連載コロナ時代の日常を生きる一冊Vol.3写真家・ホンマタカシ

連載コロナ時代の日常を生きる一冊Vol.3写真家・ホンマタカシ

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  • 更新日:2020/10/17
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新型コロナウイルスの出現とともに、私たちを取り巻く社会は一変。ウイルスとの共生が求められるなか、私たちの日常はどのようなものになってゆくのか。先の見えない世界を生きてゆくヒントを、さまざまな分野で活躍する識者の方たちが一冊の本を通じて語る

第3回は写真家のホンマタカシさん。緊急事態宣言下で読んだという百年文庫の『心』と佐々木正人さんの『あらゆるところに同時いるーアフォーダンスの幾何学』を通して、不要なものの大切さについて語ってくれました。

“不要”なものの大切さ

コロナ禍で考えさせられたのは、何が要か不要かということでした。こうした状況下では誰もが「要」のことばかり言いますが、逆に改めて「不要」なことの大切さを感じましたね。例えば新型コロナに対して文学が必要かと問われれば、不要なのかもしれません。実用書ですとか、もっと直接役に立ちそうなものに人の関心は集まるのでしょう。コロナ禍で、そうした傾向が強まることが僕は怖いんです。

今回、百年文庫の『心』と佐々木正人さんの『あらゆるところに同時いる―アフォーダンスの幾何学』を挙げました。『心』には、ドストエフスキーの『正直な泥棒』と芥川龍之介の『秋』、そしてプレヴォーの『田舎』という3つの短編小説が納められています。今の状況に対して示唆するものがあるのかと言われれば、全くそうではありません。でも、すごく豊かな世界が書かれています。この三作品だけでなく、文学はそういうものだと思うんです。

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(左)『心』百年文庫¥750/ポプラ社(右)『あらゆるところに同時いるーアフォーダンスの幾何学』佐々木正人 著¥2,500/学芸みらい社PHOTOGRAPH BY NAOMI ITO

百年文庫は、編集者が一つのテーマに沿って無関係の三作を選び、一冊の本としてまとめているのですが、知らない作家の作品に出会えるのも魅力ですね。世界の文学ってこんなに広いんだ、ということを教えてくれます。今年の初めぐらいからこのシリーズを買い始めて、緊急事態宣言の最中は時間があったので、結構読みましたね。文学の果てしない広がりが感じられて、素晴らしいなと思いました。

『あらゆるところに同時いる―アフォーダンスの幾何学』(佐々木正人著)も同様に、新型コロナに関係するものではありません。「ダーウィンの方法」という章は、チャールズ・ダーウィンの遺作となった『ミミズと土』について書いているのですが、進化論を唱えたダーウィンは晩年ミミズの研究に没頭したそうです。ミミズは、土の中に穴を掘って眠る際に、穴の中が乾燥しないように葉を使って穴に蓋をします。ダーウィンは、ミミズがいかに葉っぱを穴に引き込むかをひたすら試して、見て、記述したそうなのですが、それって何の役に立つのだろうかと思って。僕自身は、ダーウィンの「ひたすら見る」という姿勢に共感しました。(続きを読む)

SOURCE:「A Book in the Time of COVID-19 ーVol.3 Takashi Homma」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY JUN ISHIDA SEPTEMBER 11, 2020

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ホンマタカシ(TAKASHI HOMMA) 1962年東京生まれ。1999年、写真集「東京郊外 TOKYO SUBURBIA」(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。現在、東京造形大学大学院 客員教授 © TAKASHI HOMMA

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