遊撃手から9カ月で中心投手 志願きっかけはあのドラ1そっくりの球

遊撃手から9カ月で中心投手 志願きっかけはあのドラ1そっくりの球

  • 朝日新聞デジタル
  • 更新日:2023/03/24
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"昨秋の和歌山県大会で好投した智弁和歌山の清水風太投手=2022年10月8日午後1時31分、和歌山市、下地達也撮影"

(19日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 香川・英明―智弁和歌山)

第95回記念選抜高校野球大会に臨む智弁和歌山の清水風太投手(3年)は、元遊撃手だった。投手に転向したのは9カ月前のことだ。いまでは140キロ中盤の直球を軸にチームを引っ張る一人になっている。転向のきっかけは、身体能力が高いだけではなかった。

昨年6月、清水投手は中谷仁監督が見つめる先のブルペンにいた。今後、投手に起用するかを見極めるテストのようなものだった。

「甘くないやろって言いたかったんですけど」。監督の考えはすぐに変わった。

「スピードガンをもってこい」とほかの選手に告げる。計測すると143、144、145キロ……。

監督は「おお!っていう感じで」と笑って振り返った。清水投手はその場でスライダーやツーシームも投げてみせた。投手への転向が認められた。

「気持ち」を中谷監督に打ち明けたのはその前日のことだった。「逃げかもしれない。でも投手をやらせてください」

理由は1年生の秋にさかのぼる。左足首を骨折した。その後、回復したと思ったら再び左足首を骨折し、手術もした。それからは、練習を重ねても納得のいく守備ができないと感じた。先輩内野陣を見渡すなかで、野手を続ける自信もなかった。

そんな清水投手の思いを中谷監督は「相当な覚悟」と受け止めた。高校生にはやりたいことをさせたい。そして、意思表示も大切だと思っている。

清水投手はなぜ、転向先に投手を選んだのか。

2021年夏、智弁和歌山は全国選手権大会で優勝した。全国選手権和歌山大会のライバル、市和歌山にはプロ野球DeNAにドラフト1位入団した小園健太投手がいた。「小園対策」で先輩に頼まれ、打撃投手をしたのが清水投手だった。

「打たせるとかいいから、本気で抑える気持ちで投げて」。先輩たちに言われ、清水投手は内角に思い切り直球を投げた。「小園のツーシームに似ている」と言われた。この出来事が投手への挑戦を後押ししてくれた。いまでは、ツーシームは清水投手の大事な球種の一つになっている。

骨折して練習に参加できなかった分を少しでも取り戻そうと、筋力トレーニングに励んできたこともプレーに生きている。昨秋の近畿大会は全3試合に登板して、チームの4強入りに貢献した。

選抜大会の初戦は19日。「投手をずっと前からやっていたぞというくらいの気持ちで、相手を抑えていきたいと思います」と力強く言った。(下地達也)

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