アナログゲームの人気が再燃 デジタル世代には「斬新」

アナログゲームの人気が再燃 デジタル世代には「斬新」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/02/22
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「おうち時間」に家族と、友人とオンラインで──コロナ禍のおこもり生活に「ゲーム」を選んだ人は多いだろう。

世界的ヒットとなった任天堂の「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」や、売り切れが相次ぐソニーの「PS5」など、巣篭もり需要により売り上げを伸ばした商品は数多くある。

その一方で、同じくらい熱い盛り上がりを見せている分野がある。「アナログゲーム」だ。

アナログゲームとは、家庭用ゲーム機やモバイルゲームと異なり、電源やネットを一切使わないで遊べるもの。ボードゲームやカードゲームなどが含まれる。

「TSUTAYA」を展開する蔦屋書店によると、2020年4〜6月のボードゲームの売上は前年同期と比べ454.0%も急上昇。ファミリー向けで気軽にプレイしやすいボードゲームに人気が集まったという。

自粛期間中、自宅で楽しめることから需要が高まったと見られるアナログゲーム。アナログゲームにも詳しく、自身も対話型推理劇体験コンテンツ「マーダーミステリー」の専門店を運営しているミスティブ代表の酒井りゅうのすけ氏は、「『ボードゲーム・ブーム』の流れは、実はコロナ前からはじまっていた」と話す。

なぜアナログゲームがいま人々を惹きつけているのか。酒井氏にアナログゲーム市場の最新トレンドとともに、その魅力を聞いた。

デジタルネイティブ世代にとっては「斬新」

酒井氏によると、ボードゲーム市場はここ数年で急激に拡大、年間1000タイトル以上の新作ボードゲームが開発・発売されているという。

「ボードゲーム市場の盛り上がりは『ゲームマーケット』の規模拡大にも表れている。参加者数、出展数ともに年々右肩上がりを続けています」

「ゲームマーケット」とは、電源を使用しないアナログゲームのみを対象としたゲームイベント。東京で春秋の年2回、大阪で年1回開催され、ゲームクリエイター(同人系・商業系を問わない)が出展したさまざまなボードゲームを体験、購入することができる。カードゲームやテーブルトークRPGなど多ジャンルのゲームだけでなく、解説書やコマ、サイコロといった関連グッズも豊富に扱うゲームボードの祭典だ。

2000年に行われた第1回開催では約400人だった参加者は2010年頃を境に急増。2019年に東京で2日間にわたり開催された「ゲームマーケット2019秋」では、約2万9300人が参加した。出展数は2000年の32件から、2019年には2日間平均で約707.5件にまで伸びたという。

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「ゲームマーケット2019秋」では過去最多の約2万9300人が参加した

また、飲み物を片手に世界中のあらゆるボードゲームが楽しめる「ボードゲームカフェ」の出現も、流行の後押しに。初対面の客同士が同じテーブルで一緒にボードゲームを楽しむというコンセプトが、デジタルネイティブ世代の若者の間で「斬新だ」と話題を呼んだ。現在では、全国に約450店舗ほどのボードゲームカフェがあるそうだ。

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全国で12店舗のボードゲームカフェを展開する「JELLY JELLY CAFE」

トレンドは「大喜利系」

こうしたイベントや体験型施設の功績は、日本のアナログゲーム人口を増やしただけではない。日本では珍しい海外のボードゲームや、ゲームクリエイターによるユニークな新作アナログゲームを楽しむ機会が増えたことで、より多くのジャンルや種類のアナログゲームが広く人々に知られるきっかけにもなったという。

そんな中、人々を魅了させるアナログゲームにも「トレンド」があると酒井氏は話す。特にここ数年間、人気が衰えず売上を伸ばし続けているジャンルが「大喜利系」だ。

大喜利系とは、お題が書かれたカードの中からプレイヤーが1枚選び、上手な答え考え出す、つまり「大喜利」をするゲームだ。

人気のカードゲーム「ナンジャモンジャ」も大喜利系だ。カードに描かれた謎の生物に自分で「名前」をつけて、再び山札から同じカードが現れたら、その名前を誰よりも早く叫ぶという遊びだが、「どんな名前をつけるか」にプレイヤーの大喜利センスが問われるわけだ。

他にも、カードを引いて、書かれたキーワードから ”あるシチュエーションを声と表情だけで表現する”や”相手を満足させるプロポーズを考える”などを大喜利する「はぁって言うゲーム」(幻冬舎)、「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」(ClaGla)などのゲームがこの分類に入る。

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「大喜利系」カードゲームは根強い人気を誇る

「大喜利は『笑点』や『IPPONグランプリ』など、テレビでもよく観られることから日本人にとって馴染みのあるエンタメです。それを、ボードゲームを通じて自分たちでやってみる。そんなお笑い擬似体験の要素が、人々の心をくすぐるコンテンツになっています」

自分の回答で一緒にゲームをプレイする人々に「ウケる」。こうした”笑いの成功体験”で盛り上がることができるのは大きな魅力だ。

近頃、人気が急上昇している最新トレンドもある。「ミステリー系ゲーム」だ。

ミステリー系ゲームとは、ゲーム開始時に提示されたとある”謎”が、プレイしていくうちに明かされていくというもので、「ゲーム終了時には、まるで推理小説を読み終わったような達成感がある」のだという。

ミステリー系ゲームのトレンドは、ボードゲームの本場として知られるドイツで誕生した。毎年20万人近い来場者を誇るボードゲームイベント「エッセン・シュピール(Internationale Spieltage SPIEL)」で数年前から注目されているそうだ。

日本におけるミステリー系ゲームは、世界と比べまだ浸透しきっておらず、その数も大喜利系ゲームと比較するとまだ少ない。しかし、その流行の兆しは既に見えはじめているという。

「ドイツで起きたトレンドは、数年経って日本にも上陸します。実際、去年あたりから前述のゲームマーケット内でミステリー系ゲームを出展するクリエイターが増えはじめています。

ミステリー系ゲームの一種で、ゲームのストーリー内で起きた殺人事件の犯人をプレイヤー同士が対話を通じて自分たちの中から見つけ出す『マーダーミステリー』もとても人気が高まっています」

アナログゲームをオンラインでプレイ

プレイヤーの増加から、ジャンルの拡大まで。躍進を続けているように見えるアナログゲーム市場だが、やはり新型コロナのパンデミックによる打撃は大きかったという。

ゲームマーケットは、「2020春(東京)」と「2020大阪」の開催を断念。約1年ぶりの開催となった「2020秋(東京)」の参加者数は約1万3300人に減少した。

飲食をしながら長時間ゲームをプレイすることが前提のボードゲームカフェも、外出自粛に伴い売上が低迷。閉店を決めた店舗もあるようだ。

こうしたリアルな空間でボードゲームを楽しむことが難しくなった一方で、商品自体の需要はコロナ禍でも伸び続けている。その理由として酒井氏は、今までの市場の盛り上がりや巣篭もり需要の他に、ある要素を指摘する。アナログゲームをオンラインで楽しむというトレンドだ。

「ボードゲームの内容をデジタルゲーム化するということではありません。ボードゲーム自体をオンラインでプレイする動きがコロナ禍でさらに活発化したように感じます」

そのひとつとして、オンラインチャットツールZoomを利用した遊び方がある。3〜4人でZoomを開始し、そのうち1人が”ゲームマスター”となり手持ちのボードゲームを画面に映しながら操作。他の参加者は、それを見ながら自分の動きを”ゲームマスター”に指示するというものだ。

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他のプレイヤーが出したヒントから答えを連想するボードゲーム「ジャスト・ワン」をZoomを使って楽しむ様子(写真提供:JELLY JELLY CAFE)

Zoom飲み会の流行とともに、オンライン宴会を盛り上げる方法として人気を集めたというこの遊び方。ボードゲームを画面に映すだけというシンプルな手順でプレイできることから、幅広い世代に広まったという。

「コントローラーによる複雑な操作も必要ないアナログゲームであれば、デジタル機器の扱いに慣れた世代以外も気軽に楽しむことができる。

普段ボードゲームにあまり馴染みのない人が『Zoomでボードゲームなんて楽しそう!』と参加することで、その楽しさに気づくきっかけにもなったようです」

また、ボードゲームをプレイする様子を動画で紹介するYouTuberの影響も大きい。ボードゲームを扱った企画は、コロナ禍以前から「〇〇やってみた」と題し、手軽に動画コンテンツになることからYouTuberの間では人気だったという。

おこもり生活によりYouTubeを含む動画の視聴機会が増え、ボードゲーム紹介動画がより多くの人の目に留まったことで「自分たちもやってみよう」と真似する人が増えたのではないかと酒井氏は考える。

「『QuizKnock』などの人気YouTuberが動画にすることで、子どもたちや若者世代がボードゲームを知る機会にもなっている。ボードゲームを楽しむ層の若年化にも貢献してくれているように思います」

人気YouTuber「QuizKnock」もボードゲームの紹介動画を数多くアップしている

こうしたオンライン化の流れは、今後のウィズコロナ/アフターコロナの時代にもボードゲーム市場の肝となると酒井氏は話す。

「SCRAPの『リアル脱出ゲーム』がZoom上で開催されるなど、リアルな体験型ゲームをオンライン化する動きはコロナ禍により定着しつつあると思います。

ボードゲームも、この流れに乗り遅れてはいけない。ZoomやLINEなどオンラインサービスとの親和性の高いボードゲームをいかに展開していくかが、今後大事な鍵となるのではないでしょうか」

アナログでありながら、時代に合わせ進化の歩みを止めないボードゲーム。コロナ禍を乗り越えた先で、次はどのように人々を楽しませてくれるのか。その変化にまだまだ目が離せない。

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