ニトリ vs. IKEA、渋谷で起こる「都心店舗戦争」の勝者はどっちだ?

ニトリ vs. IKEA、渋谷で起こる「都心店舗戦争」の勝者はどっちだ?

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/09/16
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IKEA原宿店の新しい挑戦

東京都心部を舞台にした、IKEAとニトリの「戦争」が激化している。6月8日、新型コロナウィルスの影響で開店が延期されていたIKEA原宿店が、満を持してオープンした。国内10店目にして、初の都市型店舗になる。

JR山手線原宿駅の目の前、東京メトロ千代田線・副都心線の明治神宮前駅に隣接した立地は、車がなければ行きにくいこれまでの店舗とはまったく違う。アパレルブランドや雑貨店がひしめき合う、「小売業の最激戦区」に出店したかたちだ。

商品ラインナップに関しても、既存店では見られない新しい取り組みがなされている。たとえば1階にあるのは、IKEA史上初の「スウェーデンコンビニ」 だ。オリジナルアイスクリームやオーガニックなカップラーメン、北欧の低アルコールビール、IKEAデザインのスマホ充電器など、これまでのラインナップとは毛色が変わった商品が販売されている。

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IKEA原宿店の様子[Photo by iStock]

また2階のカフェテリアでは、スウェーデンの伝統料理「ツンブロード」が食べられる。「原宿」という立地を意識したのか、アミューズメント施設のように「行って楽しめる」店舗だ。

平日に数回訪れてみたが、立地が抜群に良いこともあって、お客で賑わっていた。特に学校帰りの若者や女性客が多く、「IKEAに初めて来た」という声もチラホラ聞こえる。日本にある既存の9店舗は、どれも電車では行きづらい郊外にあるものばかりだった。

私自身、横浜にあるIKEA港北店が最寄りの「IKEAユーザー」で、家具を買うときにはほぼ必ず訪れている。しかし車がなければ行きづらい立地のため、顧客は自家用車を所有する家族連ればかりで、原宿店にいるような若者はあまり見たことがない。実際にかつてIKEA港北店で働いていたスタッフにインタビューしてみたところ、旧来の郊外型の店舗は、土日は家族連れで混み合うものの、平日の集客に苦戦していたようだ。

しかし平日の原宿店はオープンから3ヵ月近く経っても、賑わいを見せている。さらに原宿店がこれまでの郊外店と大きく異なるのは、客層だけではない。

店頭で家具を購入できないワケ

今回初めて東京都心部に進出したIKEA原宿店は、「家具をその場で売るための店」ではない。店頭に並んでいる約1000アイテムのうち9割は、家具ではなく購入して持ち帰れる小ぶりな生活雑貨。エコバッグやマグカップなど女性と若者に人気がありそうなアイテムが並んでいる。

残りの1割はIKEAイチオシの大型家具で、「都市部の生活」をイメージした空間にデスクやソファーなどが陳列されている。しかしそれらはあくまでも「見本」で、その場で買って帰ることはできない。気に入った商品を購入したければ、オンラインストアで注文して直接自宅まで配送してもらうか、他の郊外店の店頭で受け取るしかない。

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Photo by iStock

主にオンラインでの販売を促進するために、店頭で商品に直接触れられる機会を提供する手法を「ショールーミング戦略」と呼ぶ。その場での販売ではなく、新商品や売れ筋アイテムの家具に直接触れてもらうことを目的としたIKEA原宿店は、「ショールーミング」に特化した店舗だ。

原宿駅、明治神宮前駅から徒歩1分という好立地であれば、仕事帰りの人でも気軽に立ち寄ってIKEAの商品に触れることができるだろう。購入を検討している顧客にとって、いくらIKEAがリーズナブルとはいえ、家具は高額商品だ。一度使ってしまうと返品が難しいため、事前に使い心地を吟味したうえで買いたいと思うのは当然だろう。商品とのミスマッチを防ぐためにも、気軽に商品を確かめられる都心部の店舗は便利に違いない。

このように今でこそオンラインでの販売に力を入れているIKEAだが、2006年に日本に本格上陸した当初は、店頭での直接販売にこだわりネット通販には消極的だった。その結果、一時期には顧客の代わりにIKEAの商品を購入し、指定された住所へ配送する「通販代行業者」まで登場したという。

しかし一般にオンラインショッピングがここまで普及すると、IKEAとしても無視できない。2017年にようやく公式オンラインストアを開設したが、遅きに失した。

その間、IKEAの日本最大のライバルであるニトリは、オンラインでの販路拡大を進めてきた。ニトリがオンラインストアを開設したのは、IKEAより13年早い2004年のこと。ここ10年ほどオンラインでの売り上げは右肩上がりに上昇しており、2012年2月期決算で約67億円だったのが、2017年には約226億円、2020年には約443億円まで伸びている。

この成長ぶりを目の当たりにして、IKEAがオンライン通販へと乗り出したことは想像に難くない。

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東京本部があるニトリ赤羽店[Photo by gettyimages]

ニトリの背中を追うIKEA

今日のIKEAの都心型店舗という戦略も、ニトリの戦略を後追いしていると考えられる。ニトリも、かつては郊外で店舗網を拡大していた。そもそも北海道で創業したニトリが、初めて関東に進出した足がかりは、茨城県ひたちなか市の勝田店(1993年)だ。

また初めて都内に構えたのは、北区の赤羽店(2006年)だった。どちらも駅からバスに乗らないと行けず、車での来店を想定した立地になっている。週末に家族連れで行って家具を購入し、車に積んで持ち帰るという典型的な「休日のお買い物」を前提にした店舗なのだろう。創業からしばらくは、かつてのIKEA同様、郊外に大型店舗を開設する戦略を採っていたと思われる。

そのニトリが、数年前から東京23区内、特に山手線沿線に進出し始めた。山手線の駅近郊にある店舗だけでも、2016年にオープンしたニトリEXPRESS上野マルイ店や2017年開業のアトレ目黒店、東武池袋店などがある。

中でも代表的なのが、2017年にオープンした渋谷公園通り店。渋谷駅から徒歩5分の立地で、かつてSHIDAXが入っていた9階建てのビルがまるごとニトリになっているが、郊外店と異なり駐車場はまったくない。

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ニトリ渋谷公園通り店

品ぞろえは豊富で、ソファーからオフィス用デスクまで一通りの家具がそろう。もちろん在庫があればその場で購入できるし、自力で持ち帰ることも可能だ。公式ホームページには「大型店舗」と表示されているが、大規模な郊外店舗を一回り小さくした、「立地の良い小規模郊外店」といった印象を受ける。

このような「都心の駅の近隣に出店する」というニトリの戦略は正しかったようで、2017年2月期決算で約1435億円だった関東圏での売り上げは、2018年には約1796億円、2019年には約1873億円と成長し続けている。IKEAがニトリの戦略を参考にして、後を追うように都心に進出した第一歩が原宿店なのだろう。

決戦の舞台は「冬の渋谷」

都心部での競争が激化する中、とうとう今年の冬、両者が至近距離の店舗を構え真っ向から対決する。決戦の舞台は渋谷だ。6月の公式発表によると、かつてフォーエバー21があったセンター街沿いの跡地にIKEA渋谷店がオープンする予定である。渋谷駅から徒歩5分の立地に7階建ての店舗が建設予定で、売場面積は原宿店の約2倍だ。

まだ詳しいフロアマップは発表されていないが、これだけ大きな店舗であれば、既存の郊外店と同じように大型の家具も店頭で購入できると思われる。立地でも店舗設計でも、都市部のニトリとよく似た「好立地の小規模郊外型店舗」になることは想像に難くない。そうなると、同じビジネスモデルを採用したニトリ渋谷公園通り店とIKEA渋谷店が、徒歩数分の距離で向かい合うことになる。

IKEAとニトリ、ライバルであるはずの家具チェーンが、近年こぞって駅の近くへと進出するようになったのはなぜか。その理由は、われわれ消費者が「めんどうくさがり」になったからだ。ネットショッピングがこれだけ普及した現在、欲しいものはほとんどインターネットで手に入る。情報化が進んだ結果、消費者がわざわざ車を運転して、時間をかけて郊外の大型店舗まで行く頻度は減ってきた。

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1日に300万人が利用する渋谷駅[Photo by gettyimages]

だからこそIKEAもニトリも、店舗のほうから駅の近くまで「出張」し、ユーザーが商品に直接触れる機会を提供してくれている。日本有数のターミナル駅である渋谷駅は、1日に300万人もの乗客が利用するという。これだけ多くの潜在的なユーザーを取り込めることは、両者にとって大きな魅力だろう。

300万人の「めんどうくさがり」なユーザーを奪い合う、IKEAとニトリの真っ向勝負が実現するまであと数ヵ月。果たして、渋谷で勃発する二大家具チェーンの「都心店舗戦争」を制すのは、どちらなのだろうか。

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