高校野球のあるべき姿とは?

高校野球のあるべき姿とは?

  • アゴラ
  • 更新日:2022/08/06

全国の野球ファンが楽しみにしている夏の全国高校野球選手権(甲子園大会)が本日より始まります。筆者は野球指導者の端くれですが、甲子園の試合を楽しみにしている一人でもあります。

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gyro/iStock

高校野球はプロ野球と違い、トーナメントの一発勝負であり、球児の試合をあきらめない全力プレーが多くの人々の感動を呼びますが、実は内部(選手・指導者側)から見ると、高校野球には多くの問題が山積していることも事実です。

近年野球の競技人口は減少を続けています。高校でも公立を中心に部員不足に悩む学校が増えており、中には単独でチームを組めず(部員9人未満)、合同チームを結成する学校も出てきています。

そんな中、今年の千葉県大会では、82対0という衝撃的な試合がありました。

「82対0」の野球に感動している場合ではない…高野連が見て見ぬふりする甲子園予選の「残酷ゲーム」を許すな 強豪校活躍の陰で、野球をやめる学校が増加している夏の甲子園の千葉県予選2回戦で、82対0という大差のつく試合があった。ライターの広尾晃さんは「最後まで試合を続けたわせがくは素晴らしい。しかし、こうした試合が続けば、いつか事故が起きる。高野連は、強豪校とそれ以外の格差拡大について、対策を講じるべきではないか」という――。president.jp

高校野球はコールドゲーム(7,10点差以上)でも、最低5回までは行うことになっていますので、記事のような82点差も起こりうるのですが、私の現役(昭和)時代は、点差が開いてもせいぜい20点くらいだったと記憶しています。

実は中学野球はさらに深刻な状況で、部員が9名そろわず、合同チームを編成する学校が毎年一定数見られるのが当たり前です。実際私が副顧問をしている中学野球部は、新人戦は昨年度までの2年間、単独チームで出場できなかったのです。ですから中体連(公式試合)で大差の試合(例えば36対0)は毎年普通に見られます。

これほどまでの大差となると、試合進行の遅れだけでなく、長く守り続けることで熱中症等のリスクも危惧されますので、コールドゲーム規定見直しの必要もあるでしょう。

しかし、部員不足に悩む学校が増える一方、甲子園を狙う一部の私立強豪校は100~200名の大所帯が多く、明らかに高校野球の2極化が進んでいるといえます。

野球をする子供たちが減ったのは、単に年少人口全体の減少だけでなく、少年野球からの勝利至上主義、監督やコーチによる体罰・暴力・暴言のリスク、保護者の物心両面の負担なども、かなり影響していると考えられます。

「当番でお茶出し、芝刈り…」親子の負担が大きすぎる少年野球は必ず衰退する 加速する小中の野球離れの根本原因少年野球はこのままでいいのか。慶應義塾高校野球部の森林貴彦監督は「小学生や中学生が、やるスポーツとして野球を選ばなくなっている。その減少は少子化よりはやく、このままでは甲子園大会も続けられなくなる」と警鐘を鳴らす——。(第2回)president.jp

このように、野球は根の深い構造的な問題がありますので、一部分にだけメスを入れても、根本的な問題解決には至らないとは思いますが、今回は高校野球の大会に焦点を絞り、思いつく改善策を提示します。

都道府県対抗を続ける場合、“国内野球留学”を制限→将来的に禁止?大会コールドゲーム規定を変えるシード校を段階的に細かく分け、できるだけ1回戦は同レベル(ノーシード同士)の対戦を組む将来的には、選手権の都道府県対抗・学校対抗の仕組みを変えていく選手権大会の時期を変更するか、ドーム球場等の複数利用をする

1について、高校野球が都道府県対抗の形式をとる以上、一家転住でもない限り、県外選手が出場するのは矛盾すると思いますが、譲りに譲っても登録選手の半数以上は県内選手という程度の制約は必要ではないでしょうか?

2について、このまま2極化が進めばリンク記事のような大差の試合が増えますから、事故・病気等のリスクを避けるうえでも、例えば10点差がついたら負けているチームの意志で放棄試合を可能にするとか、5イニングに満たなくても時間制限でコールドゲームにするとか、考える必要があると思います。

3について、参加チームの多い都道府県などでは、例えば過去の戦績から第1シード群(4校程度)~第4シード群を決め、例えば3,4シードは2回戦から、2シードは3回戦から、1シードは4回戦から登場するように分ければ、大差の試合は減るはずです(すでに実施している都道府県もあるようです)。

4について、現在進行中の“中学校部活指導の地域移行”の動きに合わせ、野球だけに限りませんが、加熱化・二極化する学校対抗をやめ、クラブチーム対抗への移行を検討します(正直かなりの難題です)。

5について、8月開催での熱中症等のリスクを避けるため、開催時期を9月などにずらします。また、選手の体調面だけでなく、応援団の健康管理も考え、現実的な空調のきいたドーム球場を利用します。さらに、土日ごとの複数球場での大会開催とすれば、投手の連投による故障も少なくなるはずです。

特に5は、個人的に強く要望したいところです。

こうした高校野球の改善だけでなく、子供たちの野球全般に関しても、高額な用具代や会費、保護者の負担、野球指導者のライセンス制度の未発達、非効率な長時間練習、学校間や縦の連携不足など、多くの解決すべき課題が山積しています。これらの構造的問題解決のため、腰を据えて真摯に取り組む姿勢を忘れてはならないでしょう。

しかし、一方で観戦者(野球ファン)の側に立てば、以下のような野球の魅力がなくなることもないと思います。

攻守が明確に分かれており、応援がしやすく落ち着いて観戦できる一定レベル以上の大会では球場設備が充実し、長時間の観戦が楽しめる三振ショーやホームランなど、胸がすくような場面が多く見られるゲームの予測が難しく、番狂わせや劇的なドラマが起こりやすい

どうか野球を愛し応援してくださる方は、ただ甲子園の熱戦に感動するだけでなく、野球関係者とともに、高校野球・少年野球の行く末を真剣に考え、一緒に創造していただけたら幸いです。

和田 慎市

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