「企画のダメ出しばかり繰り返す上司」の残念な言い訳 〈和田秀樹(精神科医) 〉

「企画のダメ出しばかり繰り返す上司」の残念な言い訳 〈和田秀樹(精神科医) 〉

  • PHPオンライン 衆知|PHP研究所
  • 更新日:2022/09/23
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せっかく考えた企画なのに、上司に難癖をつけられて通らなかった、そんな経験のあるビジネスマンは少なくないはずだ。なぜ上司は部下にそのような態度を取ってしまうのか。また、企画を通すにはどうしたらいいのか。和田秀樹氏が解説する。

※本稿は、和田秀樹著『なぜあの人の意見が通るのか』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

“難癖をつける上司”の心理

20代の頃の私は、反感を買う材料に十分だった。大学時代から「アイドルプロデュース研究会」でマスコミに注目され、ライター業も始めた。加えて「東大卒業」という冠のおかげで受験本を書くきっかけに恵まれた。それがさらに大ヒットし、100万部著者になった。だから周囲からは「若造にこれ以上手柄をとらせてたまるか」と思われていたに違いない。

盤石な意見をつくったところで、相手に「この意見を通したくない」という感情があれば通らない。「あいつ、若いから鼻をへし折ってやろう」と意地悪されることだってあるだろう。若さへの嫉妬もあれば、学歴へのひがみもあるかもしれない。

つまり、盤石な意見にもかかわらず通らない背景には、相手に「通したくない」というモチベーションがある可能性が高い。

しかし、あなたの意見は未来永劫通らないわけではない。通したくないモチベーションが発生するには"わけ"がある。それを把握し、取り除く努力をすれば、道が拓ける可能性もある。

あなたがホームページのリニューアルを手掛けていたとしよう。特に就職活動中の学生さんに、自社の良さをもっと知ってほしいと思っている。だから社内で活躍する先輩方にホームページに登場してもらい、会社や仕事の魅力を語ってもらおうと考えた。

よくある企画かもしれないが、企画にリスクはつきものだ。もしかしたら、ホームページに登場した先輩が注目され、ヘッドハンティングされるかもしれない。カワイイ女性社員がツイッターで話題になり、ストーキング被害にあうかもしれない。

「そんなことを言い始めたらキリがない」と思われるかもしれないが、減点主義の会社ではリスクにおびえる上司も多いのだ。

こんな上司は、いくつかの戦略であなたの企画をつぶしにかかる。1つは、いろんな角度から「難癖」をつけることで、あなたが企画を取り下げるのを待つという方法だ。

前出のように「ヘッドハンティングされる」「ストーキング被害にあう」というリスクを前面に出す上司もいるだろう。度胸のない上司だと思われるかもしれないが、リスクヘッジは管理職の仕事のうちだ。彼は仕事を全うしているとも言えなくもない。

また費用対効果をネチネチと突く上司もいる。

「先輩方の記事を作るのにいくらかかるの?」
「制作会社に問い合わせたところ、ライターやカメラマンの人件費を合わせて、1人あたり15万円だそうです」
「で、15万円かけてうちに応募する学生は、何人増えるの?」

...そんなのわからないよ、と言いたくもなるだろうが、費用対効果の検証も上司の仕事。上司はこんな難癖をつけながら、あなたが企画を取り下げるのを待っているのだ。

なぜ、ハッキリと断ってくれないのか。それは責任をとりたくない上司は、「企画を却下する」責任すらとりたくないからだ。

もし競合他社が世界を舞台に活躍する先輩社員をどんどん紹介し、挙句の果てに新聞で「グローバル企業TOP 50」などと紹介された日には、企画を却下した自分が責められてしまう。これで競合企業に優良大学の学生が集まった日には、責任問題だ。

だから「あの企画はあいつが潰した」と言われないよう、「提出者自らが企画を取り下げた」格好にしたいと上司は考える。おそらく彼らは、会社員人生で培った知恵と経験を総動員して、「質問」という名の「難癖」をつけ始めるだろう。もし難癖に負けたら、あなたは相手の作戦にはまったといえる。

「責任の香り」がする提案に、彼らは見て見ないふりを決め込むかもしれない。冒険的な新商品などはいい例だろう。大失敗のリスクがあるのに、工場に頼んで製造ラインを整えなければならないし、新しいカタログを作ればコストがかさむ。彼らにとって、こんな「ハイリスク」な案件は見たくもないから、やっぱり難癖をつけるのだ。

いずれにしてもあなたは難癖という名の質問に答え続けなければならない。でも面倒臭いと諦める必要はない。難癖をつけるということは、少なくともあなたの意見は相手の琴線に触れているという証拠だ。

圧迫面接を乗り切ったら向こうの姿勢が「YES」に転じることもある。あなたがどれくらい本気なのかを見定めている可能性もあるので、タフなメンタル力で乗り切ればいいのだ。

なぜ、あなたの意見だけがはぐらかされるのか

とはいえ、すべての上司が難癖上司なわけではない。なかには、「可愛い子には旅をさせよ」とばかりに、部下の冒険に腹をくくってくれる上司もいるだろう。

しかし、そんな男前な上司であっても、1つだけ気になることがある。それは、あなたに企画を任せるだけの度量と覚悟があるのか、ということだ。

たとえばアイディア重視の会社では「質より量」とばかりに思いついたアイディアをどんどん提出させる。しかし、一言否定されただけでどんどん取り下げていくような人間には企画を任せられないのだ。

たとえば、あなたは上司から意見を流されたり、はぐらかされたりした経験はないだろうか。もしくは聞いてはもらえるものの、いまいち関心を示してくれなかったり、「また後で」と言われながら延々と待たされたり。これには2つの原因が考えられる。

1つは、前出の「難癖」上司のように、上司が責任回避を図っているパターン。私がより深刻だと思っているのは「あなたの実行力に信用がおかれていない」パターンだ。

前出の「難癖」上司は、少なくともあなたに「NO」という意思表示をしてくれた。でも「はぐらかし」上司は、YESともNOとも言わない。

むしろ、あなたから提示された意見や企画をなかったことにしようとしている。あなたの企画に真剣に向き合う時間も労力も惜しい、と言わんばかりの態度ではないか。

あなたが実行しようとしている企画は、おそらく費用を伴うだろう。ホームページのリニューアルでさえ、少しイジくったら数十万の費用が伴う。正社員を1カ月稼働させる程度の金額になるだろう。薄利多売のビジネスモデルに移行しつつある企業であればなおさら、出費が惜しいのだ。

あなたは、それを考慮して本気で提案しているだろうか。もっと言うなら、自腹を切ってでもその企画をやりたいと思っているだろうか。どうせ会社の金だから、とは思っていないだろうか。

「上司にはぐらかされる」と腐っている場合ではない。あなたが認識すべきは、あなたの企画で会社に不利益がもたらされる可能性があるということだ。

あなたが上司でも、先行き不透明な企画ははぐらかしたくなるはずだ。かといって、意地悪な質問をするのも面倒だし、ダメと断ったらやっぱり責任が発生する。だから、はぐらかしているのだ。

もし本気なのだったら、「また後で」と言われても、「また後で」企画をもっていけばいい。「じゃあ、いつだったらいいですか」と言ってアポイントをもらってもいいだろう。

それもしないで「さっきは君の意見を流して悪かったね」と上司が歩み寄ってくれるのを待つ方が甘いのだ。もしかしたら、あなたのその甘さを見透かされている可能性すらある。

また「ダメならダメと言ってください」と詰め寄ってみるのも手だろう。「ダメではないけど、この点が悪い」と具体的な指摘をもらえることもある。つまり、あなたに「もうひと踏ん張り」する勇気としつこさがないと、いつまで経っても意見は通らないのだ。

それでもダメなら、ダメモトで上司の上司に話を持っていくといい。「やってみなはれ」と言ったサントリーの創業者のように、いい上司との縁が生まれるかもしれない。

和田秀樹(精神科医)

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