乃木坂46「過渡期を迎えた清楚アイドル」の現在地

乃木坂46「過渡期を迎えた清楚アイドル」の現在地

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/05/14
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5期生11人が加入した乃木坂46(画像:乃木坂46 5期生お披露目特設サイトより)

5月14、15日に、初の横浜・日産スタジアムでの単独ライブを開催する乃木坂46。日産スタジアムといえば、収容人員7万2000人超という国内最大級の大会場。そこでの2日間公演ですから、乃木坂46の変わらぬ集客力の高さを物語っています。

今回の公演は「10th Year Birthday Live」と題して行われるもので、その名の通り、CDデビューから10周年を記念したライブです。2012年2月22日にファースト・シングル『ぐるぐるカーテン』でデビュー。

例年、その“デビュー記念日”前後に行われてきた「Biithday Live」を今年は3カ月ほど遅れで開催。コロナ禍による、まん延防止等重点措置の発令や、2月にメンバー2人の“卒業コンサート”が相次いだり、節目となる10周年ということでの綿密な準備期間を設けるなど、さまざまな事情が重なってのことと思われます。

乃木坂らしさとは一体何か?

そんな正に節目を迎える乃木坂46の周囲では、3月にリリースされた通算29枚目のシングル『Actually...』という曲や、加入したばかりの5期生2人の活動自粛などを巡り、“乃木坂らしさ”とは?といった議論がネットを中心に今もなされています。

そこで今回は遅ればせながら、この“乃木坂らしさ”について、いろんな観点から筆者なりに考察してみたいと思います。

昨年10月にLINEリサーチが発表した「いちばん好きな女性アイドルグループ・ランキング」で3年連続して1位に輝いた乃木坂46。主宰者によると調査対象は全国の10~60代の男女、およそ60万人で、乃木坂46は男性の10~40代までと女性20代が1位に推しています。その多くが魅力として挙げたのは「ビジュアルの高さ」「清楚な雰囲気」だったとリポート。

そもそも乃木坂46は、AKB48の“公式ライバル”として結成されました。庶民的な街である秋葉原を拠点にしたAKB48に対し、六本木と赤坂というオトナの街の間に位置する乃木坂をグループ名に冠する、清楚なお嬢さまイメージが出発点です。こうした清楚なイメージを支えているのは、メンバー個々のルックスに加え、衣装の持つチカラも無視できないのではないでしょうか?

衣装には徹底したイメージ戦略がとられている

乃木坂46は、他の女性アイドルグループに比べ、肌(腕や脚を含む)を露出する割合がかなり抑えられています。典型的な例がスカートの丈。自らの冠番組である『乃木坂工事中』(テレビ東京系)をはじめ、さまざまな番組に出演する際、メンバーは“制服”と呼ばれる統一した衣装を着ることが多く、ほとんどの場合がロングスカート。

その丈はメンバーが横並びになったときに、膝の位置前後で横一線に揃って見えるよう(メンバー間の身長差があるため、若干の違いはあるものの)、計算されています。

特に3期生が加入した2017年以降はこれが徹底されているようです。それを裏づけるのが、4月24日にキャプテンである1期生・秋元真夏の、自身のラジオ番組内での発言。

リスナーから「真夏さんのスカートだけ短くない?」という質問がされた際、「私のスカートはかなり以前に作っていただいたものもあって、少し短いものも、いまだに直さず着ていたりします。3期生が加入した辺りから丈が横一線になるよう統一されているので、それで悪目立ちしちゃったのかも」という内容の話をされていました。

昨年末、リリースされた初のベストアルバム『Time Flies』のジャケットにも、その衣装の変遷が垣間見られますが、乃木坂46の清楚なイメージは、こうした細かい点から積み上げられたものなんだと感じ入った次第です。

乃木坂46もデビューからしばらくは、女性アイドルグループらしい、賑やかで明るめな、いわゆる“アッパー系”の楽曲が続いていました。その路線が変わるキッカケとなったと思われるのは、2013年3月にリリースした5枚目のシングル『君の名は希望』。

この曲は、それまでの打ち込みドラムやシンセサイザー系のアレンジから、ピアノなどの生楽器を前面に立てた、しっとりとした曲調が、清楚なイメージの乃木坂46に合致したものと言えます。2015年暮れに彼女たちがNHK紅白歌合戦へ初出場した際、リリースから1年半以上も経っていたこの曲が披露されていることが、何よりの証左ではないでしょうか?

支持を集めている楽曲トップ10

そこで筆者は、これまでの乃木坂46の楽曲の中で、ファンから最も支持を集めているのは何かを調べてみました。集計の基にしたのは、複数あるファンサイトと、カラオケチェーンが随時発表しているアーティスト別の人気曲ランキング。その中から今年=2022年に入ってから更新されている
6つのデータを独自に数値化し、ランキングにしたものがこちらです。

① 『サヨナラの意味』(2016年11月)
② 『シンクロニシティ』(2018年4月)
③ 『インフルエンサー』(2017年3月)
④ 『帰り道は遠回りしたくなる』(2018年11月)
⑤ 『何度目の青空か?』(2014年10月)
⑥ 『きっかけ』(2016年5月/アルバム収録曲)
⑦ 『制服のマネキン』(2012年12月)
⑧ 『ガールズルール』(2013年7月)
⑨ 『裸足でSummer』(2016年7月)
⑩ 『君の名は希望』(2013年3月)
※カッコ内はリリース年・月

6位の『きっかけ』を除く9曲は、シングルの標題曲ですね。その『きっかけ』は、Mr.Childrenの桜井和寿が寺岡呼人、Kと共にライブイベントでカバーしたことでも知られ、メンバーの遠藤さくらがYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」にソロで出演した際にも選曲。さらに昨年末のNHK紅白歌合戦でも披露されるなど、ファンはもちろん、メンバーの間でも非常に支持されている曲です。

さて、ここで乃木坂46楽曲の作曲家に着目してみましょう。まず前提として、リリース前からミリオンセールスが見込まれる、大人気アイドルグループだけに、多くの「才能」から「勝負曲」が贈られているということがありますが……。

その中で最重要人物と目されるのは、杉山勝彦。先述の『きっかけ』『君の名は希望』、そして1位の『サヨナラの意味』、7位の『制服のマネキン』という4曲はいずれも、彼が作曲したものです。

1982年生まれでフォークデュオ「TANEBI」のギタリストとしても活動する杉山は、この他にも『僕は僕を好きになる』『ごめんねFingers crossed』『最後のTight Hug』などの人気曲を手掛けていて、産みの親である秋元康から「本当の天才」と評されるほど。

杉山の作る曲は、生楽器を多用した、しっとりとした質感を持つものが多く、現在確立されている乃木坂46の楽曲イメージを作り上げたと言っても過言ではないと思います。

また、作詞はご存知の通り、全て秋元康が手掛けているわけです。上掲にランクされた楽曲をはじめ、その歌詞を分析してみると、「別れは新たな出発点」というテーマを持つ『サヨナラの意味』『帰り道は遠回りしたくなる』や、「つまらない日常からの脱却」というテーマの『きっかけ』『制服のマネキン』などに加え、「自己肯定感を高めろ」「広く隣人を愛そう」「希望を持ち続けよ」という、青年期の若者へのメッセージが多いというのも、乃木坂46楽曲の特徴です。

さらに、女性アイドルにも関わらず、歌詞の一人称が「僕」、二人称が「君」という歌詞が多いのも特筆すべき点。当然と言えば当然ながらターゲットを若き男性に置いていることの証左であり、同時にその世界観を作り上げているように思います。

“乃木坂らしさ”の正体

という具合に、筆者なりのアプローチで“乃木坂らしさ”の最大公約数は何かを掘り下げてみました。上述したものに加え、バラエティ番組などで彼女たちが見せる「健気さ」「懸命さ」「純粋さ」や、メンバー個々の醸し出す「儚さ」「切なさ」が強いというのも乃木坂46のイメージかもしれません。これらを踏まえた上で、今回の論議の発火となった点にお話を戻します。

3月にリリースされた新曲『Actually...』を作曲したのは、乃木坂46に提供するのは初めてのNAMITOという方で、曲は打ち込み主体のクラブ志向の高いダンスナンバー。歌詞にも冒頭から英語のナレーションが挿入されたりと、これまでの楽曲とは異なるテイストに満ちています。

しかも、楽曲の“顔”となるセンターポジションには、加入間もない5期生の中西アルノを大抜擢。馴染みのない曲調に、馴染みのないメンバーが中心でいることに、乃木坂ファンの多くが違和感を抱いたのは想像に難くありません。

また筆者の個人的感想ではありますが、中西アルノのビジュアルイメージが、これまでのメンバーにはないクールさが強かったことも大きいのではないでしょうか。歌詞も、「自己肯定感を高めろ」という類ではあるものの、これまで以上に詩的な表現が多く散りばめられているという印象です。

そして、この『Actually...』が、配信番組「乃木坂46時間TV」内で初めて披露された直後に報じられた、中西アルノと、この時点では未公表だった新メンバー=岡本姫奈が「グループの活動規約に違反していた」(運営側のコメント)ことによる、活動自粛の発表。

4月27日に東京国際フォーラムで開催された「5期生 第2回お見立て会」と題したイベントで中西、岡本ともに騒動への謝罪の言葉を述べた上で復帰を果たしましたが、このイベントはネット配信などが行われず、ひっそりと開催された印象です。

過渡期にさしかかっている乃木坂46

結成から10年余を経て、グループから卒業するメンバーが相次いでいる乃木坂46。2021年は1年間で8人、今年に入ってからも既に3人がグループを離れ、当初34人(本格活動前辞退者は除く)いたオリジナルメンバー=1期生は、いまや4人、2013年加入の2期生に至っては僅か2人にまで減少してしまっています。メンバーの大半が3、4期生となり、そこへ5期生11人が加入するという、正に世代交代の真っ只中、いわば過渡期に差し掛かっています。

活動期間が長くなれば、どんなグループでも一定の「イメージ」が定着してしまうのは当然のこと。

その中で、10年目のBirthday Liveを迎えるにあたって、乃木坂新時代をアピールしようとした運営側の思惑は理解できるものの、そこに最悪のタイミングでスキャンダルが重なったことで、多くのファンの持つ、「清楚」「純粋」「健気」というイメージと真逆の「黒さ」「闇」がチラリと見えたことに激しい反発があったのが、今回の事態でしょう。

“乃木坂らしさ”は、メンバーが入れ替われば少しずつ違いが生じてくるものなのは致し方ないことだと思います。それでも、例えて言えば3年でメンバーが総入れ替えしても「伝統」や「校風」を受け継ぎ「強豪」であり続ける高校野球のチームのようになる。それがいまや大看板となってしまった「乃木坂46」の抱える宿命なのかも……。筆者はそんなふうに感じました。

(小林 偉:メディア研究家)

小林 偉

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