ファイザーの経口薬パクスロビドは、重症化リスクを89%下げてくれて、副作用があるとも聞かないので期待できます。日本でも2月か3月には特例承認されると思います」

インフルエンザに近い症状

Q.無症状、軽症、中等症、重症の割合は?

「オミクロン株の入院および死亡リスクが、少なくともデルタ株の3分の1以下なのはたしかで、これは朗報といえます」

と水谷教授は言うが、そのメカニズムについては、

「デルタ株はウイルスが肺で増殖しやすかったのに対し、オミクロン株は鼻やのどなどの上気道で増殖しやすい、という特性と関係していると考えられます。しかし、明確な理由はまだ解明の途上です」

感染が爆発している沖縄では、どんな症状なのか。田里医師が説明する。

「デルタ株にくらべ症状自体は軽く、インフルエンザに近い症状と言っていいと思います。のどの痛みやイガイガ、鼻水や鼻づまりなどが主な症状です。デルタ株では自覚症状がなくても、レントゲンやCTで肺炎が見つかることもありましたが、肺炎の患者さんはほとんどいません。味覚や嗅覚の異変も、身体の節々の痛みもない。熱は39度近く出る人もいますが、2~3日で収まるパターンが多い。デルタ株は症状が1週間以上長引くことがありましたが、感染から2~3日で症状が出て、2~3日でスッと引きます。症状が出てから4~5日経って来院されると、もうピークを越えていることが多いのです」

沖縄では、感染者のうち無症状者と軽症者が92%を超える。ただし、無症状者も比較的少ないが、重症者はほとんどおらず、250名が入院して、人工呼吸器の装着者はゼロだという。

「入院患者さんも、以前は肺炎の症状がある中等症以上で、その一部は酸素を吸っている状況でしたが、いまは重症化を予防する目的で、重症化リスクの高い患者さんを選び、抗体療法を行う目的で入院していただいています」(同)

まん防よりミクロ対策

Q.後遺症の心配はないのか?

矢野医師が説明する。

「重症化リスクが低いので、後遺症も、過度に心配する必要はないと思います。症状が軽いということは、それだけ後遺症も少なく、あっても軽度で治まると考えたほうが自然です」

Q.潜伏期間が短いというが、すると流行期間も短くなるか?

沖縄の田里医師は、潜伏期間が「2~3日」と述べたが、すると、流行期間も短くはならないのか。

「国立感染症研究所などのデータでは、オミクロン株の潜伏期間は3.5日。デルタ株の4~5日にくらべ、4種類ある風邪のコロナウイルスの約3日に近づいています。潜伏期間が短ければ、ウイルスが体内に留まる期間も短くなり、流行期間も短期になる可能性が高い。ピークアウトするのは、デルタ株より早いと考えられます」(矢野医師)

事実、南アフリカは、デルタ株では感染の波が収まるのに4カ月かかったのに、オミクロン株は1.5カ月で波が引いている。流行期間が短いとわかっていれば、気の引き締めようもあるというものだろう。

一方、岸田総理は冒頭で記したように、3県にいち早くまん延防止等重点措置の適用を決めた。また、日本医師会の中川俊男会長は、各都道府県は「まん延防止重点措置や緊急事態宣言の要請を準備しておくべきだ」という認識を示した。

だが、ウイルスの性質が変化したのに、相変わらずの人流制限に意味はあるのか。医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授が言う。

「国はこれまでも、経済的損失が大きく効果は薄い対策に終始していて、適切だったとは言いがたい。飲食店への一辺倒の休業要請がいい例で、これまでの対策を反省して対応を変えるべきです。マスクや換気などミクロレベルの対策が十分でないまま、いたずらに経済活動を止めても、損失のわりに効果が薄すぎます」

3回目のワクチン接種が喫緊の課題

『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』の著書がある、元厚労省技官の医師、木村盛世氏も述べる。

「まん防や緊急事態宣言を求める声がありますが、まったく歯が立たないと思います。すでに感染は市中で広がり、ある程度感染者が出れば波は収まります。第1波では緊急事態宣言が出る前に人流も感染者数も減っていたし、第2波では宣言が出ても人流は減らず、しかし感染者数は減っていった。経済や文化的生活を犠牲にしてまで、こういうものを出しても無駄です」

世界一厳しい水際対策を行いながら、米兵は基地から検査なしに入国し、マスクをせず市中を徘徊していた事実一つとっても、政府の対策はチグハグにすぎる。水際対策は特別に強化せずとも、もっと早く米兵に検査とマスク着用を促すだけでも、感染の急拡大は防げただろう。水谷教授は、

「医療従事者の感染拡大が大都市圏でも起きれば、病床は余っていても病院が機能不全に陥りかねない。医療従事者や高齢者への3回目のワクチン接種を前倒しで進めることこそ、政府に求められている喫緊の課題だと思います」

と提言する。オミクロンにはワクチンの効果が薄いと懸念する声もあるが、イギリスの報告によれば、

「オミクロン株へのワクチンの効果は、3回目を打てば発症予防に70~75%、重症化予防には85%と、十分に発揮されることがわかっています」

と、松井准教授。政府は必要な対策をとれるか。その間、われわれは一人一人が意識を高め、できるだけ感染を防ごうではないか。

「週刊新潮」2022年1月20日号 掲載

新潮社

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加