「あんたの旦那、○○なんでしょ?」久々の同窓会で新婚妻に浴びせられた、失礼すぎる言葉とは

「あんたの旦那、○○なんでしょ?」久々の同窓会で新婚妻に浴びせられた、失礼すぎる言葉とは

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  • 更新日:2021/04/13

結婚しても子どもを持たないという選択は、もう特別なものでもない。

“2人”が、家族のかたち。

明るい未来を信じて、そう決断する夫婦も多い。

それでも…悪気のないプレッシャーや、風当たりの強さに、気持ちがかき乱されることがある。

これは、3人の女が「夫婦、2人で生きていく」と決めるまでの、

選択と、葛藤と、幸せの物語。

◆これまでのあらすじ

心身の不調から若くしてバレリーナから引退した美菜。その頃出会った20歳年上の篤彦の包容力の虜になり、猛アタックを開始する。たじたじの篤彦に、美菜はついに告げるのだった。

▶前回:「私、一生子ども産まないから」20代女子が独身なのにそう決めた、意外すぎる理由

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「結婚してください」

昼下がり、1組の男女が新宿御苑のベンチで並んで座り見つめ合っている。プロポーズの言葉は思いの外大きく響き、通すがりの犬の散歩をしている老夫婦が目を丸くして2人を見つめた。

「あらまあ」

老婦人が仰天の声を上げた理由は、明らかだ。プロポーズの言葉を発したのが、男性ではなく女性だったこと。しかもその2人は親子ほど年齢が離れているのだ。

周囲の視線を気にしたのは篤彦の方だ。美菜は真剣な眼差しで篤彦を凝視したまま、もう一度言った。

「篤彦さん。私と結婚してください」

篤彦は自分でも理由のわからないため息を深くつき、うなだれた。逆プロポーズの現場に居合わせてしまった老夫婦は、愛犬のリードを握りしめたまま思わず拍手をする。

「良い時代ね。お幸せに」

老夫婦の祝福に、美菜は満面の笑みで頷いた。

「はい!私この人のこと、幸せにします!」

美菜は篤彦に腕を絡める。篤彦は苦笑いしながらも、

「期待していますよ」

と言い、2人は晴れて夫婦になる決意をした。

そして同時に、美菜は大切なものを失うことになったのだ。

―ううん。大切だって、思い込んでいただけだったのかな…。

そんな中、運命の再会が…?

母子家庭の美菜の家族は、母親ただ1人だ。そしてその母親は、バレエの指導者でもあり、家庭はレッスン場の延長線上にあった。

娘を一流のバレリーナに育て上げることだけに執念を注いだ母が、美菜が1人で引退を決めたことに半狂乱になったのは言うまでもない。百歩譲ってそれならば、指導者として教室の後継に…と考えていたであろう、その矢先。またしても独断を貫く娘から、電撃的な年の差婚を告げられることになったのだ。

これで、母娘の亀裂は決定的なものとなった。

― お母さんとは距離を置こう。私には篤彦さんがいるし、友達だって…。

結婚して3ヶ月後、美菜は、はじめて高校の同窓会に出向いた。これまで疎遠だった同級生たちとも、引退と結婚を機に友情を深めたい。そんな希望を抱いて会場に出向いた。

しかし、美菜を待ち構えていたのは残酷な仕打ちだった。

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「ねえ。美菜の旦那さんってすごいおじさんなんでしょ?」

「え?」

「美菜、まだ私たち20代だよ?それに美人なのに本当にもったいない。若いイケメン選び放題なのに。あ。もしかしてバレリーナ時代のパトロン?」

かつての同級生たちに投げかけられる言葉は、あまりに残酷だった。奇異なものを見るような視線にめまいがする。

「年の差なんて、感じないよ。それに、パトロンだなんて…」

「でも、社長って噂聞いたし、お金持ちなんでしょ。わかった。旦那さんと別に彼氏は別に作ろうっていう魂胆だ」

かつてのクラスメイトたちに囲まれた美菜は、硬直して苦笑いすることしかできなかった。

― 年の差婚ってそんな風に見られるの…?

「そんなんじゃない」という否定の言葉を繰り返しても軽くあしらわれ、女子たちに下世話な詮索をされ続ける。美菜はどうにかその場を離れると、トイレに駆け込んだ。

そのとたん、涙がとめどなく溢れ出した。悔しさ、怒り、悲しみ。そしてこの場にはいない篤彦に対する申し訳なさ。ハンカチで何度も涙を拭い、唇を噛み締める。もうとても会場に戻れるような状態ではなかったし、そんな気分にもなれなかった。

― でも、この顔のまま帰るわけにも…。

どうにかして気持ちを鎮めなければ、家に帰ることもできない。とにかくどこか1人になれる場所で時間を潰そうと、美菜は出口へ向かった。

そのときだった。

「美菜」

反射的に足を止める。背中越しにも声の主がわかる。とても懐かしい声だった。

「美菜。大丈夫?」

振り返ると、そこには初恋の相手が、当時の面影そのままで立っていた。

「光…」

そう、懐かしい名前を呼んだとたん、再び涙が溢れ出す。美菜のかつての恋人である武藤光は、戸惑いつつ周囲を伺うと、人目につかない会場の片隅のソファーに美菜を促した。

「光。私結婚したの。今とっても幸せなんだよ」

「よかった。俺も嬉しいよ。でも、幸せならどうして泣いてるんだよ」

「わかんない。光…シャンパン持ってきて。おめでとうって誰も言ってくれない」

光は少し考えるとドリンクカウンターに向かい、グラスシャンパンを二つ持って戻ってきた。

「乾杯。結婚おめでとう」

「ありがとう。…やっと、言ってもらえた…」

美菜は一気にシャンパンを煽ると、再びわっと顔を覆って泣き出した。

元彼との再会で思わぬ展開に?

「…泣き上戸だったっけ」

光はため息をつきながらハンカチを差し出した。2人は高校卒業前に付き合いはじめ、20歳の誕生日で初めて一緒にお酒を飲んだ相手は光だった。

本格的にバレリーナとして活躍しはじめたころで、デートした記憶はほとんどない。いつの間にか別れてしまったが、美菜にとって数少ないキラキラした青春の思い出だ。

懐かしさと、光の優しさに触れ、あらゆる感情が溢れ出す。

美菜はお酒を飲みながら、いかに自分が今幸せか、篤彦のことを愛してるかを熱弁した。

光は苦笑いしながらも、友人の輪に戻ることなく、根気よく美菜ののろけ話を聞いてくれた。

「俺は結婚の予定もないから、羨ましいよ。相手もいないし」

呆れて笑う光だったが、いつまでもぐずぐずとしている美菜にそう本心を告げた。

「うん。私は結婚してよかった。毎日本当に幸せだよ」

「だったら周りに何言われても気にするなって。妬みだよ、妬み」

励ますようにぶっきらぼうにそう言う光の優しさに触れ、また涙がとめどなく溢れ出した。

「そうだね。私と篤彦さんがラブラブで、みんな羨ましいんだよね!」

こうなったら光も美菜に合わせるしかないと腹をくくり、「そうだそうだ」と囃し立てる。

「光。おかわりもってきて!今夜はとことん飲むんだから!」

結局美菜は泥酔し、ひとりで歩くこともままならないほどだった。光は美菜を介抱しつつタクシー乗り場に促しながら、ぽつりと言う。

「美菜がバレエをやめたって噂で聞いたときも、すごい年上の人と結婚したって聞いたときも、本当に心配したんだ。今日は元気な姿が見れてよかったよ。お幸せに」

「うん。ありがとう!」

交わす笑顔は、お互い高校生のころと変わらない。酔いが回って無防備な笑顔を見せる美菜は、光に向かって手を振った。そしてフラフラとしながらもタクシーに乗り込んだ。

― 光。優しくて頼もしくて、昔と全然変わってない。

女子クラスメイトたちから年の差婚について揶揄されたことは悔しかったが、それももう記憶の彼方だ。美菜は目を閉じてタクシーの揺れに身を任せた。

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楽しかった夜ではあったが、後悔したのは翌朝すぐだ。いつも通り5時過ぎに起床したものの、二日酔いのため頭痛と吐き気で体がうまく動かない。

どこか記憶がおぼろげなのも居心地が悪かった。

― 光にタクシーまで送ってもらって…そのあとどうしたんだっけな。

きちんとメイクも落とし、ルームウェアにも着替えている。そして隣では、いつも通り篤彦が寝息を立てていた。やましいことは何も無いのにどこかに後ろめたさを感じながら、美菜は静かに出勤の準備を始める。

スマホや財布、トレーニングウェア、必要なものを無造作にバッグに詰め込み、美菜は身支度もそこそこに家を出た。

スタジオまで歩く道、ようやくスマホをチェックすると、何十件ものLINEが来ている。たしかに同級生たちとLINE交換をしたが、昨夜の会話を思い出すと既読をつけるのも気が重い。

通知だけ確認する中で、光の名前も発見して一瞬ぎくりとする。

― そっか。グループに入ってたから、個人でも連絡できるよね…。

昨夜はたしかに迷惑もかけたし感謝もしているので、当然お礼をしなくてはいけないと、通知を開いた。

【ずいぶん飲みすぎてたみたいだけど、大丈夫だった?無事帰れたかな。昨日も言ったけど、美菜の元気な姿が見れてよかったです。またみんなで食事でも行こう】

気遣いがつたわるメッセージの後には、写真が添付されていた。

それは、高校の卒業アルバムの寄せ書きページと、仲間たちと撮った写真だ。写真の中央では肩を寄せ合う美菜と光がいた。

自分の、そして光のあどけない姿に、思わず笑顔が溢れた。

美菜は足を止めて、寄せ書きを拡大して自分の筆跡を見つける。

「あ。これだ」

by Mina と名前の上に記されたメッセージを見て、美菜は思わず息を止めた。

― 私、こんなこと書いたんだ。

その瞬間、昨夜のこと、高校時代のこと、そして光と過ごした日々の記憶が、突然胸に押し寄せる。

そして同時に篤彦の顔や声、ぬくもりを思い出し、美菜は思わずスマホをバッグの奥にしまい込んだ。

― 篤彦さん、ごめんね。

昔を懐かしんでいるだけなのに。謝ることなんて何一つないのに。

― 昔の私もごめんね。

夢を叶えてあげられなくて、ごめんね。

美菜は、早朝の道端で、ただ立ち尽くしていた。

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