「俺だったら...」。ベンチで2得点を見たサッカー日本代表FW「あれが狙いでした」【コラム】

「俺だったら...」。ベンチで2得点を見たサッカー日本代表FW「あれが狙いでした」【コラム】

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  • 更新日:2022/11/25
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【代表撮影 JMPA/杉山拓也】

●「チームとしてはあれが狙いでした」

サッカー日本代表は23日、FIFAワールドカップカタール・グループE第1節でドイツ代表と対戦し、2-1で逆転勝利を収めた。この試合に先発した前田大然は無得点でピッチを後にした。ベンチで見た2得点に何を感じたのか。この4年でJ2からW杯メンバーに上り詰めた韋駄天の思いに迫る。(取材・文:元川悦子【カタール】)

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日本代表が強豪・ドイツ代表に歴史的勝利を挙げた23日のカタールワールドカップ(W杯)初戦。この大一番で先発1トップに陣取ったのは、同点弾をお膳立てした南野拓実でも、逆転ゴールを決めた浅野拓磨でもない。坊主頭の韋駄天・前田大然だった。

Jリーグ時代から驚異的なスピードといスプリント回数を記録してきた快足FWに託されたのは、「鬼プレス」と評される前線からのハイプレスとカウンターからの一刺し。試合開始8分にはいきなり決定機が訪れた。

遠藤航がイルカイ・ギュンドアンとの対峙でボールを奪い、鎌田大地がキープ。右に展開し、伊東純也が受け、縦に突破してゴール前へラストパスを送った。ここに抜け出したのが、背番号25をつける前田。彼の左足シュートがネットを激しく揺らし、日本代表は早々と先制かと思われたが、オフサイドの判定。背番号25は両手で顔を覆い、悔しさをむき出しにした。

「チームとしてはあれが狙いでしたし、僕自身も得意だったので、オフサイドになってしまいましたけど、勢いに乗れたっていうのは事実だと思います」と本人は努めてポジティブに受け止めた。

だが、そこから日本代表はドイツ代表の高度な個人技と連動性に翻弄され、一方的に押し込まれてしまう。前田もチェイシングに行くが、パスを引っかけることができず、自陣に引かされるばかりだった。

●サッカー日本代表の想定と共通認識

PKから失点した後も日本代表は全くと言っていいほど攻撃チャンスを作れない。鎌田が「前半は本当にひどくて、個人的に初めてのW杯をあのままの形で終われば、間違いなく過去最悪の試合だったし、一生後悔するような内容だった思う」と自ら酷評していたほどの圧倒的劣勢が続いたのだ。

こうした中、前田の見せ場らしい見せ場は、終了間際に長友佑都の左クロスにバックヘッドで反応したシュートシーンだけ。結局、彼は57分でベンチに下がり、攻撃的な戦いを見せた試合終盤をベンチで見守ることになった。

「前半、相手にボールを持たれるのは想定内だったし、失点1で抑えていこうと共通意識を持ってプレーした。我慢するところはしていたし、それが大きかったと思います」と前田は気丈に前を向こうとした。

確かに、本人にしてみれば、W杯初戦のスタメンに抜擢されたこと自体、想定をはるかに上回ることだったのかもしれない。思い返せば、2018年9月に森保ジャパンが発足した頃、前田は当時J2の松本山雅でプレーする若手でしかなかった。しかも、アジア競技大会で負傷し、長期離脱を強いられていた。東京五輪に残れるかどうかも微妙な情勢で、「当時はカタールW杯に出るなんて想像もしていなかった」と本音を吐露する。

流れが微妙に変わり始めたのが2019年だ。コパ・アメリカ(南米選手権)のメンバーに選ばれ、大舞台に参戦したが、ゴールを決め切ることができず、世界との実力差を痛感。「このままだったら五輪に出られたとしても活躍することはできない」と悟り、ポルトガル1部のマリティモ移籍を決断したのだ。

●「2人がゴールした場面を見て…」

初めての海外挑戦も当初は順調だったが、2020年に新型コロナウイルスが社会情勢を大きく変えた。家族の安全を第一に考えた前田は、帰国を決意する。ただ、そこで横浜F・マリノス行きを選択したことで新たな人生を切り拓くことに成功する。課題だった得点感覚に磨きをかけ、2021年はJ1で23ゴールをゲット。得点王に輝き、今年1月に2度目の海外挑戦のチャンスを手にしたのである。

それまで前田の最前線起用に消極的だった森保一監督も、セルティックでのパフォーマンスを見て考え方をガラリと変更。最終予選終盤にA代表招集した際にはトップで起用するようになる。その流れが6月・9月と加速し、今回のドイツ戦代表スタメンに至った。

「4年でサッカー人生は変わりますし、なんなら1年で変わることを実感しました。自分は目の前の試合を一生懸命やるだけ。それが今につながっていると思います」と彼自身、感慨深げにこう語っていた。

雑草ストライカーにとっては、この領域に到達しただけでもかなりのサクセスストーリーと言える。が、ライバルの浅野や同じ東京五輪世代の堂安がゴールという明確な結果を残しているのだから、絶対に負けてはいられない。

「2人がゴールした場面を見て『俺だったらよかったな』とは思いました(苦笑)。次またチャンスがあれば仕留められるように頑張りたい。ドイツ戦のオフサイドになったシーンができれば決められると思います」と本人は目をギラつかせた。

●日本代表で生き抜く絶対条件

そういう意味で、27日のコスタリカ代表戦は前田にとって重要な試金石になる。彼らが大量7失点したスペイン代表戦を見ていると背後のスペースが空く傾向が強いため、前田にはチャンスが広がりそうだ。ただ、次戦の先発は浅野、もしくは上田綺世の可能性が大。背番号25はジョーカー的な起用になるだろう。

限られた時間でどのような仕事ができるのか。それ次第で、前田のこの先の立ち位置や扱いは大きく変化する。「鬼プレス」という他のFW陣にはできない武器があるのだから、それを最大限生かしつつ、決めるべきところで決めるしかない。それが日本代表で生き抜く絶対条件だ。

カタールW杯に参戦できたからと言って、先々の保証はない。そのくらいの危機感を持って、今後の試合に挑むべきだ。

タイプの似た浅野が「ここ一番で決定的な仕事のできる男」へと変貌を遂げたのだから、前田にもできないことはない。貪欲に泥臭く前へ前へと突き進んでいくしか、彼のような選手がトップに上り詰める術はない。

ここからの大ブレイクを、ぜひとも見せてほしいものである。

(取材・文:元川悦子【カタール】)

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元川悦子

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