DeNA佐野 バランス良くきれいな流れ/和田一浩

  • 日刊スポーツ
  • 更新日:2020/09/15
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7月28日巨人戦、菅野の142キロカットボールをとらえ右越え本塁打を放つ佐野(撮影・鈴木みどり)

<解体新書 和田一浩氏>

連続写真で選手のフォームをひもとく「解体新書」。今回は打率3割5分4厘でセ・リーグ首位打者(9月14日時点)のDeNA佐野恵太内野手(25)を、日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(48)がチェック。覚醒した打撃を分析しました。

今季、プロ野球界で一番の成長を見せた打者といえば、真っ先にDeNA佐野の名前が挙がる。入団当初からバッティングは良いと感じていたが、昨年までレギュラーでなかった選手が、「4番」としてここまで結果を残すとは思っていなかった。連続写真で全体的な打撃の流れを見てもバランスが良く、きれいな流れの中で打てている。1コマ1コマ、解説してみよう。

構えというより、全身をリラックスした状態を最優先させた(1)では、グリップの位置も低めで、重心も真ん中。ここから打ちにいける体勢を整えた(2)へ移行する。バットの先を投手側に傾け、右足をすり足気味にスライドさせ、重心を軸足(左足)に乗せている。本来、この形に移行する時には余計な力が入りやすくなるが、力んだ感じはみじんも感じられないし、とてもいい形を作れている。

右足を踏み込んでいく(3)~(5)も、頭の位置が残ったまま、下半身だけが投手方向にスライドしている。バットの角度を比べても、投手側に入り過ぎたりしていない。頭が突っ込まないように意識しすぎると、下半身が投手方向にスライドせず、そのまま回転するだけで打ってしまうことがあるが、そうなると強い打球は打てない。一方で打球を強くたたこうとしすぎると、踏み込んでいく下半身と一緒に頭も突っ込み気味になってしまう。その点、佐野は上半身と下半身できれいな「割り」を作り、理想的な動きができている。

ここまでは基本に忠実な打ち方だが、佐野ならではの独特な形になるのが(6)の瞬間だろう。左肩が極端に下がっていて、低めの球を打ちにいっているような形になっている。しかし、この打席で右翼に本塁打した球は、高めに浮いた142キロのカットボール。これだけ左肩が落ちてから高めの球を打つと、スイング軌道は波打ってしまう。そして左肩が前に出やすくなるが、(7)を見ると我慢できている。これは右投げ左打ちの打者の特徴だろう。リードしていく右腕でバットをムチのようにしならせるように使うため、上半身が突っ込まないで打ちにいける。右投げ右打ちや、左投げ左打ちの打者は、後ろにある腕(利き腕)で押し込んで打つが、佐野は前にある右腕を使って、球を払うようなイメージで打てている。

(8)での頭の位置は申し分ない。これだけ後ろに残せたまま打てると、ボールとの距離がしっかりと取れる。ただ、後ろ側の腕で押し込むように打てないから、インパクトは若干だが前になっている。もう少し手前に引きつけて打てると、両肩とバットのラインが平行な理想的なポイントになるし、球も呼び込んで打てるはず。リードする右腕を使って変化球を前で拾うように打てるのは右投げ左打ちの長所ではあるが、もっと本塁打を増やそうとするのなら、後ろにある左腕を使って押し込むような打ち方をマスターした方がいいと思う。

(9)ではバットのヘッドを押さえ込むようにして振り抜いている。これが押さえ込めないと、あおり打ちになって打球にドライブがかかり、打球が上がらなくなる。右足が逆方向に折れているような形になっているが、これはしっかりと右太ももで壁が作れている証拠。(10)と(11)で振り切っているが、軸回転できれいに回っている。股関節と両膝の関節が柔らかいのだろう。素晴らしい下半身の使い方ができている。

開幕当初は4番の重圧もあったのだろう。当てにいくようなバッティングで、打率はよかったが本塁打はそれほど出ていなかった。しかし夏場頃から余裕も出て、思い切り振れるようになり本塁打も増えている。短期間でこれだけ成長する打者は少ない。守備面ではまだまだな部分が否めないが、レフトは「打ってなんぼ」のポジション。今年は首位打者のタイトルを取って、日本を代表するバッターへの飛躍を期待している。(日刊スポーツ評論家)

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