YouTube CEOを育てた“シリコンバレーのゴッドマザー”が明かす「人間育て」で大切な“5つの価値観”とは

YouTube CEOを育てた“シリコンバレーのゴッドマザー”が明かす「人間育て」で大切な“5つの価値観”とは

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/04/07

「子どもたちがやるべきことだから」イーロン・マスクの母親とも共鳴した“型破り”で“ユニーク”な子育ての秘訣から続く

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スティーブ・ジョブズ親子の授業を担当し、自身の長女はYouTube CEOに就任。教師として、そして母として、数多くの著名人を育てたことから、シリコンバレーのゴッドマザーと呼ばれる女性がいる。その女性の名はエスター・ウォジスキー。

彼女の型破りでユニークな教育方法を紹介した書籍『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。ここでは同書より、翻訳を担当した関美和氏によるあとがきを引用。自身も2人の子どもを育てた経験を持つ翻訳者は、アメリカ教育界のスーパースターが記した教育方法をどのように受け止めたのだろうか。(全2回の2回目/前編を読む)

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反省と後悔と、前向きな気持ち

50代も半ばを超え、2人の子供も成人し、「あの時はこうすればよかった」「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」と思い返すことが多くなった。未熟な自分を振り返り、誰かを傷つけてしまったことを悔やみ、今ならもっと上手に問題に向き合えたのにと思ってしまう。

本書を読んでまず感じたのは、「タイムマシンに乗って過去に戻れたら、この本の教えを使ってもう一度やり直したい」という、反省と後悔の入り混じった気持ちだった。だが一方で、「これからでも間に合うかもしれない」と前向きにもなれた。この本にも書いてあるとおり、完璧な親などいないし、誰もが失敗するし、そんな自分を許すことが周囲とのより良い人間関係を作っていく第一歩になる気がしたのだ。

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アメリカ教育界のスーパースターとして知られるエスター・ウォジスキー氏 © Jo Sittenfeld

著者のエスター・ウォジスキーは、シリコンバレーでは知らない人のいない教師でありスーパーマザーである。その理由は、彼女が育てた3人の娘たちにある。長女のスーザンはグーグルの16番目の社員としてグーグルの急成長を支え、その後動画配信サービスのユーチューブを率いる素晴らしいリーダーとなった。次女のジャネットは医師となり、貧困層やマイノリティにおける肥満の問題に取り組んでいる。三女のアンは、消費者向けの遺伝子検査を手がける草分け的企業の23アンドミーを設立した。23アンドミーは2021年にも上場が予定され、その時価総額は日本円で3000億円を超えると言われている。

「TRICK」とは

本書に描かれているとおり、グーグルは長女のスーザンが住んでいた家で生まれた。スーザンが住宅ローンの支払いの足しにと、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジにガレージを貸し出したのがきっかけだ。実はその後、三女のアンとセルゲイは結婚し子供をもうけることになる(その後離婚している)。ある意味で、グーグルを生み出し育てた功績の一部は、ウォジスキー家にあるとも言える。

エスター・ウォジスキー自身は、地元パロアルト高校の名物教師だった。貧しいユダヤ系移民の二世としてアメリカで育ち、苦労して大学を出たあと、当時男性しかいなかったジャーナリズムの世界に入り、結婚後は高校でジャーナリズムを教えた。公立のパロアルト高校にジャーナリズムのプログラムを開き、高校新聞を含むメディアを生徒に運営させた。授業にいち早くテクノロジーを取り入れたのもエスターである。3人の娘が有名になる前から、エスターが運営するジャーナリズムのプログラムから優秀な学生が世界で活躍していたことから、彼女の教授法は話題になり、カリフォルニア州の最優秀教師にも選ばれている。

そのエスターの教え方の核になっているのがトリック(TRICK)の価値観である。トリックとは、トラスト(信頼)、リスペクト(尊重)、インディペンデンス(自立)、コラボレーション(協力)、そしてカインドネス(優しさ)の頭文字をつなげた言葉だ。この価値観を実践することはつまり、子供も親も自身とお互いを信頼し、尊重し、お互いが自立できるように行動し、力を合わせ、いいところも悪いところも受け入れて寛容に接していくということだ。そうすることで、冒険心があり、逆境において打たれ強い人格が形成される。すなわち、謙虚さと大胆さを持ち合わせた真のイノベーターが生み出される。

人生を楽しみながらお互いに成長すること

もちろん、エスターはイノベーターを生み出すためにこの教育法を実践してきたのではない。彼女が目指したのは、親も子どもも教師も生徒も人生を楽しみながらお互いに成長することである。長年の経験を振り返って、そのプロセスの核になったのがこの5つの価値観だったと気づいたのだ。そこで、自身が長年実践してきたメソッドをこの本にまとめて公開することになった。彼女がその半生をかけて成功と失敗を繰り返しながら積み上げてきた「人間育て」のメソッドは、年齢や文化や環境に関係なく効果がある。私も「今からでも遅くない」と背中を押された気がした。

内閣府の調査によると、日本の若者は諸外国と比較して自己肯定感が低く、将来に対して最も悲観的であることがわかっている。社会を息苦しい場所にしているのは私たち大人であることを謙虚に認め、次の世代のために何ができるかを考えた時に、このトリックの哲学はひとつの指針になり得ると思っている。子どもたちに「あなたを信頼し、尊重している」と行動で示し、周囲の人たちと力を合わせ、優しく接する姿を大人が見せることで、世の中が少しでも変わっていくことが著者の願いであり、翻訳者であり親であり教師でもある私の願いでもある。

【前編を読む】YouTube CEOを育てた“シリコンバレーのゴッドマザー”が明かす「人間育て」で大切な“5つの価値観”とは

(関 美和/ノンフィクション出版)

関 美和

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