内田也哉子「私は内田裕也の情動の部分を受け継いでカッとしやすいんで」 中野信子と語る“両親に似ている嫌な部分”との付き合い方

内田也哉子「私は内田裕也の情動の部分を受け継いでカッとしやすいんで」 中野信子と語る“両親に似ている嫌な部分”との付き合い方

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/01

内田也哉子「『もう少し樹木希林と距離をおいたら?』とたくさん言われた」 中野信子と考える“普通”の家族とはから続く

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内田也哉子さんと中野信子さんの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)の刊行を記念して、4月11日に行われたオンライントークイベント。ZoomウェビナーとYouTubeライブ中継(現在、YouTubeにてアーカイブ動画を公開中)を合わせて1800名超の視聴者を集めたトークの全貌を公開します。(全6回中の3回目。#1#2#4#5#6を読む)

(文:小峰敦子、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

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仲直りを見せないとダメ

内田 親子の話が続いたので、ここら辺で夫婦の話にしましょうか。中野さんに質問が来ていますよ。ペンネーム「いちごみるく」さんからです。

Q.【50代女性より】中野信子先生に訊いてみたいことがあります。ついつい子どもたちの前で夫婦げんかをしてしまいますが、親が喧嘩をしている様子を見ると子どもの脳に悪い影響を与えてしまいますか? 円満であることにこしたことはないと思うのですが。

中野 これは端的に言うと、影響を与えます。面前DVと呼ばれるものですね。ただそれよりももっとよくないのは、夫婦喧嘩をした後に仲直りしている場面を見せないことだそうです。これは調査の結果があります。

内田 あ、仲直りやってません。

中野 あら、ダメダメ。けんかした後にリカバリーできるんだよ、というのを見せてあげる必要があるんだそうです。

内田 一部しか見せていないと、エピソードが完結していないですものね。

中野 そうなんですよ、でも親としては恥ずかしいかもしれませんね。

内田 恥ずかしい。「ごめんなさい」と言っている姿も見せなければいけないなんて。

中野 感情的になってけんかした後に、「ちょっと言い過ぎた」とか、「私はいまだにあなたのこういうところを許せないけど、自分も人のことを言えないと思う」とか、そういう姿を見せると、子どもは、「ああ、人間というのは折り合いつけることができるんだ」とわかって安心するんだそうです。

それでストレスホルモンの値も下がるんです。ストレスホルモンが高いと脳は萎縮するんですよね。だから、けんかしたままの状態に子どもを置いておくのは、子どもにとってはよくないんです。そういう状態の脳のMRIを撮った研究があります。だから夫婦げんかを頻繁にする家庭は、形だけでもいいから仲直りのふりを演じてあげてほしいと思います。

内田 でも中野さん、お言葉ですが、子どもって真偽を見抜く目を持っていますよ。見抜いちゃうんですよ(笑)。何か取り繕おうとしてるだけだな、とかね。

中野 そうか。それでは、家族なんか持たなくていいよと思っちゃうね。

内田 はい。しかも、私は脳が萎縮したまんま育ったんだな。

中野 (笑)いやいや。大人になったら自分で育てられる部分もあるから。

ブレーキスイッチを持っておくことも必要

内田 『なんで家族を続けるの?』でも触れていますが、中野さんに、情動については父親から受け継ぐ傾向にあると教わりました。私は父の情動の部分を受け継いでいるので、どうしてもカッとしやすいんですね。だからくだらないことでも、カッとなってけんかを吹っ掛けてしまう。だから、「けんかが好き」ってよく言うんですけど、けんかした後に何となく張りつめていたテンションがパッとガス抜きされる、みたいな感覚を私は感じるんです。いいじゃないか、さあ次に行ってみようと思えるようになるんですよね。

でも子どもにしてみれば、自分はお父さんとお母さんの一部分をもらっているかと思うと、その2人がけんかしたりいがみ合ったりして常にテンションが高い状態っていうのは、やっぱりストレスなんですよね、どう考えてもね。

中野 そうなんですよね。30代の方から、「自分自身が両親に似ている部分を見つけて、受け入れづらい」という質問が来ていますね。こちらの話につながりそう。

Q.【30代女性より】私の両親もいわゆる“毒親”の分類に入ります。母親と向き合うのにとても試行錯誤してきましたので、今回の本を楽しく拝読しています。

今回、お2人にお伺いしたいことは、自分自身が両親に似ている部分を見つけたときに、受け入れづらい気持ちになると思いますが、うまく受け入れていくにはどうしたらいいと思いますか? もしくは、変わった親を受け入れるには、どうしたらいいと思いますか?

中野 いやあ、これはそんな簡単には受け入れられないですよ。

内田 そうよね。だからストレスに耐えられなくなったほうから、うまく距離を置いていく。それが子どもであっても、できるならば、そういう距離を置いていくことでしょうか。

中野 そうですね。それから、自分の中に何かスイッチが入ってしまうファクターがあると思うんです。自分の中にうるさいママがまだ棲んでいて、何かきっかけがあるとママが現れる。そのスイッチをなるべく遠ざけておくというのが大事かもしれないですね。あるいは、自分の中にママが現れたときに、「どうどう、どう」って気持ちを静めるようなブレーキスイッチを持っておくことも必要ですよね。不安になると出てくるとか、何かあると思うんですよ。

内田 出やすい環境がね。

中野 そういうときに、「いや、そんな不安じゃないよ」というブレーキスイッチを押す。

内田 自分の中に2人ぐらいいたほうがいいんですね。思い出して「大丈夫だよ」と言い聞かせてくれる自分も棲まわせておく。

中野 そうそう。それはお友だちでもいいし、物語上の人物でも何でもいいんです。私だったら、也哉子さんを一人棲まわせておいて、也哉子さんだったらここでもっと言葉を選ぶなとか思い出して、ブレーキをかけるとか。

人間が脳を持っていることのメリット

内田 アドバイスをもらいたい人だったら、中野さんを入れておいて、困ったらチャチャッと教えてもらえばいいんだ。

中野 人間は、確かに遺伝子は親から受け継いでいるから、質問者の方のように悩んだりするのだけれど、人間が脳を持っていることのメリットは、遺伝的に繋がっていない人の考え方をあたかも遺伝のように真似できるということなんですよ。それはもう時代を遠く隔てた2000年前の人でもいいし、一度も会ったことのない有名な先生でもいいし、今日のトークライブをご覧いただいたことで、よろしければ明日から也哉子さんか中野信子を棲まわそうと思っていただいてもいいし(笑)。

内田 自分の中で大きくなってしまった思いは、まったくなくしてしまうことはできなくても、何か別のファクターとか人を出現させることによって、両親のイヤだったところが割合としては小さくなる。どんどん割合が小さくなったら、それは自分の心の中でうまく距離をとっているということですものね。ああ、これ、すごくいい!

中野 本木さんは、そういうお仕事ですよね。斎藤道三とか、志賀直哉とか、あるいは架空の人物とか、ぜんぜん自分と関係ないキャラクターなんだけど、一時的にその人を棲まわせて演じるのではないかな。

内田 そうですね。イギリスに住んでいたとき、とても面白いと思ったのは、イギリスでは小学校から演劇の授業があるんですね。主要5教科以外に必ず、体育と一緒にアートやドラマの授業があるの。どうしてイギリスではいつもドラマの教科があるんだろうと思っていたけど、授業で演技をするというのは、いろいろな人の思考パターンを自分の中に取り入れる訓練なのかもしれないですね、今のお話とつながっているかもしれない。

ブレーキのために、大事なのは想像力

中野 ああ、それは面白いね。確かにロールプレイというのはすごく役に立つんです。「人から何か強く言われたときに萎縮して何も言い返せません。どうしたらいいでしょう」という悩みをよく聞きます。そういうときに、「最初はロールプレイから始めましょう」と答えることがあるんですよ。「強いあなたをつくりましょう」と言っても難しいから、「こういうふうに言われたら、その上司に対して言い返すのではなく、『あ、ほこりがついています』とか言うところからまずはやってみましょう」とね。本当は首を絞めてやりたいほどむかついても、「あ、ネクタイが曲がっていますよ」と、まずはネクタイから。

内田 (笑)そこでちょっとだけエネルギーを逃すのね。それは役立ちそうですよね。対談するなかで中野さんに教わったんですけど、カッとしたときにそれを抑える方法の一つとして、自分がこうやって怒ると、結果として、こんなまずいことが起きたな、恥ずかしかったな、嫌だったなという過去の記憶を思い出せるようにしておくと、あんな思いをすることが引き換えになるくらいだったら、今カッとするのは沈下させておこうとブレーキがかかる。大事なのは想像力なんですね。

中野 想像力、大事です。

内田 だけど、カッとなる瞬間にそれを思い出すというのは、そうとう至難の業ですよね。

中野 大変ですね。知性が試されます。

内田 人生、修行の連続ですね(笑)。

中野 (笑)では次、いってみましょうか。

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Googleフォームからの投稿も可能です。
締切までに応募いただいた投稿から、『なんで家族を続けるの?』著者・内田也哉子さんと中野信子さんが優秀作品を選びます。
■賞品 優秀作品には、著者サイン入りの文春新書『なんで家族を続けるの?』を進呈します。

※優秀作品は各種SNS、ウェブサイト、その他メディアや広告などで、Twitterアカウントとともにご紹介することがあります。また、その他の応募作品についてもTogetterでまとめたり、ご紹介させていただくことがあります。ご了承のうえご応募ください。

※優秀作品は、文藝春秋プロモーション部のTwitterアカウントにて発表いたします。賞品の発送は、日本国内のみとさせていただきます。締切数日後にDMにて送付先を伺います。連絡が取れない場合、当選が無効になることがございます。

内田也哉子
1976年東京都生まれ。樹木希林、内田裕也の一人娘として生まれ、19歳で本木雅弘と結婚する。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。著書に『会見記』、『BROOCH』(ともにリトルモア)、樹木希林との共著『9月1日 母からのバトン』、翻訳絵本に『ピン! あなたの こころの つたえかた』(ともにポプラ社)、『こぐまとブランケット 愛されたおもちゃのものがたり』(早川書房)、『ママン 世界中の母のきもち』(パイ インターナショナル)などがある。

中野信子
1975年東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』、『不倫』、ヤマザキマリとの共著『パンデミックの文明論』(すべて文春新書)、『ペルソナ』、熊澤弘との共著『脳から見るミュージアム』(ともに講談社現代新書)などがある。

「本木雅弘が苦手な納豆を例に語り始めて…」 内田也哉子、中野信子が明かす“なんで結婚しちゃったのか”の答えへ続く

(内田 也哉子,中野 信子/週刊文春WOMAN)

内田 也哉子,中野 信子

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