川崎宗則の助言も糧に。独立リーグから NPBを目指す強打者の「吸収力」

川崎宗則の助言も糧に。独立リーグから NPBを目指す強打者の「吸収力」

  • Sportiva
  • 更新日:2020/10/18

鮮烈な本塁打が今も鮮明な記憶として残っている。2018年9月5日、東都大学野球の秋季リーグ戦。この日の注目は、当時、公式戦未勝利ながらドラフト上位候補になっていた東洋大の梅津晃大(中日)だった。梅津は5回3安打無失点で降板。東洋大も1点リードしており「ついに公式戦初勝利か」との機運が高まっていた。

その空気をひと振りで吹き飛ばしたのが立正大3年生(当時)の7番打者・佐々木斗夢(とむ)だった。

美貌に釘付け!横浜DeNAのチアリーダーたち

No image

立正大3年時に日本一を経験した佐々木斗夢

佐々木は、"東洋大三羽ガラス"と呼ばれた上茶谷大河、甲斐野央、梅津の陰に隠れていたが、現在ドラフト上位候補に挙がる左腕・藤井聖(ENEOS)のインコースに入ってくる球を見逃さなかった。フルスイングした打球は弾丸ライナーで神宮球場のレフトスタンドへ飛び込んだ。

この一打の印象が強かっただけに、大学を卒業してからの進路が気になっていた。調べてみると、ルートインBCリーグ(独立リーグ)の栃木ゴールデンブレーブスに在籍していた。

2018年の立正大は、伊藤裕季也(DeNA)や小郷裕哉(楽天)の活躍などもあり、秋のリーグ戦に続き、明治神宮大会も制して大学日本一となった。

指名打者制のない神宮大会では代打のみの出場だったが、佐々木もメンバーの一員として優勝に貢献した。これだけの経歴があれば、社会人野球に進んでプロ入りを目指してもおかしくないが、佐々木は独立リーグを選んだ。

きっかけは大学4年の時だった。外野手として勝負をかけようと思っていただが、再三の不運に泣いた。

春季リーグ戦前の紅白戦で死球を受けて右手親指を骨折。夏場には有鉤骨骨折、喘息の悪化もあり、秋季リーグ戦では規定打席に達することができなかった。佐々木にとっては不完全燃焼の1年となり、進路も思うように決まらなかった。

「企業チームを勧められたこともありましたが、実力不足、実績不足で進むことができませんでした。それなら......と、ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに進もうと決めました」

給与面なら、大手でなくても社会人野球の企業チームのほうが独立リーグよりも恵まれているのは明白だ。現役引退したあとの雇用も確保されている。だが、佐々木が求めたのはNPBに行ける環境だった。

数ある独立リーグ球団から栃木を志望したのも、環境面が大きい。

「社会人野球と同じくらいの環境だと思いますし、指導者も間違いないと思いました」

佐々木がそう語るように、ほかのチームにない魅力が栃木にはある。

まずは練習場。廃校となった小学校を改装した「小山ベースボールビレッジ」という施設を運営母体である人材総合商社のエイジェックが保有。体育館を改装した室内練習場も完備されており、選手たちも頻繁に利用している。

そして指導者の充実度も目を引く。外野守備はゴールデングラブ賞2回の岡田幸文コーチ(ロッテ)、打撃指導は飯原誉士コーチ(元ヤクルト)、そして走攻守をはじめチーム全体を見るのが寺内崇幸監督(元巨人)だ。

佐々木について、寺内監督が「あれだけ振れるのは魅力。NPBに行けるだけのポテンシャルがある」と語る打撃に加え、守備も「毎日特守しています」と岡田コーチと二人三脚で成長を続けている。

「型にはめるのではなく、助言だけをもらい『あとは自分で考えなさい』という感じです。みなさんにお世話になっているので、(恩人を)ひとりに絞るのは難しいですね」(佐々木)と語るほど、強い信頼関係で結ばれている。

◆甲子園出場後に高校中退。そこからプロを目指す「生意気な」右腕>>

さらに9月には、元メジャーリーガーの西岡剛と川﨑宗則が加入。打撃練習時に「リラックスすることが大事」というアドバイスをもらったという。

一方で、成績は思うような数字を残せていない。59試合の出場で打率.287、5本塁打(10月16日現在)。ともに10位以内に入っておらず、抜きん出た数字を残さなければドラフト指名は厳しい。9月30日に行なわれたヤクルト二軍との交流戦に出場するBCリーグ選抜メンバーからも漏れた。

それでも佐々木は前を向く。

「(アマチュアと違って)毎日試合があって、そのなかで修正していかなければならない」

そう語る表情は、充実感に満ちている。10月18日から始まるプレーオフに向けても「1試合1試合、自分のやれることを整理しながら後悔なくやっていきたい」と目を輝かせていた。

立正大時代には社会人野球のシダックスで野村克也監督(当時)から薫陶を受けた坂田精二郎監督に「自分で考えて、意図を持ってプレーすること」の大切さを学んだ。

いろいろな球界の、それぞれでトップを張った人物からの指導は大きな糧だ。それを実戦の多い独立リーグで、しかも環境に恵まれた栃木で自分のモノにしていけば、NPB入りはもちろん、そこで輝ける日もそう遠くないのかもしれない。そう思わせるだけのポジティブな姿勢と吸収力が佐々木にはある。

高木遊●文 text by Takagi Yu

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加