涙こらえた“最後のキャッチボール” 燕・五十嵐が語った最高の戦友・石川との絆

涙こらえた“最後のキャッチボール” 燕・五十嵐が語った最高の戦友・石川との絆

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  • 更新日:2020/10/17
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引退会見を行ったヤクルト・五十嵐亮太【写真提供:ヤクルト球団】

現役生活23年、お疲れ様でしたと伝えたい

ヤクルト・五十嵐亮太投手が、15日、都内の球団事務所で引退会見を行った。五十嵐投手をずっと取材をしていた私にとって、引退のニュースを目にした時、ついにその時が来てしまったのかと寂しい気持ちでいっぱいになった。忘れられない瞬間がいくつもある。

今年は新型コロナウイルスにより、なかなか取材も例年通りとはいかず、五十嵐投手と話したのは2月の浦添キャンプが最後になってしまっていた。一人、黙々と走り込んで汗を流す姿を少し離れたところから見ていたら、こちらまで来てくれ、息を上げながら「今年もよろしくお願いします。きついけどね、頑張りますよ」と声をかけてくれた。その時の“やってやるから見ててくださいね”という熱い思いのこもった瞳が忘れられないでいた。

そんな、五十嵐投手の引退会見。会見前、報道陣や球団職員の方も、口々に感慨深いですね…と寂しい気持ちが隠せなかった。それが五十嵐投手が周りから愛されていた証。しかし、いざ始まってみると五十嵐投手本人は「もう他でいっぱい泣いてきちゃったんですよ」と清々しい笑顔で臨み、何度も「プロ野球選手になれて良かった、楽しかった」と口にして、涙は見せなかった。明るく振る舞っていた。

ただ、きっと泣くのを我慢していたのだろうなと思うような、目元が少しうるんで見えた瞬間もあった。

「可能性を信じ続けてやってきたけど、継続して結果が出せなくなってしまった」と胸の内を明かした時。そして、同級生の石川雅規投手との“最後のキャッチボール”をした時のことを明かした時だった。

石川投手に引退を電話で告げた翌日、たまたま練習で戸田に来ていた左腕とキャッチボールができた。「若い頃からずっとこうやってキャッチボールをしてきたけれど、もうこういう時間はないのだろうなと思って涙がこぼれそうになってしまいました」。その情景を想像しただけでも胸が締め付けられる。

石川投手と五十嵐投手。高卒の五十嵐投手と大卒の石川投手は入団の時期は違うけれど、同い年。練習の時はいつも2人で会話をしている姿があり、話を聞けば「あいつはすごい」とお互いを尊敬しあい、切磋琢磨しているのが見ている私たちにも伝わってきた。

お互い野球が大好きで、どうしたら上手くなれるか、どうすればバッターを抑えられるか一緒に考えながらやってきた。若手の頃から練習の時はいつもお互いがキャッチボールの相手だった。

「昔から、すごくきれいなフォームだなと思いながらやっていたんです。お互い意見を言い合える中だし、そういった会話のことを思い出したり、キャッチボールの時にする彼の顔なんか、もう絶対勝てないなと思うほどいいんです。それを見ていると、涙がこぼれそうになってきて。近くに若手もいたし恥ずかしいんで我慢しましたけど、ああ、こういう気持ちで彼とはキャッチボールできなくなるんだなと思うと、辛く寂しくなりました」

辛い、とまで言ったその時の五十嵐投手の表情を見て、私の方が涙を我慢できなくなりそうだった。

ギリギリまで自分の可能性を信じた、だけど…

五十嵐投手のヤクルトでの姿を見ていていつも感じていたのは、そのストイックさ。試合前の投手陣の練習が終わると、投手陣の練習場であるこぶし球場を一人で何度もランニングしながら往復。大粒の汗を流しながら、常に自分と向き合っているように見えていた。

昨年、ホークスからスワローズに戻ってきた時には、笑いながら「もうおじさんだからさ」といった言葉も聞かれたが、「ギリギリまで自分の可能性を信じ続けて、本当に最後、抑えるためだったらどんな方法でもいいなと思う時期もあって、恥ずかしい話ですけどサイドスローで投げてみたりする時期もあって。本当にそれくらい自分のやってないことはないんじゃないかというくらいやってきました」と、とにかく努力を惜しまなかった。

引退会見では言葉の節々に後輩たちへの思いもたくさん感じ取れた。

五十嵐投手自身は、一緒に過ごしてきた先輩たちの姿を見て、自ら学ぶことが多かった。だからこそ、後輩たちにも言葉だけでなく先輩のプレーや行動から“感じ取る力”を身に付けてほしいと願っている。

「今の(ヤクルトの)若い子たちには迷いがある気がする。野球というものにどう向き合って、自分はどうなりたいのか、しっかりしたビジョンを持って自分が誰にも負けないものを一つでも二つでも見つけてほしい。そしてどんな時もグラウンドに希望を持って立ち続けて欲しい」

若手だけでなく、野球少年少女たちにもメッセージを送った。「まずは野球を楽しんでもらいたい。その先に勝負の厳しさだったり、また違った楽しさがあるけれど、何か一つのことを一生懸命やることによって今まで見えてこなかった世界であったり、乗り越えた時の喜びというのがあるので、それを経験してもらいたいなと思う」そう後輩たちにメッセージを送るその姿はとても力強かった。

実は会見中、もう一つ、五十嵐投手が涙を我慢していように感じた瞬間がある。スワローズで野球人生を終えられたその気持ちを聞かれた時だ。昨年、ヤクルト復帰後初の勝利投手となり、ヒーローインタビューを受けた時に感じたファンの姿について明かすと、じっくりと目をつむり、まるでその光景をその場で思い出しているかのようで、私も胸がいっぱいになった。

「ここ数年というのは、ファンの方の声援に背中を押されてどうにかやってこれたというのが強いので、とても感謝しています」

引退試合は25日の中日戦。神宮球場で浴び続けた声援に代わる、忘れられないほどの大きな拍手を五十嵐投手に贈りたい。23年間、本当にお疲れ様でした。(新保友映 / Tomoe Shimbo)

新保友映/Tomoe Shimbo

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