所得の平均値と中央値とは

値上げの波が家計に響くようになり、うまく貯蓄がはかどらない方も多いのではないでしょうか。
「同じ年収の人と同じように貯金できているのだろうか」
「このままで将来の資金準備は間に合うのか」
など不安になるものです。
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によると、日本人の1世帯あたりの平均所得金額は552万円で、中央値は437万円でした。

出所:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」
このことから、日本では「年収400万円台」が標準的な世帯年収であることがわかります。
年収400万円台世帯の場合、貯蓄の平均はいくらくらいなのか見ていきましょう。
【画像】日本の所得の平均と中央値をそれぞれグラフで確認(出典・厚生労働省)
年収400万円台世帯の貯蓄事情を深掘り
ここでは、年収400万円台の世帯の貯蓄額とその中身を見ていきます。今の高齢者では高額年金受給世帯もあることから、データを「勤労世帯」に絞ってみていきます。
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)第8-2表」から、「年収400万円台勤労世帯の貯蓄事情」を整理していきます。
「年収400万円~450万円世帯」貯蓄の内訳
貯蓄合計:912万円
通貨性預貯金:317万円
定期性預貯金:303万円
生命保険など:225万円
有価証券:52万円
金融機関外:15万円
「年収450万円~500万円世帯」貯蓄の内訳
貯蓄合計:784万円
通貨性預貯金:277万円
定期性預貯金:237万円
生命保険など:157万円
有価証券:94万円
金融機関外:19万円
世帯年収400万円台の勤労世帯の貯蓄額は、1000万円のラインにあと少しで手が届くといったところです。
引き出しやすい「通貨性預貯金(普通預金や当座預金)」と、預け入れ期間が決められている「定期性預貯金」の割合はほぼ同程度でした。
一般的に、定期性預貯金の割合が多い、もしくは生命保険や有価証券に資産を振り分けて保有している家庭は「貯蓄が順調である」と言われます。
定期預金や生命保険のように毎月定期的に貯蓄に回せるような仕組みは、結果的に「いい習慣づくり」として着実に貯蓄ができるポイントになっているようです。
「年収400万円台世帯」の負債はいくらあるのか
続いて負債額についても見ていきます。世帯年収400万円台世帯が、貯蓄を進めていくうえで「負荷」となっている項目を詳しく見ていきましょう。
年収400万円~450万円世帯の負債
平均負債額:521万円
うち「住宅・土地のための負債」:486万円
年収450万円~500万円世帯の負債
平均負債額:693万円
うち「住宅・土地のための負債」:652万円
負債額の大部分が「住宅・土地のための負債」。すなわち、主に住宅ローンということがわかります。
では、さきほどの「貯蓄額」から「負債額」を差し引いて、「純貯蓄額」を見ていきたいと思います。
年収400万円台世帯の「純粋な貯蓄額」を計算
年収400万円台世帯の、平均額でみた「純粋な貯蓄額」はいくらくらいなのでしょうか。貯蓄額から負債額を差し引いてみます。
年収400万円~450万円世帯の純貯蓄額
912万円(貯蓄)-521万円(負債)=391万円
年収450万円~500万円世帯の純貯蓄額
784万円(貯蓄)-693万円(負債)=91万円
純貯蓄額が90万円から300万円台というのは、「老後2000万円問題」がささやかれるいま、やはり「ちょっと不安」といえる金額かもしれません。
「年収400万円台世帯」家族のすがた
ここで年収400万円台世帯の「家族の状況」についても見ていきましょう。
「年収400万円~450万円勤労世帯」家族の状況
世帯主の平均年齢:50.7歳
世帯人数の平均:3.1人
(うち18歳未満の世帯人員:0.81人)
世帯主の配偶者のうち女性の有業率:39.1%
「年収450万円~500万円世帯」家族の状況
世帯主の平均年齢:49.8歳
世帯人数の平均:3.18人
(うち18歳未満の世帯人員:0.85人)
世帯主の配偶者のうち女性の有業率:49.5%
年収が450万円~500万円では、配偶者(女性)の有業率はほぼ5割です。
住宅ローンや教育費で貯金が思うようにできない部分もあると思いますが、早い段階から自分たちの老後を見据えて、しっかり準備をしておく必要がありそうです。
「みんなの貯蓄」から「我が家の貯蓄」を考える
年収400万円台世帯の平均貯蓄額は約1000万円で「それなりに貯めている」印象を受けますが、住宅ローンなどを引いた純資産額は90から300万円程度が平均のようです。
年収400万円台世帯の場合、平均年齢から考察すると定年まで10年余りです。ここから老後資金の目安である2000万円を貯めようと思うと、ローン返済に加えて貯蓄ペースの加速が求められます。
そもそも老後資金2000万円というのも一つの目安であって、世帯により必要となる金額は実はばらばらです。「みんなの貯蓄額」だけでなく、「我が家の貯蓄」としてどれだけ必要なのか、しっかり考えてみましょう。
まとめにかえて
今回は「年収400万円台世帯」の貯蓄事情について詳しく見てきました。家族構成や子供の進路、居住地などでも貯蓄のしやすさは変わるでしょう。
「みんなはどれだけ貯めているのか」が気になるものですが、大切なのはその金額よりも貯蓄ペースや貯蓄方法です。
リスクが怖くて、という理由で資産運用は牽制される方もいらっしゃるとは思いますが、なにもしないのもリスクの時代とも言えます。リスクや商品のメリット・デメリットをしっかりと把握することで安心して運用は始められます。
雑誌やネットなどで自分なりに調べて始められるのもいいですが、ご年齢やご年収、家庭状況などによって適正な商品も変わってきます。正しい情報を持って、より確実に貯蓄を進めていきましょう。
参考資料
総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)詳細結果表(2021年(令和3年)第8-2表)」
太田 彩子