手始めに「コンビニ」。目指すは時価総額1兆円の企業

手始めに「コンビニ」。目指すは時価総額1兆円の企業

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/10/16
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おにぎりや弁当、パスタ、飲料、酒類をロボットが商品棚に陳列する──。そんな「次世代型コンビニ」の1号店が2020年9月、オープンした。ローソンの「Model T東京ポートシティ竹芝店」だ。

DX(デジタルトランスフォーメーション)で業務効率化し、人によるおもてなしサービスをする時間を増やす。また、ファミリーマートも、ロボット開発スタートアップと提携し、都内店舗で商品陳列の実証実験をはじめることを発表。22年までに最大20店舗で展開する方針という。

このコンビニ大手2社が手を組んだのが、富岡仁がCEOを務めるTelexistence(テレイグジスタンス)社だ。同社は17年1月に創業。東京大学名誉教授、同社会長のたち すすむが1980年、世界で初めて提唱したテレイグジスタンス(遠隔存在)技術の概念に基づいた遠隔操作・人工知能ロボットの設計・製造・運用を行う。テレイグジスタンスとは「遠隔のロボットを自分の分身として利用し人間を時空の制約から開放しようとする」概念である。

そのテレイグジスタンス社に18年11月、シリーズAで投資をしたのが、渡邊拓が投資ディレクターを務めるDEEPCOREだ。なぜ、渡邊は富岡率いる同社に投資をしたのか。

渡邊:我々は人工知能(AI)にフォーカスしたVCですが、「日本発、世界で勝てる」「人類規模でムーンショットを打てる」というスタートアップは、AIとハードウェアを掛け合わせることで生まれるのでは。そういう仮説を持ちながら、18年7月にはじめて富岡さんにお話を伺いました。

最初の印象は、「誰もやったことがない、一番難しいことを一番狂った手でやろうとしている」と(笑)。弊社CEOの仁木勝雅とともに2回目にお話ししたタイミングでその場で投資を決めました。

富岡:ベンチマークする企業がなく、リスクの高い事業を行っているので、投資判断が難しい。仁木さんは終始、無表情で「ダメだ」と思いながら話をしていたのですが、終わったら「やりましょう」と言われ「本当に!?」と驚いたことを覚えています。当時から「新しいコンビニを作って、ロボットを導入する」と話していましたからね。いまでこそDXの文脈で追い風ですが、構想段階の当時で「いいね」とその場で言ってくれたのは、渡邊さんと仁木さんだけでした(笑)。

渡邊:コンビニへのソリューション提供ではなく、「コンビニをつくる」ですから。荒唐無稽に見えるかもしれませんが、私たちの投資仮説の一つに「リアル店舗をつくり直さなければならないのでは」があったため、違和感というより納得感でした。

渡邊:また、富岡さんたちは起業家として「イーロン・マスク」をベンチマークしていた。「上場して時価総額4桁億円(=ユニコーン)を目指す」という話には全く興味がなかったことも惹かれました。また、「未来の拡張労働力」の話にも感動しました。

富岡:機械による生産性と労働者の報酬が、共に上昇していた状況から1972年に分岐。60年代に産業用ロボットが米GMの工場に導入され、生産性は上がる一方、労働者の報酬は上がらない状況が続き、その差はますます拡大していきました。つまり、ロボットによる生産性の向上の利益が個人に回っていない。ロボティクスの会社として「本当にそれでいいのか」と。

ロボットを工場の外で使い、個人がロボットを資産として持ちながら、ロボットが働くことで、人がより意味のあることに時間を使えるのではないか。「5G」時代に、遠隔存在の技術を用いたロボットを使い、労働力を拡張していくという話ですね。

渡邊:今後の富岡さんへの期待は、時価総額1兆円企業になってもらいたい。同1兆円だと、売り上げ1000億円以上が必要になる。その規模になるか、ならないか、は創業前に決まる。Telexistence社はそれをクリアしているし、かつ、来るべき未来を人類規模で描けるスタートアップでもあると思っていますから。

富岡:100倍成長以上の結果を求められていますね(笑)。ロボットの世界には「モラベックのパラドックス」という言葉があります。ロボットに簡単なことは人間に難しく、人間に簡単なことはロボットには難しいという意味。僕らは、これをブレイクスルーしたい。これができると、人間の生活領域に近いところでロボットが働くと言うのが見えてくるし、100倍成長も見えてくる。

その手始めが、コンビニであり、小売りです。究極は、ロボットが働いて、人間は好きなことをやる「不労の世界」をつくりたいですね。カルトチックですが(笑)。

わたなべ・ひろ◎DEEPCORE Director,Incubation&Investment。個人でスタートアップへの投資・支援を行いながら、AI特化型インキュベーター兼VCのDEEPCOREへ2017年に参画。主な投資先は、New Innovations、Liaro、BABEL、ChillStackなど。

とみおか・じん◎Telexistence(テレイグジスタンス)代表取締役CEO。スタンフォード大学経営大学院修士。2004年に三菱商事に入社。16年にシリコンバレーのグロースキャピタルファンド「Geodesic Capital」を組成。2017年1月に同社創業。

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