猫と人間の関係性──私たちはなぜコロナ禍で彼らを求めてしまうのだろう?

猫と人間の関係性──私たちはなぜコロナ禍で彼らを求めてしまうのだろう?

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/07/12
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先日、新型コロナウイルスの感染が広まったニューヨークで保護犬・保護猫の引き取りの申し込みが急増したというニュースが目にとまった。

新型コロナによる在宅勤務生活が始まってから、私も何度か「猫を飼いたいな」と思ったことはあったからだ。同時に、大きな疑問も現れた。

私たちはなぜ(特に新型コロナ禍で)猫を求めるのだろう、ということだ。

外出自粛による孤独を埋める癒しの存在として? それとも単に家で過ごす退屈しのぎの遊び相手として?

つまり、人間にとって猫とはなんぞや、ということを考える良い機会なのかもしれない。そしてその定義は新型コロナによってどう変わった(または変わらなかった)のだろうか。

猫と人間の幸せな付き合い方を考察すべく、猫のエキスパートたちに話を聞いた。

新型コロナ禍で売れ続ける猫専用トイレ

「おかげさまで、新型コロナが逆に追い風のようになっています」。こう驚きを口にするのは、猫専用のスマートトイレ「トレッタ」を開発販売するトレッタキャッツ(神奈川県藤沢市)取締役の松原あゆみさんと、前職が保護猫カフェ「ネコリパブリック」(ネコリパ)店長で、3月にトレッタキャッツに加わった嬉野千鶴さん。

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トレッタキャッツ取締役の松原さん

トレッタは、猫が排せつするたびにセンサーで猫の体重や尿量、尿の回数などを測定し、スマホアプリで飼い主に通知するスマートトイレ。数値は、トレッタキャッツの獣医師もチェックしており、異常が見られた猫に対してはLINEでアラート通知が出される。健康管理などについて獣医師に相談できるオンライン往診も行う。

初代トレッタの後継機「トレッタ2」を今年2月に発売したところ、1日で在庫150台が完売し、4月に再販したものの、今度は1時間で150台が売れてしまったそう。

松原さんは、「新型コロナによって、飼い猫の居住環境をよくしたいという、飼い主さんたちの思いが強くなったのではないかと思います」と分析する。

「人々がペットに費やすお金は増えていると思います。特に医療の面ですね。『ペット』というよりも『家族』としてしっかり育てる意識が大きくなっている気がします。だからこそ、ペットテック市場は単価は高いにも関わらず伸び続けているのかなと」

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トレッタキャッツの猫エバンジェリスト(伝道師)の嬉野さん。取材中、何度も猫が画面に現れた

また猫を12頭(!)飼っているという嬉野さんは、自身も在宅時間が増えたことで、猫の面倒をより丁寧に見ることができるようになったという。

「以前は毎日お店に勤務していたので、日中は家を空けていました。なので帰宅したら最低限の世話しかしてあげられず、『猫たちの身に何かあったら後悔するかもしれない』と思っていたのですが、今は在宅勤務なので、猫たちの状態をよく見ることができています」

ペットとの関係性から得られる利益

元々はネズミを退治してくれる「使役動物」だった猫だが、時代とともにどんどん人間に近い存在になり、現在は「愛玩動物」(つまりペット)となって世界中で愛されている。今回の新型コロナは、この関係性をさらに変化させるのだろうか。

「人とコンパニオンアニマルの関係」をテーマに研究する帝京科学大学生命環境学部准教授の濱野佐代子さんは、人間とペットの関係性の歴史的変遷を基に、新型コロナ禍のペットの役割を分析する。

「犬や猫は、使役動物からペットに変わる過程で、実用的な利益から『関係性から得られる利益』に変わってきたとよく言われています。つまり、直接猫が何かをしてくれるわけじゃないけれども、その関係から人間が恩恵を受けるようになったということです」

濱野さんによると、この「関係性から得られる利益」は、大きく3つに分けられる。1つは、楽しい気持ちになったり孤独感が軽減されたりする「心理的利益」、次に対人関係を円滑にする潤滑剤になる「社会的利益」、そして心身の健康に良い影響を与える「身体的利益」だ。

このうち、特に2つ目の「社会的利益」の効果が、新型コロナ禍において大きいと濱野さんは見ている。

「ペットの役割の一つとして、『人と人との間を繋ぐ』というものがあります。特にコロナ禍においては、「家族の仲をつなぐ役割」というのが非常に有効になっているのではないかと思います。実際飼い主の方に話を聞いてみると、在宅勤務になって閉鎖された空間で過ごすことになり、夫婦でケンカが増えたけれど、ペットと交流することでストレスが軽減されて救われたという声がありました。こうした、人間関係や争いごとを緩衝してくれる役割が効いているのではないでしょうか」

保護猫の引き取りが増加、ペット店の売上も好調

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保護猫と触れ合える日本のペットカフェも (GettyImages)

新型コロナを機に猫を飼おうとする人々の心理についても、考えてみたい。

先に述べたように、米ブルームバーグの報道によると、ニューヨークのあるシェルターでは引き取り依頼が急増し、保護猫がほぼいなくなった。また日本でも同様の変化が起きており、西日本新聞によると、熊本県や大分県などで4月の犬猫の譲渡数が昨年同月比で増加しているという。

また全国にペットショップを展開するアレンザホールディングス(福島市)の売上推移速報によると、既存店売上高は2020年2月から4カ月連続で前年同月比を上回っており、5月は前年比で18%増加した。

人はなぜ、こうした社会情勢の中で猫を求めるのだろうか。

嬉野さんによると、ペットの里親募集サイトでは、台風や大雪などで人々が在宅せざるを得ない日にはPV数が上がるのだという。コロナ禍でも同様に「結局、新たな趣味に手を出すのと同じように、時間ができたので猫の飼育を始めてみるという人が増えているんだと思います」と分析する。

松原さんは「ずっと飼おうと思っていた人たちにとっては、飼い始めるいいタイミングなんだと思います。猫って、最初飼い慣らすまでの1カ月くらいは、家を空けるのが不安じゃないですか。そういう意味では、在宅の時間が増えたことがきっかけになっているのかなと思います」と指摘。この「飼いならす期間が確保できる」というメリットは、今回取材した別の猫の専門家たちも口にしていた。それでは、猫と人間がより幸せに暮らすには、どんな工夫が必要だろうか。7月12日21時に公開される後編へ続く。

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