批判続出の『ちむどんどん』が、最終週で「駄作」の声を逆転する「起死回生の一手」

批判続出の『ちむどんどん』が、最終週で「駄作」の声を逆転する「起死回生の一手」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/09/23
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終盤に入っても批判の声はやまず

反響の大きさで言えば、絶賛の声が飛び交った前作『カムカムエヴリバディ』と同等以上かもしれない。前代未聞の視聴者ダメ出しハッシュタグ「#反省会」を生み出した朝ドラ『ちむどんどん』(NHK)がいよいよ最終週を残すのみとなった。

4月11日のスタートからヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)が上京して就職するまでの序盤6週は、近年の朝ドラと比べてもネットメディアの記事が少なく、話題にすらならなかった感がある。

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NHK公式サイトより

しかし、暢子が技術も経験もない自分を拾ってくれたはずのオーナー・房子(原田美枝子)に反発し、ペペロンチーノ対決を仕掛けたころから「#反省会」が盛り上がりはじめ、多くのネットメディアが記事化したことで一般視聴者層を取り込んで大きなムーブメントとなった。

残り1か月を切った9月に入っても、その流れは変わらずネット上には『ちむどんどん』に対する批判的なコメントと記事が続出。それは、暢子が東京の店を軌道に乗せて健彦を出産しても、賢秀(竜星涼)が清恵(佐津川愛美)と結婚して比嘉家の借金を完済しても、歌子(上白石萌歌)が長年の恋を実らせ、智(前田公輝)がトラウマを乗り越えて結ばれても、おおむね変わらなかった。

『ちむどんどん』はこのまま駄作のような扱いだけで終わってしまうのか。最後の最後に逆転する可能性はないのか。その可能性は高いとは言えないものの、まだ希望の光は残っている。

鍵を握る沖縄人のアイデンティティ

その希望の光とは、“沖縄”にほかならない。そもそも『ちむどんどん』は、沖縄本土復帰50年を記念して制作された背景があり、「当地の様子や住民感情などをどう描くのか」という期待値が非常に高かった。

しかし、当初からアメリカ統治時や本土復帰後の沖縄を描いたシーンは少なく、視聴者の目に映るのは比嘉家のドタバタばかり。ウチナーンチュ(沖縄人)の思いや生活も、本土復帰前後の変化もほとんど描かれていない。それは暢子が上京してからも続き、沖縄タウンのある鶴見を拠点にしたにもかかわらず、ウチナーンチュのアイデンティティを感じさせるようなシーンは数えるほどしかなかった。

つまり、沖縄ことば、沖縄料理店「あまゆ」、沖縄県人会会長の三郎(片岡鶴太郎)。さらに、ときどき沖縄在住の母・優子(仲間由紀恵)や姉・良子(川口春奈)らの姿を映すことで、“沖縄っぽさ”を醸し出すだけの作品となっていた。

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暢子の母・優子を演じている仲間由紀恵[Photo by gettyimages]

その鶴見はもともとウチナーンチュたちが差別や偏見に耐え、身を寄せ合っていた場所。交際や結婚、進学や就職、住居、店の出入りすら断られるなどの苦悩を乗り越えてきたからこそ彼らの姿が輝いて見えるものだが、『ちむどんどん』で描かれるウチナーンチュは「ただ元気で浅はか」という印象を与えただけの状態に留まっている。

その筆頭がヒロイン・暢子だけに、「最後に彼女がウチナーンチュのアイデンティティをどう見せてくれるのか」が鍵を握っているのではないか。なぜイタリアンの名店で修行しながら沖縄料理の店をはじめたのか。なぜせっかく開いた店を手放してまで沖縄に帰るのか。ただ「好きだから」や思いつきではない、ウチナーンチュならではの理由をあらためて視聴者にはっきり伝えてほしいところだ。

ウチナーンチュには、沖縄を離れ別の場所で暮らしていても「自分は沖縄の人間」という意識の強い人が多いという。暢子もその意識に気づき、最後に暢子が「ウチナーンチュとしての自分」を表現できるシーンが増えるほど、それなりの評価を得られるだろう。沖縄出身で、その歴史を勉強し直して撮影に挑んだ黒島結菜にとっても、最後のチャンスになるのではないか。

“クズ彦”の評価を一変させられるか

21日放送の第118話で、沖縄に里帰りした暢子が地元の人々に沖縄料理を振る舞うシーンがあった。

チキナーチャーハン、ジーマーミ豆腐、オオタニワタリの天ぷら、タマンのから揚げ(サクナ、イーチョバーのせ)、ウジラ豆腐と、ここにきて東京の店以上に沖縄らしい料理が次々に登場。「今日は山原の野菜でおいしい料理をたくさん作りました」と自分で「おいしい」と言ってしまうところがいかにも暢子らしいが、それが最終週につながっていく。

暢子が実家を改築し、地元野菜を使った料理の店を開くことがすでに報じられている。歌子は沖縄に帰り、智も商売の拠点を沖縄に移し、暢子一家も戻った最後に、序盤の沖縄編に登場した人物たちがその店に大集合するハートフルなシーンがあるかもしれない。

そして、「ここまで“クズ彦”などと揶揄され続けてきた和彦がどんな最後を飾るのか」にも逆転のチャンスが潜んでいる。親子2代で沖縄にこだわりながら、さしたる成果を見せられなかっただけに、父の遺志を引き継ぐ大仕事をすれば、評価が一変するかもしれない。

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青柳和彦役の宮沢氷魚[Photo by gettyimages]

ただ、できれば本を出版するだけでなく、それが沖縄を出たウチナーンチュをはじめ、本土の人々にも影響を与えるものであってほしいところ。また、その内容は、戦争からアメリカ統治下の27年、本土復帰後の50年にわたり、「現在の沖縄がどう作られてきたか」であれば言うことないだろう。

逆に言えば、これらを見せなければ、「#反省会」で言われているような、質の低いホームドラマ風ドタバタコメディという評価で終わりかねない。今さら現在まで続く「基地や経済格差などの諸問題を扱ってほしい」と思っている人は少ないとしても、「今年、沖縄を舞台にしたこと」の意義深さを感じさせる最後であってほしいところだ。

「セーラー服姿」2つの予想とは

朝ドラ『ちむどんどん』は9月30日で終わるが、その1か月後の10月31日から「世界のウチナーンチュ大会」が開催される。これは1990年からほぼ5年に一度のペースで開催している世界各地の沖縄人が集う一大イベント。この2年半、コロナ禍で観光立県・沖縄は大きなダメージを受けただけに、ウチナーンチュたちが笑顔になれる朝ドラの結末で、一大イベントに追い風を送りたいところだろう。

ちなみにクランクアップの際、暢子がセーラー服を着ていたことが視聴者の間で話題となっていたが、「回想シーン」「暢子の娘か孫」と予想する人が多かった。妹の歌子もセーラー服で優子、賢秀、良子は過去の衣装を着ていた感があったため、「回想」説が有力視されているが、もしそうなら“50年の物語”はどうなるのか。

制作サイドは放送前から「比嘉家四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く笑って泣ける朗らかな、50年の物語」であることを打ち出していた。本当に50年後の現在までを描くのなら暢子は68歳であり、黒島は老け役を演じる必要性があるし、クランクアップのセーラー服は「孫」説がちょうど合うのだが、それ以外の結果も含め、どんなラストを用意しているのか興味深い。

最終週前の第24週は、ここにきて全話最高の視聴率を記録するなど、注目度が上がっているのは確か。決して少なくない「『#反省会』を書き込むために見ている」という人の気持ちを変えられるのか、わずかながら期待感を抱いている。

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