憲法9条に規範力・統制力を復活させるために

憲法9条に規範力・統制力を復活させるために

  • アゴラ
  • 更新日:2022/05/14

これまでの累次の憲法審査会で、緊急時の政府による権限行使を統制するための緊急事態条項について繰り返し提案してきました(3/173/243/31のブログ)。

今日の審査会では、国民民主党憲法調査会でまとめた具体的な条文イメージ(下記)を配付し、国会でも議論を深めようとしたのですが、幹事会の了承が得られず配布することができませんでした。とても残念です。

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国民民主党憲法調査会(3月25日)資料 (クリックするとPDFが開きます

審査会でも申し上げましたが、かつての言いっぱなしの放談会に逆戻りしてはいけません。審査会運営を主導する立場の自民党、立憲民主党には、議論のテーマを拡散させることなく、一つ一つ結論を出していくことを改めて求めたいと思います。

その上で、今日は憲法9条についての国民民主党の考え方を示しました。2015年の安保法制である種空文化した憲法9条に規範力・統制力を復活させるための提案をしています。ご一読ください。

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Moeru Matsunoo/iStock

■憲法審査会発言メモ(2022年5月12日)

今後の審査会の運営について

まず今後の審査会の進め方について、一言申し上げたい。これまで、緊急事態条項、国民投票法について議論を行ってきたが、一つ一つのテーマについて一定の意見集約を行ってから、次のテーマに進むことを求めたい。

憲法審査会において、オンライン国会についての憲法解釈を取りまとめることができたのは画期的だったが、コロナ禍で明らかになったこの他の憲法上の課題については優先的に議論し、速やかに一定の結論を得るべきだと考える。特に、緊急事態条項、とりわけ、議員任期の特例延長の必要性については、本審査会で概ね合意が得られていると考えられることから、具体的な改正案について議論すべきである。

そのために必要は有識者からの意見聴取、特に、憲法54条2項の「緊急集会」が解散時だけでなく、任期満了時にも認められるのか否かについての参考人からの意見聴取は早急に行うべきである。また、国民投票法についても、ネット広告規制について、インターネット事業者等からのヒアリング、そして、私がこれまで何度も提案しているケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏からの意見聴取も優先的に行ってほしい。

とにかく、議論したテーマについて、具体的な意見集約を行わずに、次のテーマにいってしまうと、また言いっぱなしの憲法審査会に逆戻りしてしまうので、ぜひ、議論のテーマを拡散させることなく、一つ一つ結論を出していく運営をお願いしたい。そのためには、分科会方式や小委員会方式による運営を検討いただきたい。

なお、緊急事態条項について、これまでの審査会での議論も踏まえた上で、国民民主党として条文案を取りまとめている。ぜひ、その全体イメージについて、資料を配付の上、改めて説明させていただきたい。本日の配付は幹事会で残念ながら認められなかったが、会長の取り計らいをお願いしたい。

9条について

ロシアのウクライナ侵略、そして厳しさを増す我が国を取り巻く安全保障環境の中で、安全保障のあり方や憲法9条のあり方について関心が高まってきている。そこで、国民民主党としての9条を論ずるにあたっての基本的考え方を述べて起きたい。これは2020年12月に取りまとめた国民民主党の「憲法改正に向けた論点整理」にまとめている。

〈不文律による規範力・統制力の限界〉現行憲法9条は、2項で戦力の不保持と交戦権の否認を定める一方、現実の防衛政策として、国際的には戦力と言える自衛隊を保持している。この条文と現実との乖離を埋めるため、政府は、現実を追認する形で、

「戦力」は保持できないが、「自衛のための必要最小限度の実力」(=自衛隊)は保持できる「交戦権」は否認されるが、「自衛のための必要最小限度の実力行使」(=自衛行動権)は容認される

という、一般国民にも国際社会にも容易に理解しがたい政府解釈の積み重ねを繰り返してきた。

その結果、憲法9条は現実を規律・統制する規範力を事実上失ってしまった。さらに、2015年、これまで政府が一貫して堅持してきた「集団的自衛権の行使は違憲」という立場を一転させ、戦力不保持、交戦権否認をうたう憲法9条のもとで、集団的自衛権の一部容認にまで踏み込んだ安保法制を成立させたことで、憲法9条の規範力・統制力はいよいよ限界を突破し、9条2項の空文化に拍車をかけたと言える。逆に言えば、憲法改正の必要性が著しく低下したとも言える。

〈明文化により憲法の規範力・統制力を強化する必要性〉そこで、国民民主党としては、日本国憲法の三大原理の一つである「平和主義」の理念を堅持しつつ、厳しさを増す安全保障環境の中で、現実的な対応をとる必要性を正面から認め、憲法9条に国家の最高法規としての規範力・統制力を復活させることが必要だと考える。その上で、現在の解釈ではできないことは何か、改正によって追加的に得られる意義、必要性は何かを冷静に見極める必要がある。

〈9条の論点整理〉複雑怪奇な解釈がなされている憲法9条の規範性を復活させるためには、これにつきまとってきたイデオロギー対立から自覚的にいったん身を離した上で、次の3つの論点を分けて整理して、冷静な議論が必要だと考える。

【論点1】安全保障政策として「自衛権行使の範囲」について、憲法上どこまで認めることとするのかという論点【論点2】その自衛権を担う実力組織としての「自衛隊の保持・統制に関するルール」をどのように規定するかの論点【論点3】【論点1】【論点2】の検討から導き出された「自衛権行使の範囲」「自衛隊の保持・統制に関するルール」と、9条2項の「戦力の不保持・交戦権の否認」との関係をどのように整理するかの論点

〈まず議論すべきは「自衛権」〉国民民主党としては、自衛隊を明記するかの形式的な議論の前に、その自衛隊にいかなる自衛権の行使を憲法上認めるのか、そして、その自衛権の行使を行う実力組織は「戦力」あるいは「軍隊」なのかという本質的な議論が必要だと考える。

なぜなら、この本質的な議論をしないと、仮に自衛隊という組織名が憲法に明記され、「存在」についての違憲性が解消されても、その自衛隊が行使する自衛権の行使という「行為」についての違憲性の疑義が残るからである。

次回以降、必要に応じて、先に述べた3つの論点に沿って、憲法9条に規範力・統制力を復活させるための国民民主党の条文イメージについて述べたいが、議論の参考とするため、新藤幹事に、自民党の改憲4項目の条文イメージ(たたき台素案)について2つ質問したい。

自民党の条文イメージ(たたき台素案)の9条の2第1項に規定された自衛隊は「戦力」あるいは「軍隊」という位置付けなのか。9条2項を残しながら、同項は「必要な自衛の措置を妨げず」としているが、その場合、これまで9条2項から導き出されてきた「必要最小限」という解釈は引き継がれるのか、それとも「必要最小限」の制約は外れているのか。

以上2つについて、自民党の考え方をお示しいただきたい。

自民党は、いわゆる敵基地攻撃能力の保持の必要性を提言されたが、相手領域内の軍事施設等を狙って長射程のミサイルを打った場合、仮に「誤爆」が起きた時に、誤爆した自衛官が処分されるのか、それとも上官が責任を負うのか、あるいは究極の上官たる国家が責任を負うのか、考え方を教えて欲しい。

ちなみに、業務上過失致死の国外犯規定は日本の刑法にはないし、そもそも、こうした軍事作戦にまつわる過失等を平時の法体系である刑法で問うことが適当なのかという問題がある。その意味でも自衛隊が「戦力」あるいは「軍隊」なのかという議論を曖昧にし続けることができなくなっていることを指摘しておきたい。その際は、「防衛裁判所」的な特別の裁判体系も必要だと考える。

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衆議院インターネット中継より

編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2022年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

玉木 雄一郎

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