MISIA、宮本浩次、Mr.Children......Bank Bandとゲストによる映画のように強いメッセージ 『ap bank fes ’21』レポート

MISIA、宮本浩次、Mr.Children......Bank Bandとゲストによる映画のように強いメッセージ 『ap bank fes ’21』レポート

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  • 更新日:2021/10/14
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Bank Band(写真=樋口 涼)

まるで映画のように、強いメッセージを訴えかける“作品”だった。2005年から、環境問題や災害支援などをテーマに掲げてきた野外音楽フェス『ap bank fes』。今年はサステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」から、『ap bank fes ’21 online in KURKKU FIELDS』と題し、初の無観客配信での開催となった。10月3日に生配信されたが、今回は、10月10日に追加スペシャルライブも合わせて配信された「特別版」の模様をレポートしていきたい。

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広大なKURKKU FIELDSの自然からはじまった映像に、これまでの『ap bank fes』の写真が挟み込まれていく。そこに重なるように〈忘れられない人がいる/どうしても会いたくて/またここへ来る 思い出の場所へ/その人のために今は 何もできない〉と、櫻井和寿が歌い出す。Bank Bandのパフォーマンスだ。これまでも彼らが演奏してきた、小田和正の「緑の街」。今の状況に寄り添いすぎていて、しょっぱなからグッときた。あいさつのように定番の、Bank Bandのオリジナルソング「よく来たね」ではないところにも、対面の再会までこの楽曲を取っておいているのだろうか? などと想像してしまう。続いては、キリンジ「Drifter」。〈人形の家には人間は棲めない/流氷のような街で/追いかけてたのは逃げ水〉――美しくも壮絶な名曲が、早くも登場した。演奏が終わると、櫻井が「はじまりました、『ap bank fes ’21』!」と初めてのMC。「カメラの向こうにニコニコ笑顔がいるイメージで」と言い、今響くべき一言一句が詰まった中島みゆきの「糸」を聴かせた。

ここで小林武史が口を開き、ひとり目のゲストである、『ap bank fes』初登場のmiletを紹介する。胸に手を当てて現れたmiletは、少し緊張気味にも見えたが、ひとたび「inside you」を歌い出すと、印象的な歌声を伸びやかに響かせる。「胸が高鳴って、どっか行っちゃいそう!」とピュアな笑顔を見せると、続く「なんてことない日の美しさ」を描いた「Ordinary days」も、誠実に歌い切った。

ふたり目のゲストは、小林の「『ap bank fes』皆勤賞」という言葉で呼び込まれたシンガー……そう、もちろんSalyuだ。〈涙の後には虹が出る〉という名フレーズを歌う彼女に呼応するように、午後の陽光が緑を輝かせていく。そして「THE RAIN」。彼女の歌声とBank Bandの演奏は、さすがに阿吽の呼吸だ。観ている一人ひとりの気持ちだけではなく、今の時代の空気も押し上げていくように感じられた。

次に小林が、9月29日にベストアルバム『沿志奏逢 4』がリリースされたことを告知する。今作の選曲を引っ張ったのはレコード会社の男女ひとりずつのスタッフで、エゴからはじまったのではない『ap bank fes』は、スタッフの意見も鑑であるということ、そしてスタッフの女性が推したのが、次の楽曲であるということを明かした。〈晴れわたる空に白い雲 君とぼくがいて/なんでもないんだけど ただ笑ってる〉――登場したKANが歌い出したのは、こんな日にぴったりの「何の変哲もないLove Song」だ。しかし、いつもながら、その衣装はファンキー。ギラッギラの黄色で羽根まで背負っている。しかし、何のコメントもしないまま演奏を終え、鍵盤の前に座り「愛は勝つ」を畳みかける。もう、語らずとも曲が語る、それぐらいの強い曲ということは、誰もがわかるだろう。

熱唱の後、やっと「少しオシャレしてきました」と言っていたけれど、今度は誰もが画面を見ながら突っ込んだだろう、少しじゃない、と。ちなみに、この衣装につられて、ハチが寄ってきたそうだ。気づけば隣に登場した櫻井も、羽根を背負っている。「Mr.Childrenの方ですか?(KAN)」「違います(櫻井)」などといったやり取りを挟み、KAN曰く「今最もやりたい曲」である「君のマスクをはずしたい」へ。タイトルも雄弁だけれど、曲調的にも、ミュージシャン冥利につきるであろうロックンロール。Bank Bandも楽し気な演奏を聴かせ、トドメは櫻井がKANのギターに蹴りを入れ、真っ二つに! こんなユーモアも、フェスには必要不可欠だ。最後は、KANと櫻井がふたりきりで、ひねくれ心やウィットやチャレンジ精神を感じさせる「弾かな語り」(弾き語りの真逆です)で、それぞれの持ち味を生かした、かつ息の合った歌声をたっぷりと聴かせて、エンディングを迎えた。

ここからは、生配信にはなかった、Mr.Childrenの追加ライブへ。花道から登場した4人は、『ap bank fes』ならではのリラックスした表情。桜井和寿の「戻ってきました!」という言葉と、JENが高々と掲げるピースサイン。そしてはじまったのは「彩り」。〈ただいま〉〈おかえり〉――桜井とメンバーが歌い合う温かな空気が、Mr.Childrenのバンド感を証明しているようで、たまらない。続いては、ライブの名場面を思い出さずにはいられない「HANABI」。画面に向かって多くの人が〈もう一回 もう一回〉と歌いかけたのではないだろうか。そして、美しいアコギの音色が響く「I’ll be」へ突入。気迫の歌と演奏からは、Mr.Childrenというバンドのメッセージ性や、この4人からしか生まれないグルーヴが、ひしひしと伝わってきた。ラストナンバーは、自然に囲まれたシチュエーションにぴったりな「口笛」。最後はメンバーが横一列に並び、一礼してステージを去った。

お楽しみは、まだまだ終わらない。ここからは、またBank Bandに戻り、小林が「ついにこの方を」と迎え入れたのは宮本浩次。Bank Bandのメンバーにおじぎをして歌い出したのは、久保田早紀の「異邦人」で、早くも最高潮のボルテージに持っていく。続く「風に吹かれて」でも、土を触り石を持ち、やりたい放題。「ハレルヤ」では、ステージを降り、走りまくり、「エビバデに幸多かれ!」と叫ぶ。そう、その想いがゆえに、彼は全力なのだ。すっかり惹きこまれてしまい、「悲しみの果て」では、画面の前で熱唱してしまった(のは、私だけではないはず)。そして、いきなりピークからはじまる「P.S. I love you」で、「ユー! ユー! ユー! ユー!」と、四方八方を指し、届け切ってステージを降りた。

すっかり暗くなった会場。小林の「圧倒的な歌唱力を聴いていると、透明になる、浮遊する感覚になる」という印象的な紹介から登場したのは、MISIA。「アイノカタチ」は、その言葉が頷けるような感覚を、画面越しでも味わえた。画面越しでも、声量そのものが伝わってくるのだ。また、これだけ実力を持ったシンガーなのに、演奏を食わずに調和しているところにも、彼女のスタンスが表れている気がした。最後は、届け! と言わんばかりに手を振り投げて、エンディングを迎えた。

いよいよフェスもクライマックス。Bank Bandに戻り、まずは櫻井がフジファブリックの「若者のすべて」を歌い上げる。そして「みんなの前で歌える。この上ない充実をいただけて感謝しています」と、真摯な言葉。そして「自分以外の誰かのためを想って演奏したい」と、『ap bank fes』のコンセプトを再確認させてくれる「奏逢 ~Bank Bandのテーマ~」へ。さらに、Salyuと共に、まさに楽曲に込められたメッセージに心が震える「MESSAGE -メッセージ-」と、畳みかけていく。

そして、ここでお待ちかねの宮本浩次 × 櫻井和寿 organized by ap bankの新曲「東京協奏曲」。稀代のフロントマン同士が、お互いすうっと立ちながら、ぶつかり合い、生かし合うハーモニーに、真のパワーを感じた。ふたりで肩を組んで手を掲げたラストは、『ap bank fes』の歴史に刻まれる名場面になると思う。その壮大さの後で、とことんパーソナルを突き詰めるSyrup16gの「Reborn」を奏でる流れもよかった。

そして、Bank Band feat.MISIAの「forgive」で、また壮大な世界観へ。〈えんやこら〉というフレーズと、燃え盛る炎に、魂を奮い立たせられる。北海道の「北海盆唄」、山形の「最上川舟歌」、そして宮城の「大漁唄い込み」などの民謡と、J-POPが見事に融合したような、究極の邦楽。これぞ『ap bank fes』ならではの演奏だった。

ついに訪れたラストは、小林の「この曲が寄り添って、いろんな想いと共に旅を続けていくことを願って」という言葉から、「to U」。櫻井とSalyuの歌、そしてBank Bandの演奏が、祈りのように響き渡る。リリースされた2006年から、驚くほどにこの楽曲は、小林の言葉の通りに、時代に寄り添い、私たちを支えてきた。〈悲しい昨日が 涙の向こうで/いつか微笑みに変わったら/人を好きに もっと好きになれるから/頑張らなくてもいいよ〉――配信を観終わっても、この楽曲は余韻のように耳の奥で鳴り続けている。

今、自分が欲していたもの、社会にとって必要なもの、あらゆるものが、『ap bank fes ’21 online in KURKKU FIELDS』にはあった。『ap bank fes』の特別な意義、そして音楽やフェスが私たちに与える作用を、強く感じることができた配信だったと思う。(高橋美穂)

高橋美穂

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