
上がらない給与に減る年金……老後不安が高まる現役世代にとっていまや「資産形成」は必須といえます。そのようななか、忙しい現役世代の資産形成にオススメなのが、少額からはじめられて運用をプロに一任できる「投資信託」です。今回は、投資家・実業家としての顔をもつタレントの杉原杏璃氏が、投資信託の「分配金」に対する考え方と、投資信託のメリット・デメリットについて解説します。
投資信託の運用益は分配金と売却益
投資のプロは、投資信託ごとに決められた運用方針に基づいて、様々な投資先にお金を分散して運用を行います。
例えば、日本の株式のみに投資を行うもの、アメリカや日本など先進国の株式に投資を行うもの、新興国に投資を行うもの、金などに投資を行うものなど、豊富な種類があります。
投資信託の運用益は分配金と売却益です。
分配金をわかりやすく言うと「投資信託の運用益や元本から投資家に分配するお金」のこと。分配金は全ての投資信託にあるわけではありません。
分配金のあり、なしや分配頻度は投資信託によってそれぞれ異なります。また、分配金ありの投資信託でも、運用成績によっては分配金が出ない場合もあります。

著者の杉原杏璃氏
写真提供:株式会社フィット
どちらを選ぶかはその時の判断になりますが、ほったらかしの長期運用を考えるなら「分配金なし」がおすすめです。運用益から分配金を出す場合は、元本に運用益を加えた分を更に運用する、いわゆる「複利の効果」が得られなくなるからです。
しかし、経済状況により少しずつでも定期的に現金を得たいなら「分配金あり」です。運用成績が悪い場合は、分配金が出ないこともあると知っておいてください。
売却益は株式投資と一緒です。投資信託商品を購入して、その基準価額が購入時より上がっていたら売却。株と同じで、安く買ったものを高く売ったその差額がそのまま利益になります。
基準価額とはわかりやすく言うと「投資信託の値段」のことです。基準価額は、投資信託が保有する資産の値動きによって上下し、1日に1回更新されます。個別株と違って、投資信託は複数の資産を運用したその日の保有資産の評価額なので、1日単位で更新されるわけです。
個別株にはない、ほったらかし投資向きの投資信託「5つ」のメリット
メリット1.運用はプロにお任せ
株式投資の場合、どの銘柄にどのくらいの金額を投資するのか、すべて自分で判断しなければなりません。投資の知識や手法は奥深く、まったくの初心者が1から学習・習得するにはそれなりの時間と手間がかかります。私はいきなり始めたので「習うより慣れろ」でスタートしてもいいと思います。
その点、投資信託は投資信託会社が、どの銘柄にどのくらいの金額を投資するのかその時々で最適を選んでくれるので、投資家個人が難しい知識や手法を覚える必要はありません。
豊富な知識と経験を持つ投資信託会社は、個人が買えない株式や、手を出しにくい債券にも投資できるので、資産運用の幅が広がります。
メリット2.分散投資でリスクを抑える
株式は最低売買単位が100株〜と大きいため、有名な銘柄に投資しようと思うと、まとまった資金が必要になります。そのため、まとまった資金のない個人では銘柄をいくつも購入することができず、分散投資するのが難しい場合があります。
また、1つの銘柄だけに投資し、運用がうまくいかなかった場合、大きく損をしてしまう可能性もあります。
一方投資信託は、運用会社が複数の投資家から集めた資金を元手に国内外の株式や債券、不動産などに分散投資してくれます。複数の銘柄に分散投資しておけば、1つの銘柄がイマイチだった場合でも、他の銘柄の利益でカバーすることも可能であるため、リスクを分散することができます。
メリット3.少額から投資可能
今では100円からでも購入できる証券会社もありますが、一般的に株式を売買するには、ある程度まとまった資金(最低でも30万円くらいは用意したい)が必要になります。
投資信託は複数の投資家から資金を集めるため、1人あたりの投資額は少額で済みます。なので、初心者の方にとっても安心です。具体的な額は販売会社によって異なりますが、多くの場合は5000円程度から投資できるため、家計への負担を抑えながら資産運用することが可能です。
メリット4.透明性が高く、安心
投資信託は、監査法人などの行政から監督・審査を受けているので、投資の透明性が高いと言われています。また、市場が開いている間は絶えず値動きする株価や外国為替とは違い、投資信託は1日に1回だけの公表です。細かい値動きはありませんから、日中はチェックできない方にとっても安心です。
メリット5.自分向きの投資信託を選べる
投資信託は商品によって、投資の対象や運用方針などがそれぞれ異なります。投資家は豊富な商品の中から、自分の好みや方針、ニーズに合ったものを選べるため、納得して資産運用を行えます。
投資信託にある「3つ」のデメリット
投資信託にはメリットがあればデメリットもあります。ここでは私の考える投資信託のデメリットを解説します。投資信託には次の3つのデメリットがあると思います。
デメリット1.元本保証がない
投資信託は、銀行預金のように預けた金額が全て戻ってくるという元本保証はありません。市場の動向によって値段が動くため、買った時よりも価格が上がることもありますが、逆に下がってしまうリスクもあります。
商品にもよりますが、経済動向や為替レートの変動、社会情勢などにより投資信託の価格は日々変化していきます。儲かる可能性がある一方で、損をするリスクがあることを覚えておきましょう。
デメリット2手数料がかかる
投資信託を購入・保有・売却するには、それぞれ販売手数料、信託報酬、信託財産留保額という手数料がかかります。株式の場合は買付時と売却時しか手数料がかかりませんが、投資信託では保有時にも手数料(信託報酬)がかかります。そのため、保有しているだけで手数料がかかるという点は、株式と比べるとデメリットと言えます。しかし、インデックスファンドなら手数料が無料な場合も。
デメリット3.利益に税金がかかる
投資信託を購入し、分配金や売却益を受け取った場合には、利益に対して20・315%の税金がかかってしまいます。せっかく儲かったのにもかかわらず、約20%も税金がとられてしまうのは、大きなデメリットの1つと言えるでしょう。
そのためにもNISAやつみたてNISAを使って、非課税制度を活用されることをおすすめします。
杉原 杏璃
投資家/タレント/実業家