アプリでDC残高照会から運用指図まで完結、損保ジャパンDC証券「つみたてナビ」は利用者3割が運用指図に使用

アプリでDC残高照会から運用指図まで完結、損保ジャパンDC証券「つみたてナビ」は利用者3割が運用指図に使用

  • モーニングスター
  • 更新日:2021/01/13
No image

勤め人が、ゼロから資産を作っていく方法は、一昔前には「財形貯蓄」だったが、現在は「確定拠出年金(DC)」(会社型・個人型)になった。ところが、DCの活用は十分とはいえない。特に、会社型DCについては、掛金の拠出を企業が行うため、受益者である従業員に制度の加入者としての意識が薄く、運用指図をすることなく、定期預金で毎月掛け金が積み上がっている状況で放置されているケースが少なくない。せっかくの蓄財チャンスが、ゼロ%金利の積立預金になってしまっている。この制度運営のジレンマに対し、損保ジャパンDC証券が提供しているスマートフォンアプリが解決の糸口になりそうだ。スマホで残高の確認や運用指図ができれば、会社型DCの運用も変えられる可能性が高い。

損保ジャパンDC証券は、確定拠出年金専門のサービス会社だが、1月8日に、同社が企業型DC向けに提供しているスマートフォンアプリ「つみたてナビ」の利用者数が1万人を突破したと発表した。「つみたてナビ」は、同社が提供する企業型DCの全ての加入者を対象とした無料のスマホ用アプリで、加入者の「資産残高照会」から、「リスク許容度診断による商品選択のサポート」、そして、「運用指図の実行」に至るまで一気通貫でサポートしてくれるツールだ。利用者からは、「すぐに運用状況が確認できて便利。シミュレーションも使いやすい」と好評で、アンケートでは91%が継続してアプリを活用したいと答えている。そして、実際にアプリ利用者の延べ約30%がアプリで運用指図を実行しているという。企業型DCでは、多くの加入者が、自身の資産残高すら把握していないといわれる中で、利用者の30%が運用指図を行うというのは驚く水準だ。

そもそも勤労者の資産形成手段が「財形貯蓄」から「DC」に移ってきたのは、長引く超低金利の影響で、「財形貯蓄」の利回りがゼロ%台となり、資産形成としての意味合いがほとんどなくなってきたことによる。財形貯蓄は、残高(住宅、年金を合わせて元本と利子の合計)550万円までは、それぞれ住宅や年金として利用する場合は利子非課税のメリットがあるが、利息のない状態では非課税メリットもない。それでも、令和元年度で制度利用件数は732万件、15兆6900億円の残高がある。給与天引きで自動的にお金が積み上がっていくことにメリットを感じる人が少なくないからだろう。貯蓄の基本は受け取る前に貯蓄してしまうことだ。給与天引きで貯蓄して、手取りで生活をしていれば、自動的に貯蓄金額が増えていく。

この財形貯蓄が最も良く利用されていたのは1990年代のことだった。当時は、企業が上乗せ金利を付ける「社内預金」などの制度もあって貯蓄を奨励し、持ち家の希望を実現させるための企業側のサポートが手厚かった。「社内預金」や「財形貯蓄」で住宅購入の頭金を作り、持ち家は住宅ローン完済後に財産になり、定年まで勤めて住宅ローンを完済すれば、退職金と合わせて悠々自適の老後生活が送れるというのが、昭和時代のロールモデルともいえた。

ところが、平成時代に入ると、ゼロ金利、次いで、マイナス金利の時代となり、預貯金では資産が増えなくなる。「社内預金」の制度は徐々に廃止され、福利厚生で「財形貯蓄」を制度化する企業も減っている。代わりに、企業側が用意したのが「企業型DC」だ。2001年10月に制度がスタートした。DC制度は、企業年金の運用を企業が委託していた生保や信託銀行から、受益者である従業員に切り替える制度だ。もちろん、資産運用などをしたことがない従業員にいきなり、運用を任せることはできないので、「投資教育」という従業員教育を企業の義務として課している。

資産運用を専門の金融機関から、従業員個人に変更することによって、運用する金融機関に支払う手数料が不要となる。しかも、米国では企業型DCの運用によって「401kミリオネア」と呼ばれる資産家が多く誕生していることが知られていた。紋切型で債券に偏重した分散投資をプロが行うよりも、若い従業員は株式の投資比率を手厚くするなど、個々の従業員のリスク許容度に応じた運用が行われれば、企業年金の運用効率も高まると考えられた。

ところが、実際には企業型DCについて、しっかり資産分散を考えて投資ポートフォリオをつくり、それを数年ごとに資産配分を見直すなどということを実行する人は少ない。のみならず、DC専用口座にアクセスするID(固有の識別番号)とパスワード(暗証番号)すら把握していないという人が大半であるという実態になってしまった。既に10年くらい前から、「企業型DCの無関心層問題」は意識されているが、その解決策がなかなか見つからないというのが現実だった。

損保ジャパンDC証券が提供しているスマホアプリ「つみたてナビ」は、残高を確認するにとどまらず、アプリを使って運用指図(掛金の運用割合の変更やスイッチングなど)ができる。そして、それを持っている人が約30%も実際に運用指図をしていることが画期的なことといえる。アプリには動画も含めた投資教育コンテンツや「つみたてシミュレーション」などのシミュレーションツールも搭載されているが、実際には、「スマホのアプリで残高照会ができ、運用指図もできる」という環境を提供したことが、従業員であるDC加入者を動かしたのではないだろうか。特に、20代、30代という若い世代は、スマートフォンのリテラシーが高い。企業型DCで最も関心を呼び起こしたい層が、若い世代であることを考え合わせれば、「つみたてナビ」は、企業型DCが抱える大きな課題に解決策を与える画期的な手段といえる。

損保ジャパンDC証券は、運営管理機関として企業と加入者の間にたって制度運営のサポートを行うとともに、記録関連運営機関(レコードキーパー)として年金資産の管理を行う機能を2つ併せ持つというユニークな事業を展開している。「つみたてナビ」は、この記録関連業務を併せて行っているがゆえに提供できるサービスといえる。一般には運営管理機関と記録関連運営機関は別会社となるため、投資教育関係と運用指図の受付業務と年金データの提供や運用指図の実行業務は異なるため、「つみたてナビ」と同じようなサービスを提供しようとすると、運営管理機関と記録関連運営管理機関の間で綿密な打ち合わせが必要になる。

現在、記録関連運営管理機関は、申込書等のペーパーレスでの受付や、企業型DCと個人型DC(iDeCo)の掛金情報の一元管理などに向けたシステム開発にかかっていて、なかなか「つみたてナビ」のような顧客向けサービス拡充について開発の時間を割くことは難しいのかもしれない。ただ、加入者のDC運用・管理がスマホのアプリで完結するというサービスの提供は、利便性の提供のみならず、加入者の投資行動を促すというプラスアルファの効果もあることが「つみたてナビ」の実績が示している。損保ジャパンDC証券では、「つみたてナビ」をiDeCoでも使えるようにすることを次の課題として意識しているという。DC運用を促すテクノロジーの進化に期待したい。(図版は、アプリ「つみたてナビ」の利用者アンケート結果)

徳永 浩

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加