閉塞の日々をブチ抜け! - 『ストレンジ・デイズ』  ザ・ストラッツ

閉塞の日々をブチ抜け! - 『ストレンジ・デイズ』 ザ・ストラッツ

  • rockinon.com
  • 更新日:2020/10/18
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ザ・ストラッツの待望の3rdアルバムが到着。前作『ヤング&デンジャラス』から2年、その間には映画『ボヘミアン・ラプソディ』の世界的大ヒットもあり、クイーンのサウンドDNAを受け継いだ彼らにも時代の追い風が吹く中での新作制作になるかと思われたが、そこに直撃したのが新型コロナウイルスの感染拡大だった。オープニングの“ストレンジ・デイズ”はまさに“ボヘミアン・ラプソディ”、もしくはマイケミの“ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード”を彷彿させるピアノで幕を開ける。ルークのテノールのカウンターでゴージャスなアルトを響かせているのはなんとロビー・ウィリアムスで、ストラッツとロビーはバンドがロックダウン中にやっていたインスタ中継で知り合い、トントン拍子でコラボに至ったという。本作のタイトル・トラックでもある同ナンバーで、ロビーは歌う。《奇妙な時期だ/自分を見失ってしまう/わからない、来年の今頃どこにいるんだろう》と。

そんな“ストレンジ・デイズ”の歌詞にも明らかだが、本作もまた今年半ばに制作された幾多のアルバム同様にコロナ禍の直撃を反映したものだと言っていいだろう。ストラッツはロックダウン中に(きっちり感染検査を受けた上で)プロデューサーのジョン・レヴィーンと合流して10日間で10曲のレコーディングを敢行、文字通り缶詰合宿状態で本作を一気に作り上げてしまった。そしてそのレコーディングが濃密な時間だったことを証明するように、「自分を見失ってしまった奇妙な時期」のモラトリアムを正面突破していくように、2曲目の“オール・ドレスト・アップ〜”で早くもストラッツは彼ららしいポップでグラマラスなメタル・サウンドを奪還してみせる。爽快極まりないパワー・コード、加減を知らないディストーション、メタル・ギターの快感原則を純粋濾過したかのような同曲から畳み掛けるのがキッスの“ドゥ・ユー・ラヴ・ミー”のカバーなのだから、相変わらず確信犯中の確信犯だ。かつてカート・コバーンも愛したこの名曲をユニゾン・コーラスの特盛りでより派手に仕上げている。最後にはイェー!っと拍手しながら盛り上がっているスタジオの彼らがそのまま収められていて、本作のライブ・レコーディングの楽しさが活き活きと伝わってくる。

“アイ・ヘイト・ハウ・マッチ・アイ・ウォント・ユー”の冒頭、ルークは誰かと電話で話をしている。「俺たちはこのロックダウン中にレコーディングをしてるんだけど、ビッグなコーラスが必要なんだ。やってくれない?」と頼んだその相手は、なんとデフ・レパードのジョー・エリオット! 無事リクルートに成功してジョーとフィル・コリンが参加した同曲はコーラスとギターが二重三重に隙なく埋め尽くし、今からスタジアムに轟く様が眼に浮かぶようなアンセムだ。続く“ワイルド・チャイルド”は一転して地を這うストーナー・グルーヴを搭載したハード・ロック、いやプログレッシブな転調にもびくともしない硬派なヘヴィ・ロックと呼ぶべき1曲。それもそのはず、この曲のゲスト・プレイヤーはトム・モレロなのだ。本作にフットワーク軽く参加した大物ゲストたちが、ロックダウン中に溜まった鬱憤を晴らすようにギターを思う存分にかき鳴らし、歪ませ、叫んでいるのが最高だ。コロナによって二度と元の日常が戻ってこないというタフな予感を前にして深く内省すること、新常態への適応を模索することは必要かもしれないけれど、こうやって本能のままに暴れることも、適応よりも反抗を、世界が変わろうともロックンロールは不変だと突っ張ることも精神衛生上とても大事だと、本作を聴いているとつくづく感じる。

ジャム感覚でブルースやホンキートンクをごった煮していく“クール”、もろに70年代ストーンズしている“バーン・イット・ダウン”など、前半がメタル・セクションだったとしたら中盤以降はより泥臭いロックンロールやガレージ・パンクに移り変わっていく。ただし、後半のハイライトは間違いなくザ・ストロークスのアルバート・ハモンドJr.が参加した“アナザー・ヒット・オブ・ショーマンシップ”だろう。本作はゲストが本当に三者三様で楽しすぎるわけだが、しかもこの曲はアルがストラッツに寄せるのではなく、ストラッツがアルに寄せていったナンバーのため、彼らとしては異色のニュー・ウェイブ的パワー・ポップ・チューンに仕上がっている。四つ角がピシッと揃ったアルらしいギター・リフにルークの驚くほどクリーンなボーカルがよく似合う。これはこれでアリ、というかもっとこういうストラッツを聴いてみたいと思わせる未来のイントロたる1曲なのだ。来年4月には単独来日予定。その日に備えて己を解放する準備をしておくべし。 (粉川しの)

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