【インタビュー】ANCIENT MYTH、変貌を遂げた最新作『ArcheoNyx』

【インタビュー】ANCIENT MYTH、変貌を遂げた最新作『ArcheoNyx』

  • BARKS
  • 更新日:2021/07/21
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ANCIENT MYTHが7月7日にアルバム『ArcheoNyx』をリリースした。

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ヨーロッパでも発売されたリレコーディング・ベスト盤『Aberration』(2016年)の際には、世界的に知られる<Metal Female Voices Fest>にも出演し、初の欧州ツアーも行われるなど、バンドの飛躍が文字通りに刻まれる活動を見せていたが、本作では以前とは別のバンドと言ってもいいほどの進化が遂げられている。

間違いなく史上最高傑作と称しても過言ではない仕上がりだ。初めて採り入れられたオペラ的歌唱法や、効果的に配されたオーケストレーションなどもポイントだが、何よりも楽曲の充実度が光る。持ち前のシンフォニックなメロディック・スピード/パワー・メタルは格段に説得力が増している。彼女たちは何を思い、未来を見据えていたのか。メンバー全員に話を訊いた。

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■ヨーロッパの強豪と戦を交えていくには
■ボトムアップしないと難しい

──今となってはオリジナル・メンバーは一人もいませんが、現在のANCIENT MYTHの魅力はどんなところにあるのか、それぞれ2018年と2020年に加入したShibukiさん(Dr)とKohei(G)さんに話を訊けば、その辺りも自ずから見えてくると思うんです。

Shibuki:そもそも最初はサポートドラマーとして参加させてもらったんですね。東名阪のツアーが決まっている中で、当時のドラムの方が急に出られないことになって、一月ちょっと前ぐらいに知人を通して誘ってもらったんです。そこから連絡をとって、曲を聴かせてもらったんですけど、その東名阪の3daysも楽しかったし、音楽性もすごく好きだったんですよ。その後、Halさん(Key)からまた連絡をいただいたんですね、「入っちゃいなよ」みたいな(笑)。

──それまでANCIENT MYTHの音楽は聴いたこともなかったんですね。

Shibuki:そうですね。正直、日本でガッツリとシンフォニック系メタルをやってるバンドを全然知らなかったんですよ。ただ、自分の中でバンドに参加するというのは、どちらかというとドラムを叩くというよりは作曲とかアレンジに参加することに大きな意味があると思ってて。それができるバンドだということもわかったので、加入させていただいたんですね。だから最初のミーティングのときには、早速、曲を書いていって聴いてもらって。

──音楽的にはどんなところに魅力を感じました? シンフォニック・メタルといっても、いろんなバンドがありますよね。

Shibuki:自分が好きな一番好きなバンドの一つがNIGHTWISHなんですね。あそこもメインの女性ヴォーカルがいて、壮大なオーケストラで盛っている音楽ですよね。メロスピ要素はあまりないかもしれないですけど、ANCIENT MYTHはそういうことができるバンドかなと思って。ドラミング的なところで言えば、自分はそこまでメロスピドラムって得意ではなかったんですよ(笑)。でも、そこはチャレンジだと思って。Michalさん(Vo)のヴォーカルもめちゃくちゃデカい一つの魅力だと思うんですね。Halさんがアレンジしていることなどは後々にわかっていったんですけど、しっかりとフルオーケストラのオーケストレーションができる人がいることからも、すごく力のあるバンドだなと感じました。

Kohei:僕はあるとき、Michalさんからギターを弾いてくれないかという話があったんですね。それ以前にライヴを観たこともあって、人柄も知っていて信頼できる先輩たちだったので、そういうのも含めていいなと思って加入したんです。エゴ的な部分で言えば(笑)、僕はもともとTHE GENIUS ORCHESTRATIONというメロディック・スピード・メタル・バンドをやっているんですけど、月に何本もライヴをやるような状況にはないんですよね。その意味では、ANCIENT MYTHに入ることで、自分を人に知ってもらうキッカケが増えますし。いろんな人と音を交えたい思いもめちゃくちゃ強いんですね。今まで女性ヴォーカルに合わせてギターを弾いたことはなかったですし、ギターとキーボードという組み合わせもなかったんですよ。それもやってみたいなと思う理由でしたね。ただ、そこからしばらくはライヴができなかったですけどね、コロナウイルスのせいで。とはいいつつ、アルバムの制作期間で顔を合わせる機会も多かったので、活動が止まっている印象もないんですよ。このメンバーでもっと魅力的な音楽を届けるために活動していきたいなと今は思ってます。

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▲Shibuki(Dr)

──ANCIENT MYTHの音楽についてはどんな印象があったんですか?

Kohei:シンプルにこの世界観がカッコいいなと。もともと女性シンガーのバンドを聴いてこなかったので、声楽っぽい歌い方をするバンドもあまり知らなかったんですよね。ストリングスの音とか疾走感のあるリズムとか、クサいとか言われるメロディもすごく好きなんですよ。それに今までの作品を聴いたり、ライヴを観たうえで、自分だったらこうしたいなというポイントも多かったんですね。それは別にダメ出しとかそういうことではなくて(笑)、バンドの世界観をより表現するために、自分が溶け込める隙間がありそうだなと。

──やり甲斐を感じたわけですね。前作に当たるリレコーディング・ベスト・アルバム『Aberration』も、気付けば発売から約5年が経ちましたが、あの作品はヨーロッパでもリリースされて、欧州ツアーも行われるなど、それまでとは違った大きな展開が期待される状況にはありましたよね。ところが、同時並行的にメンバー脱退などもあり、傍からは、どちらかと言えば活動は停滞しているようにも映ったと思います。MichalさんとHalさんは、どのようにバンドを立て直そうと考えたんですか?

Michal:やっぱり、いろいろ考え直す大きなキッカケになったのは、『Aberration』をリリースした後の活動でしたね。2016年に<Metal Female Voices Fest>という大きなフェスに出て、2017年にはヨーロッパでも10箇所ぐらい廻って、さっきShibukiくんからサポート参加してくれたという話がありましたけど、イタリアのTEMPERANCEと国内をツアーしたんですよね。そういう中で、ヨーロッパの強豪と戦を交えていくには、もうちょっとボトムアップしないと難しいなと思うところがあったんです。

──ほう。

Michal:バンド活動って、しんどい部分もありますが、楽しいからこそ、一層、時が流れていくのが早くて、気がついたらベテランの域に入っているわけですよ。でも、それに相応しい経験値や実力を持っていないまま、ただ惰性でバンドを続ける状態にはなりたくなかったんですね。バンド内部のことで言えば、ソングライティングをする人も抜けてしまった。だからこそ、ここでせっついてバンドを動かすのではなく、個人のパワーアップに時間を費やしたい気持ちが大きくなってたんです。そこで私はヴァイオリンと声楽を同時に始めて。音楽的な理解力や実力を見つめ直す期間を設けたことが、傍からは停滞期間に見えていたんだと思うんですね。でも、これはいろんな芸事に携わる人が抱える悩みかもしれないですけど、立ち止まらないと養えない力もある。その意味では、必要なことだったなと思います。

Hal:僕は『Aberration』の制作に関わった後にANCIENT MYTHに入りましたけど、ホントはもう2〜3年早くアルバムを出すつもりでいたんですね。途中でギターが抜けたりとかもあったんですけど、それだけではなくて、たとえば歌い方を変えたりする最中だったので、どういう曲を、どのキーで歌うかというのもあまり見えないところもあったんですよ。だから、どんどんレコーディングを進めるのではなく、曲やそのアレンジを煮詰めるところに時間を費やしてて。歌に関して言えば、他のパートを全部録り終えてから、去年の夏ぐらいからやっと録り始めたぐらいなんですね。しかも結構期間を長くとっていて、最後の最後に歌入れを済ませるような。

◆インタビュー(2)へ

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■シンフォニック/メロディック・スピード・メタルをもっと突き詰めようと

──曲作り期間を含めれば、『Aberration』の制作直後から次作に向けて動き始めたと解釈してよいと思いますが、今回のアルバムに関する構想は何かあったんですか?

Hal:特にこういうテーマで、というのはMichalさんからも明言されていなかったんですね。僕が入る前のANCIENT MYTHももちろん聴いてましたし、その音楽性が好きだったので、曲作りをするうえでは、大きく雰囲気が変わらないようにしようとは思いましたが、シンフォニック・メタル、メロディック・スピード・メタルをもっと突き詰めようとは思ったんですね。たとえば、シンフォニックということで言えば、本物のストリングスやブラスを用いたり、もっと壮大な感じにしたかったですし。だから、曲を完成させていく過程でMichalさんにも聴いてもらって、「こういうのはどう?」「もっといこう」みたいな確認をしつつ進めてはいきましたね。

──ほとんどの楽曲はMichalさんとHalさんが作曲者としてクレジットされていますが、「River of Oblivion」の作詞作曲を手掛けたShibukiさんは、出来上がってくる曲を聴いて、どんな印象がありました?

Shibuki:何か二人の好きな曲調がすごく出ているなって(笑)。その中でも、スピーディに突っ走っているだけじゃなくて、たとえば「Crimson Stigmata」のようにヘヴィでミドルっぽい曲もあるし、個人的には「Hypno Temptation」というスローな曲が一番好きなんですよ。めちゃくちゃバラードで……ライヴではあまりやらないって先に言われてしまってるんですけど(笑)。

Hal:いや、対バン形式のライヴだと演奏時間も限られてくるので、ワンマンのときにはやりましょうって言っているんですよ(笑)。

Shibuki:そうですね(笑)。メロスピが基本にある中で、いろんなタイプの曲を上げてきてもらって、僕もそれを楽しみに聴いてましたね。

──「River of Oblivion」はいつ頃書いたんですか?

Shibuki:これがさっき言った、加入後の初めてのミーティングのときに持っていった曲なんです。個人的にはDRAGONFORCEぐらい速い曲をちょっとやりたいなと思って(笑)。BPMが200あるんですけど、エクストリームな感じで、ドラミングもブラストを入れてみたりして。実はANCIENT MYTHに入る前から、趣味みたいなものですけど、一人でシンフォニック・メタルをずっと作ってたんですね。それも加入を決めた理由の一つなんです。せっかく自分もフルオケのオーケストレーションができるので、微力ながら、こういう曲で力になりたいなと作りましたね。

──最初に持っていった曲がそのまま収録されたというのも凄いですね。新鮮に響いたのか、自分たちが思っていた通りのものが来たという感じだったのか。

Hal:まぁ、シンプルにドラフォが来たと思った(笑)。「やろう!やろう!」って感じだったよね。

Shibuki:白状すると、最初に持っていったときに、「サビがスピッツに似てます」って言って聴いてもらったんですよ。

Hal:そうそう(笑)。でも、僕はスピッツをあまり知らなかったんですよ。後日、レコーディングに入るちょっと前に、そういえばスピッツに似てるって言ってたなと思って、その曲を聴いてみたら、「はい、アウト」っていう(笑)。そこでサビを作り直したんです。

Shibuki:だから、大いに助けていただいて、どうにかANCIENTの曲になりました(笑)。

──BPMが200と言われても、そんなに速い曲という印象ではないんですよね。

Shibuki:サビはハーフに落ちてるし、後半はそんなにツーバスもなくて、3連符になるぐらいですからね。自分の中ではNIGHTWISHが一番カッコいいシンフォニック・メタルのバンドだと思っているので、そういう雰囲気とメロスピを折衷したら、こういう感じになったんだと思うんですね。

──Koheiさんが加入する時点では、ほぼ曲は出来上がっていたんですよね?

Kohei:そうですね。ANCIENT MYTHは活動経歴が長いじゃないですか。なので、さっきも言ったように、まずANCIENT MYTHの世界観の一部になろうと思って聴かせてもらって、基本的にはコンポーザーの意図どおりの演奏をしたんですね。「Chaos to Infinity」のイントロのピロピロしたギターは、僕が加入することが決まってから考えてくださったみたいで、ある程度、僕のやりたいことも世界観に当てはめてくださったんですけど、新しく入ったメンバーがいきなりオラオラし始めたら、受け入れ難いファンの方もいるんじゃないかという意識もすごくあったんですよ。だから曲を聴くときにも、こういうアプローチなら、もっとクサくてアンニュイな感じが出るんだなとか、自分のプレイを構想しながら、自分の中に流し込んでましたね。自分じゃ書かないな、書けないなという曲も多くて、そういう面で勉強にもなりましたし。

──たとえば、THE GENIUS ORCHESTRATIONとはまた違いますもんね。

Kohei:そうですね。コンポーザーが鍵盤奏者というのも面白いんですよ。僕が鍵盤で作ったとしても、ギターのことは常に頭にあるんですけど、やっぱりギターと鍵盤では見方が違うんですよね。コードひとつをとっても、たとえばギターが一人だったら、ベースがあって、ルートの音があり、そこに3度なり5度を当てる。でも、このバンドは3度から始まるアプローチだったり、何だったら5度とテンション・ノートで2本のギターに振り分けて和音を作ることもある。その点では難しい面もあるんですけど、そこを擦り合わせていく作業は面白かったですし、ギターがコードものとしてしっかり土台を作るよりも、色付けの扱いにしてる曲が多いんですね。吸収できるものも多かったですね。

──確かにキーボーディストが作る曲は、ギタリストからすると、運指の面からも困難なフレーズが出てくることがあるともよく言いますよね(笑)。

Hal:よく言いますよね(笑)。

Kohei:そのとおりですね(笑)。

──Michalさんは自身も多くの作曲を手掛けてはいますが、今のこのメンバーで出来上がってくる曲をどのように受け止めていたんですか?

Michal:そうですね……ガラッと変わったのは、以前はメンバーが作ったデモデータとかを、エンジニアの人だったり音楽的な理論がわかっている人に一回送ってチェックしてもらってたんです。今まではメンバーの中にクラシックの理論的にチェックできる人が存在しなかったから、ちょっと微妙な部分があったりしたわけですよ。でも、Halくんはそこを見ることができる人だから、それ(外部とのやりとり)をする煩わしさがまったくなくなったんですね。そこはすごく頼もしくて。仮に自分が変なコードをつけていたとしても、「こっちのほうがキレイにいくと思う」というアイディアをすぐに提案してくれる。曲作りに関してはすごくスムーズでしたね。これまでは自分が得意なキーではない曲もあったんですけど、それはギター基準で決められていることが多かったからなんですね。その点でも今回は……Koheiくんは苦労はしたかもしれないですけど(笑)、より自分の得意とする部分が歌えるようになったので、すごく肩の荷が下りたところはありますね。

──それはANCIENT MYTH以前のバンドでもそうだったのではないですか?

Michal:まぁ……でも、自分のレンジとはちょっと違うなぁと思いながらも歌ってきた中で、得をした部分もあるんですよ。ヴォーカリストの場合、普通、低音って伸びていかないんですよ。ただ、低く出さざるを得ない曲がたくさんあったからこそ、低音も出るようになった。

──鍛えられたわけですね。

Michal:そうですね(笑)。ポジティヴに捉えるなら、普通では鍛えられるはずのない低音が鍛えられてよかったなぁということですね。

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■一つ鍵を開けると実は全部できる素養は育つ

■もっと高みを目指したかった

──なるほど。「天狼大神」は2018年12月に、「Träumerei: Luna」は2019年3月にショート・ヴァージョンがYouTubeで公開されましたよね。先ほどの声楽の話と重なりますが、その時点で歌に関しては、これも従来とは違った表現に挑もうという明確な目的意識があったからこその取り組みですよね?

Hal:あの時点では、ずっとソプラノ的な声でやるかもしれなかったよね。

Michal:まぁ、そうかもしれないですね。

Hal:その後に作った「Meteor Hunter」ではロックの歌い方とオペラの歌い方を両方使ってるんです。最初はオペラ的なもので全部行くと思いきや、確かそこで曲ごとに変えようということになったんだと思うんですよ。

Michal:私もNIGHTWISHは好きなんですけど、ターヤ(・トゥルネン)時代だけではなく、アネット(・オルゾン)さんのときもすごく好きで、そのいいとこどりができればいいなと思ったら、何と新加入のフロール(・ヤンセン)さんが両方できる人だった(笑)。なるほどなと思って。ARCH ENEMYのアリッサ(・ホワイト=グラズ)も実はあらゆる歌い方ができる人なんですよね。結局、歌って全部つながっているので、巧い人は一つ鍵を開けると実は全部できる素養は育つ。せっかくボトムアップしようというときに、私はこの歌い方しかやらないとか、これまでのものを封印するとか、そういう選択肢ではなく、もっと高みを目指したかったんですね。だからやっぱりどの歌い方もやっていく必要はあるのかなと。日本だとオペラっぽい歌い方の感じはあまりウケないのかなという気配もありつつ。

──歌の変化は最たるものだと思いますが、バンドの印象がこれまでとはまったく別ものになりましたね。Halさんが加入して、Michalさんと二人がメイン・コンポーザーへと変わったことは大きいですが、それまでのANCIENT MYTHの音楽性を変えているわけではない。曲のクオリティが上がったことは確実に言えると思うんですよ。

Kohei:HalさんとMichalさんは普段から世界観が強いんですよ(笑)。そういった二人と接する中で、何となく楽曲やバンドに対するイメージや意識も伝わってきてたんですね。曲だけじゃなくて、バンドとしてのまとまりもあったからこそ、こうやって作品としていい形でまとめることができた面もあると思うんです。個人的には今回は作曲には携わってないですけど、こうやってワンクッション置くことができたわけじゃないですか。頭の中のイメージや表現したい世界観が、これから自分の中にもより入ってくると思うので、自分の作曲能力が加わったとき、さらにいい化学反応が生まれたらいいなと思います。

──このアルバムに関して言うと、曲の中でギターがどうあるべきかというのを、ものすごく的確に押さえたプレイをしている印象ですよね。

Kohei:ありがとうございます。そう言えってもらえると嬉しいですね。かなり自分のことを俯瞰してました。

──THE GENIUS ORCHESTRATIONで弾いているようなテクニカルなフレーズも入ってはいますが、曲の印象をガラリと変えるような飛び道具にはしていない。世界観を維持させるためにはどうギターを弾くのか。そういう臨み方ですよね。

Kohei:そうですね。たとえば、同じメロディにしても何千ものギターのアプローチがあるんですよね。まず1音1音、弦の上から当てるのか、下から当てるか、ちょっとシャープさせるのか、フラットさせるのかとか、そういう面だけで言っても、別に自分がフレーズを作らなくてもその世界の中で僕の存在は確実に伝えることができる。Halさんもレコーディング中にかなり手応えを感じてくださったので、自分も間違ってなかったんだと思いながら、どんどん録っていきましたね。

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▲Kohei(G)

──すごくプロフェッショナルなギターだなと思って聴いてました。ある意味、絶妙な抑え方なんですよね。それが逆に自己主張になっている。

Kohei:嬉しいです。自分には好き勝手荒らせる畑がすでにあるので、棲み分けができていたのかもしれないですね。僕は芯となる目標というか夢があって、絶対にギター・ヒーローになるぞと思って、中学生のときからギターをやってきたんですよ。最初に父親に教えられたのも、イングヴェイ・マルムスティーンだったり、マイケル・シェンカーだったり、ポール・ギルバートだったり。その目標に対して立ち上げたバンドが、THE GENIUS ORCHESTRATIONだったんですね。ANCIENT MYTHでは自分の信念を貫きつつも、バンドとして頑張ろうというだけじゃなくて、プロフェッショナルなギタリストであるという意識をもっと持って、コンポーザーとぶつかり合った。そういう中で生まれた作品でそう汲み取っていただけたのであれば、ホントに嬉しいですし、初めて聴く人にも、もともとANCIENT MYTHのファンであった人にも、ギタリストとして凄いヤツが来たって認識してもらえるなら、それこそ、ギター・ヒーローになるという道に一歩近づけたんじゃないかなと思えるんですよね。

Shibuki:さっきKoheiくんが言ってましたけど、確かにMichalさんとHalさんの世界観って独特で……すごい変な人とすごい変な人(笑)。自分はそれ込みで面白いバンドだと思ってて。アルバムの制作を始めた当初は進捗状況も芳しくなかったりもしたんですけど、ホントにすごくカッコいいものができたと思うんですね。今回、自分でも1曲だけ作曲させてもらいましたけど、今後もいろんな曲を作っていきたいですね。今回はMichalさんの鼻歌をHalさんが曲に広げるみたいな作業が結構あったんですけど、次のアルバムのときには自分もそこに踏み込んでいってみたいなと思ってて。

Hal:いきなり電話かかってきて鼻歌を聴かされるよ(笑)。

──ははは(笑)。充実したアルバムができたからこそ、作り手自身もそう感じるのだと思いますが、実際に次の作品も早く聴きたくなりますよ。バンドの状態がいいことも伝わってきますし、Koheiくんが作曲することで、新たに加わるものもあるでしょうし。モーツァルトの歌劇『魔笛』で知られるアリア「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen(復讐の炎は地獄のように我が心に燃え)」を採り上げたのも興味深いですね。オペラ的ヴォーカル・スタイルがわかりやすく伝わる曲ではありますが、難曲としても知られていますよね。

Michal:私が今まで実力的に足りなかったのは、やっぱり高音域の部分だったんですよね。そこは実はずっと悩んでいて、もしかしたら、声楽をちゃんと習えば、ある程度まで克服できるんじゃないかなという期待はしていたんですね。そこでオペラの中でも、アリアで、ソプラノ歌手が「これはヤバい」というものを歌えるようになることを、まず自分の中の目標に据えようと思ったんです。それがたまたまこの曲だったんですね。かつ、作中で夜の女王が歌う曲なので、自分自身のイメージとも結構重なる。他にも、たとえば『ホフマン物語』でオランピアという機械人形が人間じゃない超絶フレーズを歌うみたいなものもあったんですけど、私は機械人形というよりは夜の女王だなと思って。そもそも声楽を習い始めるときから、先生にこれが歌えるようになりたいって持っていってた曲でもあったんです。“ArcheoNyx”という今回のタイトルの一部に、ギリシャ神話の夜の女神とされている“Nyx”の名前も入ってるんですけど、ANCIENT MYTHの世界観は、どちらかというと朝とか昼ではなくて夜だと思っていたこともあり、アルバムの中に入れても溶け込むんじゃないかなと。さらに、いきなり飛び級で実力を上げたんだなというのもわかりやすい曲かなと思いましたので、入れてみました。

──この曲を入れようという話があったとき、他のみなさんはどう思いました?

Kohei:最初にHalさんからデータが届いたときには歌が入ってなかったんですけど、これをバンドでやるかと。これもアレンジがなかなか鬼畜で(笑)。まず、ギターがベース寄りの扱いじゃないんですね。いわゆる簡単な力強いパワーコードとか、3度だけじゃなくて、さっきも話しましたけど、左右のギターの単音と単音とで和音になっているものが多いんですよ。そういった中で、あの歌も入ってくることを前提にアプローチを考えると、よくも悪くも楽器隊は抑えて、しっかりと歌が載る状態にしないといけないなと。実際に歌が載ったときは、「あぁ、よかった」と思いましたし、「Michalさんスゲェ、マジで歌ったんだ!?」っていうのはありましたね(笑)。

Hal:あの曲を声楽のレッスンでやってるって聴いたときに、「アルバムに入れる?」って言ったのは、多分、僕だったとは思うんです。せっかく歌えるようになったのであれば、作品に残したらいいかなと思って。しかも多くの人が知っている曲ですから、なおさら以前のヴォーカルとの変化が明確にわかる。そこでバンド・アレンジも進めていったんですね、ギターがこんなに大変だったとは知らず……いや、クラシックの原曲に合わせてギター・パートを作ったので、どうしても普通じゃないとは思いつつ(笑)。弾いていただいてありがとうございます、歌っていただいてありがとうございます。

Michal:私もHalくんもホントにメタルファンなんですけど、たとえば、私が一番大好きだったエリサ(C.・マルティン)期のDARK MOORも、2曲ぐらいクラシックのカヴァーをやってたんですよ。だから、シンフォニック・メタル系はクラシックのカヴァーをやるもんだという認識があって、いつか自分もやりたいとは思ってたんですね。やっとあの夢の一つが叶ったというのもあります。

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▲Michal(Vo)

──この曲のアレンジにしても言えますが、シンフォニック・メタルというと、もっと大仰かつ壮大に音を重ねて作り込んで盛り上げるケースも多いですよね。ただ、このアルバムに関して言うと、押し出すところもありつつ、全体像としては、引くアプローチで絶妙に作られていると思うんですよ。音圧で聴かせるようなことはしない。自然にそういう作り方になったのかもしれませんが。

Hal:ミックス自体は僕がやってて、マスタリングはみんな立ち会ったんですけど、音圧でガツガツくるようなメタルの音にはしたくなかったんですよ。やっぱり生のストリングスとかも入っている以上、不自然な大きさにすればよさが削がれますからね。そこは狙ったところはあります。

◆インタビュー(4)へ

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■言葉だけを目にした時点でもちゃんとストーリーになっているべき

──歌詞はほぼMichalさんとHalさんの共作となっていますね。

Hal:今まではMichalさんが一人でやってましたけど、今回はすべて僕が絡んでいます。「River of Oblivion」はShibukiくんが書いてきたものに二人で加わって完成させて。

──このアルバムならではのテーマ設定みたいなものもあったんですか?

Michal:これまでと同じように、神話だったり伝承がモチーフではあるんですけど、私が私だけの視線で見ているANCIENT MYTH、こうしてお客さんに伝えたいというエッセンスと、Halくんから見たANCIENT MYTHってこうあったほうがきっとカッコいいという客観的な目線を、一回ミックスしてみたかったんですよ。他人から見えているMichal像、ANCIENT MYTH像をちょっと採り入れてみて、自分のテーマを組み合わせてみると、もう一段階上に行けるんじゃないかなと思って。やっぱり自分一人で掴める曲からのインスピレーションには限界がある。だから、とりあえず「多分、こういう話なんだろうな」というのをワーッと書いて、その客観的なANCIENT MYTH像と混ぜてもらいつつ、「主人公目線だとこういうのが見えているといいんじゃない?」というやりとりをものすごい回数をやって完成させていったんですね。究極を言うと、歌詞って誰でも書けちゃうと思うんです。でも、作詞もやってますって言う以上は、言葉だけを目にした時点でも、ちゃんとストーリーになっているべきだと思うんですね。だから、ただ伝承を語るのではなく、聴いた人がその主人公に入り込める、気持ちを重ね合わせられるというところはすごく重視しました。

Hal:最初はすごく主観的な文なんです。だから、「どういう設定?」「どういう状況?」「どういう人?」と、そのつどMichalさんには投げかけていって。歌詞はヴォーカルの人が考える場合が多いですよね。書いてある内容はパーソナルなことだったりもするので、あまり立ち入ったら悪いなとは思うんですけど、最終的にお客さんに聴いてもらったり、一緒に歌ってもらったりする以上は、共感する部分があったり、その歌詞を好きになってもらわないとダメだろうと思ってるんですよ。だから、実際にレコーディングに進む前に、歌詞も見せてもらって、一緒に完成させていきました。「天狼大神」の頃から、すでにそういう取り組み方をしてましたね。

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▲Hal(Key)

──「天狼大神」はコンセプチュアルな楽曲なので、やや特殊な位置にあるかもしれませんが、歌詞全般について見れば、これまで以上に言葉の惹き付ける力がすごく強い。当然、楽曲そのもの、メロディの煽る力も絡んではきますが、歌詞に関しても、すごく大きな変化をしましたね。

Michal:ちゃんと歌詞も見てもらえてよかったぁ。

Hal:ありがとうございます。やっぱり歌詞のハマりとメロディの兼ね合いって難しいんですよ。いろんな正解はあるとは思うんですけど、僕は絶対にそこは一致してないと変だと思ってて。たとえば、メロディの節の切れ目と歌詞の切れ目が、とっ散らかりがちな人も少なくないですからね。

──これまでのANCIENT MYTHを知る人はもちろんですが、今まで聴いたことのなかった人にも、ぜひ『ArcheoNyx』に触れてみて欲しいですね。さて、すでに次作に向けての期待感も口にされていますが、リリース後はどのような活動をする計画なのでしょう? このコロナ禍で、ライヴも思うようにできない状況ではありますが。

Michal:今、ライヴをやらないバンドも結構いるんですよね。たとえば、ミュージシャンとしての生活はありながらも普段は医療従事者だったり介護関係の仕事をしていたり、そもそも演者さんの年齢が高めで高齢の親御さんと同居されていたり。感染が収まるまではやらないと決めているバンドもいる。今までよくやっていたような4〜5バンドが出演する対バン形式のイベントは、感染症対策の面だけからではなく、実質的にも難しくなっているんですよね。そういった中でライヴの進め方も考えているんですが、バンドのキャリア的にも、30分とかの持ち時間では展開がしづらい。対バン形式であるなら、自分たちが少なくとも40〜50分は演奏できるようなものであるべきだなとは思ってるんですね。

──なるほど。

Michal:もちろん、ワンマンライヴも行うつもりではいますが、配信も積極的にやっていきたいと思ってるんですね。配信はある意味、すごくチャンスだとは思っていて。東京でステージに立っているとしても、国内のいろんな街に住んでいる人も、他の国の人も観ることができる。私も海外のアーティストの配信ライヴを夜中とかに観たりしてますしね。もう元通りにはなれない世界だと思ってますから、その中でどういうふうに時代の流れに乗っていきつつ、自分たちらしさをしっかり持ったうえで活動できるか。今後、いろいろ考えながら、動きながら、一つの答えを出していけたらいいなと思ってます。今年の後半戦はオリンピック次第でいろいろ変わりそうですよね。ただ、「やるよ」って言ったものを延期します、中止しますというのは、ホントはやりたくないんです。チケットを買ってくれるお客さんは、その時間をすでに確保してくれているわけですし、たくさんの人に変更を余儀なくさせるのはホントに忍びなくて……。アルバムをリリースしたからこそ積極的に動きはしたいんだけれども……本当は海外ツアーをやったり、フェスに出演したりもしたいんですよ。ちょっと様子を見つつ、新たな手を打とうかなと思ってます。

取材・文◎土屋京輔

『ArcheoNyx』

発売日:2021年7月7日(水)
レーベル:Repentless

【Deluxe Edition】
品番:RETS-0023/0024
価格:¥3,800+税

【通常盤】
品番:RETS-0025
価格:¥3,000+税

【収録曲】
01. Abyss (SE)
02. Chaos to Infinity
03. River of Oblivion
04. Song of Siren
05. Crimson Stigmata
06. Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
07. Hypno Temptation
08. Last Light (SE)
09. Meteor Hunter
10. 天狼大神
11. Träumerei: Luna
12. Zenith
※【Deluxe Edition】には、全曲の“Orchestral Mix”を収録したボーナス・ディスクが付属。

ライヴ・イベント情報

<Release Party 2Man Show>
日程:2021年8月1日(日)
会場:東京・吉祥寺クレッシェンド
共演:ILLUSION FORC

◆ANCIENT MYTH オフィシャルサイト

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