2月23日、天皇陛下は61歳の誕生日を迎えられました。昭和の時代から35年にわたって「女性自身」の皇室カメラマンをつとめた河崎文雄さんがファインダー越しに見た、両陛下の「素顔」を特別に紹介します。(出典:「文藝春秋」2019年11月号)

愛子さまご誕生後の一枚。じゃんけんピーヒャラという子どものおもちゃを持たれ、笑顔の天皇皇后両陛下 ©河崎文雄
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山頂に着くと「いい景色ですね」とお声をかけていただいた
天皇陛下の山登りを初めて取材したのは、週刊誌「女性自身」の皇室担当になってすぐのことでした。私は山登りが得意なので、陛下の健脚にもついていけるだろうと皇室担当を任されたのです。
約35年前、昭和の時代はまだ取材陣との距離感が近かったと思います。山頂に着くと「いい景色ですね」とお声をかけていただいたり、私も「そんなに撮影したらフィルムが足りなくなりますよ」と話しかけました。山頂で陛下を囲んで記念撮影するのも恒例でした。
新婚のご夫婦らしい初々しさ お揃いのウエストポーチを
ご結婚後は、雅子さまも山にご一緒されるようになりました。お揃いのウエストポーチに新婚のご夫婦らしい初々しさを感じたものです。「雅子さまは山登りが好きじゃないだろう」と邪推する人もいましたが、陛下といくつも高い山に登り、「なかなかの健脚だ」と評判でした。
編集部で「おふたりが手をつないだ写真がない!」
ご結婚からしばらくすると、編集部で「おふたりが手をつないだ写真がない!」と話題になりました。上皇ご夫妻がよく手をつながれるのとは対照的です。「よし、山なら手をとる瞬間があるはずだ」とカメラマン魂に火がつき、足元の悪い場所などで何度も狙ったのに結局一枚も撮れませんでした。陛下はとても奥さん思いですけれど、人前で手をつなぐのは照れ臭いのかもしれません。
“新婚旅行”の中東ご訪問、ベルギーご訪問でイキイキと
“新婚旅行”となった中東訪問やベルギー訪問など、海外にもよく同行させてもらいました。
ファインダー越しに見るおふたりは、実にイキイキとされています。とくに雅子さまは王族や要人とも自然体で話され、さすがは元外交官だと感心することがしばしばありました。
長年撮影してきた身としては、日本を離れたときぐらい、もっと自由に振る舞われていいと思います。両陛下が笑顔の写真をたくさん見られると、私たち国民もうれしくなり、安心できるはずです。
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なかなか手をつながないおふたりが「手を触れ合わせた」瞬間
実は河崎さんは、「文藝春秋」編集部による文春オンライン掲載のインタビューで両陛下が「手を触れ合わせた」瞬間について明かしていました。
「唯一撮れたのは、飛行機のタラップをあがるときに陛下が雅子さまの腕に手を添えられた場面です。これは99年12月にベルギーのフィリップ皇太子の結婚式に参列して帰国されるときのワンシーンでした」
天皇陛下の即位後、「これからは両陛下の素敵な笑顔をたくさん見せていただきたいと思います」とも話していた河崎さん。今年のお誕生日に際して公開されたご近影でも、天皇陛下は雅子さまとともに柔和な笑みを浮かべられています。
(河崎 文雄/文藝春秋 2019年11月号)
河崎 文雄