カタールW杯を前にじつは絶好調のネイマール。風間八宏の注目は「ボールと体を一緒に動かせる身体能力」

カタールW杯を前にじつは絶好調のネイマール。風間八宏の注目は「ボールと体を一緒に動かせる身体能力」

  • Sportiva
  • 更新日:2022/09/23

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

第15回:ネイマール(パリ・サンジェルマン/ブラジル)

◆【画像・写真】ネイマール、エムバペ、メッシら、パリ・サンジェルマン選手たちのセレブぶりを紹介

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。今回は、現在パリ・サンジェルマンで絶好調。カタールW杯での活躍が期待されるネイマールを取り上げる。そのすごさを確認するうえで風間氏が注目したのはどこか?

◆ ◆ ◆

ボールを持っていない時も危険な選手に

日本でもすっかりお馴染みとなったパリ・サンジェルマンの三枚看板、リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・エムバペの "MNMトリオ"。

8試合を消化した今シーズンのリーグ・アンにおいて、早くも3人で計19ゴールを量産するなど圧倒的な破壊力を見せているが、そのなかでもとくに際立っているのが、ブラジル代表FWネイマールの活躍ぶりだ。

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ネイマールはリーグ・アンで開幕から絶好調だ

ここまでリーグトップの8ゴールを奪ったのに加え、メッシとともにリーグ最多の7アシストをマーク。加入6年目を迎えた現在のネイマールは、自身のキャリアでも過去最高の状態にあると言って間違いないだろう。

17歳でサントス(ブラジル)とプロ契約をかわす以前から注目を浴びていたネイマールも、現在は30歳。選手として、まさに脂が乗った時期を迎えたわけだが、風間八宏氏は現在のネイマールをどのように見ているのだろうか。

「以前はボールを持った状態で別格のプレーを見せていましたが、最近はボールがないところの動きの質も別次元になってきた印象です。動きだけでフリーの状態を作れるので、相手にとっては、ボールを持っている時だけでなく、持っていない時も常に危険にさらされてしまいます。しかも今シーズンはコンディションも抜群にいいので、本当に手がつけられない選手だと思います。

とくにパリ・サンジェルマンではメッシとエムバペという規格外の3人が一緒にプレーしているので、相手は止めようがない。たとえミスのない守備をしているつもりでも、3人のコンビネーションによって一瞬でゴールを決められてしまいます。

そもそもこの3人は、相手にマークされていても‟フリーの状態"としてプレーできてしまう。守田(英正)を紹介した時にも説明しましたが、彼らは(味方に)ボールを当てて受け直すのが前提になっていて、しかもすべてのプレーが正確で速い。どんなに狭いところでも、どんなに速い時間のなかでも、足首だけで速くて正確なパスを連続させられる。何より、3人ともボールを失わないことを当たり前としてプレーしていますから。

ネイマールを止めるだけでも難しいのに、別次元の選手が一緒にもう2人プレーしているわけですから、相手はどうしようもないですよ(笑)」

ボールと一体化できる身体能力

ワールドクラスと言われる選手は数多い。しかし、世界広しと言えど、そのなかで規格外とされる選手はそれほど多くは存在しない。近年では、クリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)とメッシ。その次の世代ではネイマール。そしてこれからは、エムバペやアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)が、その類の選手に数えられるだろう。

将来は伝説の選手として後世に語り継がれるスーパースターのひとりであるネイマールは、誰もマネできないような別格のボールテクニックが最大の魅力とされるが、それ以外の要素も含め、改めて風間氏にネイマールのすごみを聞いてみた。

「ドリブル、パス、シュートといった、ボールを扱う技術が注目されるところだと思いますが、その前に、ボールと体を一緒に動かせる技術、その身体能力に着目すべきでしょう。

いくらボールテクニックがあっても、相手と対峙した時に自分の思いどおりに体を動かせなければ、持っているテクニックを最大限に生かすことはできません。

体とボールが離れていない状態はもちろんですが、ネイマールは、ほかの人からは体とボールが離れているように見えても、じつは自分の距離感でプレーができている。つまり、その範囲が規格外に広く、なおかつ正確で速いので、対峙する相手は誤った判断をしてしまい、一瞬で置き去りにされてしまうという現象が起きてしまいます。

ネイマールはまるでボールを手で持っているかのように、自由自在にプレーしているように見えますが、それはボールの動きと一体化できるだけの身体能力を兼ね備えているからこそ。だから狭いなかで細かい動きもできるし、広い場所では大胆に大きな動きのプレーもできる。その距離と時間に変化をつけることができるうえ、しかも同じ動きのなかからパスもシュートもドリブルも、正確かつ素早く使い分けられる。

実際に対峙した選手は体感しているはずですが、おそらくネイマールが持っているレンジの広さは破壊的だと思います」

相手ありきでプレーする

これはメッシにも共通することだが、普通の選手ができないような摩訶不思議なプレーを何気なくやってのけるのが、ネイマールの魅力と言える。だからたとえピッチ外のスキャンダルがあろうとも、世界中のみんなが見たい選手なのだろう。

そんなネイマールを見て、風間氏は改めて感じることがあるという。

「こうしたレベルの選手を見て感じるのは、相手ありきでプレーしていることです。少年時代に相手とどうやって遊ぶかというところから始まって、そのための技術を習得していく。

要するに、まずは相手を見る力が最初にあって、そのあとにそれを実現させるための技術を身につけていくわけです。そして技術が眼に追いついて両方が一致した時、また違うものが見えるようになる。それを繰り返しながら、選手としてどんどん進化していきます。

ネイマールはもうベテランの域に入っていると思いますが、現在はメッシやエムバペと一緒にプレーしているので、また高い次元でそのサイクルを継続できているのではないでしょうか。3人が一緒にプレーすれば、さらに彼らのプレーは圧倒的なスピード感になります。だから最近のネイマールは、また一段とプレーの幅が広がっているのだと思います」

30歳になってますます別次元の世界を突き進むブラジルの至宝、ネイマール。開幕まで2カ月を切った注目のカタールW杯では、カナリア色のユニフォームを着たネイマールが、きっと世界のサッカーファンを魅了するに違いない。

ネイマール
Neymar da Silva Santos Junior/1992年2月5日生まれ。ブラジル・サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス出身。17歳でサントスとプロ契約し、コパ・リベルタドーレス優勝、南米年間最優秀選手獲得など大活躍。21歳の時にバルセロナへ移籍し、数々のタイトル獲得に貢献。2017年にパリ・サンジェルマンに移籍し、今季6シーズン目を迎える。18歳からプレーするブラジル代表では、119試合出場74得点(2022年6月時点)。ブラジル代表最多得点のペレにあと3ゴールと迫っている。

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風間八宏
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

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