日本産食材を心待ちにする韓国人に背を向ける左派政権の輸入規制

日本産食材を心待ちにする韓国人に背を向ける左派政権の輸入規制

  • JBpress
  • 更新日:2022/01/15
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人気が高まりつつあるジャパニーズ・ウイスキー(写真:ロイター/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

昨今、韓国のスーパーやデパートの精肉コーナーに行くと、「オーストラリア産の“WAGYU”はいかがですか?」と販売員にしばしば声を掛けられる。

かつて外国産牛肉市場を牛耳っていた米国だが、豪州産牛肉の勢いに飲まれたことや狂牛病などの影響から輸出力が低下している。その一因は2003年に米国で発生したBSE(牛海綿状脳症)だ。

日本でもBSE問題の後、牛肉の輸入先は豪州産のほぼ一本だったが、米国産牛肉の輸入規制が緩和された後は徐々に増加している。2018年のデータを見ると、豪州産の51%に対して米国産は41%まで回復した。

韓国の場合、2008年の「狂牛病ろうそくデモ」の際に米国産牛肉の輸入再開について激しい抗議活動が行われたため、筆者は韓国でも当然のように豪州産のシェアが上がっているものとばかり考えていた。ところが、「韓国は昨年、米国産牛肉の最大輸入国になった」「日本を抜いた」という韓国・KBSの1月11日のニュースを見て、意表を突かれた。

米農務省及び米食肉輸出連合会の発表によると、昨年1月から11月まで韓国が輸入した米国産牛肉は合わせて25万3175トンで、前の年の同じ時期に比べて16%増加した。これは、2020年まで米国産牛肉の最大輸入国であった日本よりも約1万5000トン上回っている。

韓国の人口は約5163万人で、日本の1億2569万人の半分以下だ。単純計算でも、「韓国人は日本人の2〜3倍の牛肉を食べている」という話になる。そこに少し疑問を感じたので調べてみると、この報道にはカラクリがあった。

少々古いデータではあるが、2017年基準の韓国市場における国家別牛肉の輸入量では、「米国:48.4%、豪州:42.8%」と、日本の輸入先と順位が異なる。韓国内での米国産牛肉消費量が日本を超えたからと言って、牛肉全体の消費量が日本を超えているわけではない。

しかし、韓国では今、空前の“肉ブーム”が到来していることは事実だ。

ソウル市内のある焼肉店では、昼食で焼肉にありつこうと、朝の9時から客が列をなしている。また、かつて屠畜を行う市場でしか見ることのなかったタンを扱う店舗も増えており、厚切りタンに舌鼓を打つ韓国民も少なくない。

コロナ禍前、日本を訪れた韓国人が「牛タンだけは食べられない」と話していた記憶が蘇る。

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豪州産の“WAGYU”。既に和牛は日本だけのものではなくなってしまった(写真:ロイター/アフロ)

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世界で最も牛肉が高い国はどこ?

おおよそ1年前の2月、「韓国給食新聞」が「我が国は、世界で牛肉が最も高い」と報道した通り、韓国で牛肉の価格は少々値が張る。

<国内産牛肉> ロースステーキ用 1kg
1位:韓国 14万8029ウォン(約1万4200円)
2位:日本 12万7723ウォン(約1万2300円)
3位:仏国 3万5774ウォン(約3400円)

<輸入牛肉> ロースステーキ用 1kg
1位:韓国 6万5023ウォン(約6200円)
2位:日本 6万0320ウォン(約5800円)
3位:独国 4万5320ウォン(約4400円)

※出所:大韓給食新聞(2021年2月25日)

薄給の筆者が「肉を買う」といえば、もっぱら韓国産の鶏肉や豚肉の購入である。それは多くの韓国民も同じで、韓国で「焼肉を食す」といえばサムギョプサルで有名な豚肉が主流だ。

昨年12月に韓国・統計庁が発表した資料でも、豚肉の1人当たりの消費量が2018年基準で27.0kg、鶏肉が14.2kg、牛肉が12.7kgとあるように、 韓国民に豚肉が好まれるのは牛肉の消費量が増加した今でも変わらない。

※1980年時の消費量は豚肉:6.3kg、鶏肉:2.4kg、牛肉:2.6kg
※1人当たりの肉類消費量は1980年の11.3kgから2018年の53.9kgと、39年の間に約5倍も増加

韓国民の肉食化の背景には、日本同様に食文化の変化が大きく影響している。価格が上昇し続ける不動産に見切りをつけた人々が、不動産よりも手ごろなブランド品や高級食材を求めるようになったこともある。

加えて、新型コロナの感染拡大の影響で、カネの使い方に変化が生じたことも一因に挙げられる。自由に旅行にも行けず、政府によるソーシャルディスタンス政策によって会食が制限された韓国民の購買欲が、牛肉に向かったという指摘だ。

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韓国・ソウルの江南にある焼き肉店。ホルモンとカタカナで書かれている

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今では牛タンも韓国ではメジャー

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こちらは江南のステーキ店

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Tボーンステーキ

韓国で人気のジャパニーズウイスキー

牛肉に焦点を当てて話をしているが、韓国民による購買欲は何も牛肉に限った話ではない。ワインやウイスキーなど、海外の種類の輸入量も増加しており、ウイスキーに至っては5年振りに輸入額最多(例年比5倍)を記録した。ハイボールブームの影響で、酒屋でさえもウイスキーが手に入らない。

「ハイボールのウイスキーが入荷しない」という話を江南(カンナム)交差点にある有名な回転寿司店の従業員に聞いてから2カ月が経っている。

財務省の貿易統計によると、日本のウイスキー輸出額は2020年に271億円を記録し、清酒を20年振りに逆転した。韓国のウイスキー消費量は世界に比べれば微々たるものだが、韓国のハイボールブームが世界における「ジャパニーズウイスキー」の地位を後押ししている。

ちなみに、先日行ったソウルの焼肉店(日本式)で、山崎の12年ボトルが50万ウォン(約5万円)で売られていた。あまりの品薄に、ショット売りで水割りやハイボールを楽しむしかできない状態だった。

そういえば、日本製品不買運動によって姿を消した日本産ビールも、韓国で徐々に姿を現し始めている。巣ごもり需要で、味の良い日本産ビールを求める声が多くなったからだ。

巷では高級路線の寿司店はもちろん、ひと昔前にはあまり見受けることができなかった焼き鳥屋(と言っても、日本のそれとは程遠いが)も流行っており、“おまかせ”や“コース”で注文するスタイルが人気となっている。

焼き鳥は庶民の味方ともいうべき料理だが、コースで1人10万ウォン(約1万円)と庶民が行くような焼き鳥ではない。

結局、韓国民の食欲を満たすには日本食や日本食材が欠かせないということだ。

にもかかわらず、韓国ではいまだに日本の多くの食材が輸入禁止になっている。

韓国のTPP加盟と日本産食品の輸入規制

環太平洋経済連携協定(TTP)に参加を表明している台湾は、日本産食品の輸入規制撤廃の動きを見せている。同じようにTTP加盟の意向を表明した韓国はどのような対応を取るのだろうか。現状、韓国は“TPP加盟不適格”と言われている通り、加盟するには様々な問題を解決しなければならず、その中には日本産食品の輸入規制撤廃という条件が必ず入ってくるだろう。

その時、日本産輸入を良く思わない韓国民によって、「狂牛病ろうそくデモ」や「日本製品不買運動」のような「脱日本デモ」が再び行われるかもしれない。ただ、日本の牛肉含め、輸入規制を解除されることを心待ちにしている親日派の消費者や貿易商は多い。“日本産”というブランドは、それほどまでに価値がある。

羽田 真代

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