カマラ・ハリス大統領「誕生」、でも2024年指名はない

カマラ・ハリス大統領「誕生」、でも2024年指名はない

  • JBpress
  • 更新日:2021/11/26
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英国のグラスゴーで開かれたCOP26に出席したピート・ブディジェッジ運輸長官(11月10日、写真:ロイター/アフロ)

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世界が固唾をのんだ「1時間25分」

ジョー・バイデン米大統領(79)が11月19日、カマラ・ハリス副大統領(57)に大統領権限を委譲した。中国の習近平国家主席(68)とのオンライン会談を終えた4日後だった。

ハリス氏が就任後初めて大統領に「昇格」したのだ。

結腸の内視鏡検査のため麻酔を受け、麻酔の影響下にあった1時間25分だったが、ハリス氏は「核のボタン」を押す権限を有する史上初の女性の米軍最高司令官になった。

副大統領就任後10カ月、ハリス氏の支持率が40.2%(不支持率51.8%)まで下がり、保守系メディアがこぞって「ハリス氏の2024年民主党大統領の目はまずない」といった推測記事を流しているさなかだった。

https://www.nationalreview.com/2021/11/the-collapse-of-kamala-harris/

しかも、ハリス氏がたとえ臨時にせよ、今後も「昇格」する回数は増えるのではないか、との憶測も出ている。

というのも、11月20日に79歳になったバイデン氏の健康状態を皆心配しているからだ。

最新の世論調査では、同氏が「健康だ」と答えた人は40%、逆に「健康ではない」と答えた人は50%。

同氏の「精神的適合性」に太鼓判を押す人は46%、不安視する人は48%という結果が出ている。

https://www.politico.com/news/2021/11/17/poll-biden-mental-fitness-job-approval-522785

政治評論家たちは、バイデン氏が演説でしばしば失言を繰り返したり、言葉に詰まったりしている点を取り上げ、高齢による認知力の低下の証左だと指摘している。

2022年の中間選挙で再選を目指す民主党の上下両院議員たちや選挙戦略家の中からも「バイデン氏は2024年再出馬はしないだろう」といった声が聞こえてくる。

だとすれば、副大統領のハリス氏が党の大統領候補になるのが自然の流れということになるのだが、そうなってはいない。

「ハリス氏では共和党候補には勝てない」という声が党内では支配的になっているという。

ハリス氏が女性であり、しかもマイノリティの黒人とインド人との混血であることから本選挙では勝てないという理由だ。無党派層の浮動票が獲得できないというのだ。

それだけはない。副大統領としての過去10カ月の仕事ぶりを見ても大統領になるのはムリだ、とする見方が広がっている。

バイデン氏は政権発足直後からハリス氏に実務を任せた。メキシコとの国境に押し寄せていた中米からの不法移民対策をハリス氏に丸投げした。

ハリス氏はドナルド・トランプ大統領(当時)が鳴り物入りで実施した国境沿いの壁建設を中止。

それに代わる手段として不法移民の「震源地」であるエルサルバドルとメキシコを訪問し、「蛇口」を閉めようとした。貧困対策にカネを出す約束までした。

だが、11月現在、国境からの不法移民流入は止まっていない。

ハリス氏は11月11日、不法移民問題をABCテレビとのインタビューで追及され、こう切り返した。

「スイッチひとつですぐ良くなるというわけにはいかない。(前任者が)完全にぶち壊してしまった移民制度を引き継いだわけだから。一晩で効果的かつ能率的な制度にするわけにはいかない」

この発言をとらえて、保守系ニュースサイト「ウエスタン・ジャーナル」の論客、ジョー・サンダーズ氏はこう指摘している。

「ことわざに曰く『穴に落っこちたら掘るのをやめよ』(The first rule of holes: When you’re in one, stop digging.) だ」

「掘れば掘るほど穴は深くなるからだ。トランプ氏が壁を作り不法移民は米国に入ってこられなくなっていた」

「その壁建設をやめさせたのは誰だ」

「この一言でハリス氏は面目丸潰れだ。政権発足後10カ月経つというのに不法移民対策は一向に進んでいない。いったい何をやっているのか」

https://www.westernjournal.com/humiliating-floundering-kamala-harris-tries-blame-trump-bidens-border-disaster-exactly-backward/

不法移民対策だけではない。バイデン氏が高齢で外遊を最小限に抑えているのか、ハリス氏を東南アジア、中南米、メキシコ、フランスに派遣し、失政の尻ぬぐいをさせている。

「自分が再出馬しないことを想定して、2024年の大統領選に備えるためにハリス氏に実績を積ませようとしている」といった解説もあるが、目下のところこれがすべて裏目に出ている。

それよりも、なによりもバイデン氏は後3年もつのか、不安が付きまとう。習近平氏とのオンライン会談も大腸にポリープを抱えたままでの3時間だった。

いつまたハリス氏が大統領に昇格するかもしれない。そうなった時のために重要なアジェンダを丸投げし、ジョブトレーニング(職場内訓練)をさせているのか。

インフラ投資で脚光、ブティジェッジ氏

政治専門サイト「ザ・ヒル」のハンナ・トルード、エイミー・パーンズ両記者は11月18日付記事で大胆にこう言い切っている。

「百歩譲って、バイデン氏が任期満了までもったとしよう」

「バイデン氏が再出馬しないのであれば、政界の常識では副大統領のハリス氏が民主党大統領候補になるところだが、民主党員の中ではハリス氏ではなく、別の候補を立てるべきだという声が高まっている」

「その場合、民主党大統領候補にピート・ブティジェッジ運輸長官を挙げる者が少なくない」

「2020年のバイデン選挙運動キャンペーンに参画した一人は、こう述べている。『バイデン氏はもう出るべきではない。次はブティジェッジ氏が指名を狙うべきだ。私は2020年はブティジェッジ氏を応援しなかったが、2024年はブティジェッジ氏を民主党大統領候補として全面的に支持する』」

「バイデン政権の国内政策の目玉である1兆ドルのインフラ投資法案は議会で可決成立した。このうち1100億ドルは道路、橋改修、899億ドルは公共交通網整備、660億ドルは旅客用鉄道整備に使われる」

「言い換えると、この総元締めはブディジェッジ氏だ。脚光を浴びることは間違いないし、大統領候補指名に向けて民主党内ではポジティブな役回りとなる」

https://thehill.com/homenews/administration/582071-democrats-question-whether-biden-will-actually-run-in-2024

ところが「障害」となる(?)のはブティジェッジ氏がLGBTQ(性的マイノリティ)であることを公言していることだ。運輸長官就任後にはパートナーの合意を得て2人の子供と養子縁組までしているのだ。

米国民はLGBTQ大統領を認めるのだろうか。これについては民主党選挙戦略専門家の間でも意見が分かれている。

カリフォルニア州民主党支部の幹部の一人は、筆者に冗談交じりでこうコメントしている。

「(ブティジェッジ氏がLBGTQということは)今や政治家にとって致命傷になりかねないセクハラ加害者ではないということだ」

「LGBTQは最高裁で法的にも結婚を認められているし、3、4年後にはもっと認知度を増すだろう」

ハリス氏に代わる民主党候補8人衆

そのほか、民主党大統領候補の下馬評に上がっているのは以下の面々だ。

〇エイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州選出)

〇マーク・ワーナー上院議員(バージニア州選出)

〇ギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事

〇ステイシー・エイブラハムズ元ジョージア州下院議員

○マイケル・ベネット上院議員(コロラド州選出)

〇コーリー・ブーカー上院議員(ニュージャージー州選出)

〇ハワード・シュルツ元スターバックスCEO(経営最高責任者)

〇ニナ・ターナー下院議員(オハイオ州選出)

共和党はトランプ氏が出なければ誰が?

一方、共和党は2024年大統領候補に誰を指名するのか。

中間選挙を来年に控えて、その知名度と集金面からいまだにトランプ氏に頼っているが、ここにきて共和党内にもトランプ離れ現象が起こり始めている。

ここ1週間以内での最たる動きが、大統領指名レースでは顔なじみのクリス・クリスティ元ニュージャージー州知事の「トランプ政治との決別」宣言だ。

トランプ氏にくっついたり離れたりしてきた「風見鶏」だが、それだけに風向きを見極めることにかけては天下一品だ。

これまでにも何度か大統領候補指名を狙ったが途中で頓挫してきた。

ワシントン・ポストのベテラン政治記者、アーロン・ブレイク氏は11月13日付で「共和党大統領候補10人」を挙げている。以下の通りだ(現時点での有力度順)。

①ドナルド・トランプ前大統領

②ロン・デサンティス・フロリダ州知事

③ニッキー・ヘイリー前米国連大使

④ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州選出)

⑤マイク・ペンス前副大統領

⑥テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)

⑦ドナルド・トランプ・ジュニア(トランプ前大統領の長男)

⑧クリス・クリスティ元ニュージャージー州知事

⑨グレッグ・アボット・テキサス州知事

⑩マイク・ポンペオ前国務長官

https://www.washingtonpost.com/politics/2021/11/13/top-10-gop-presidential-candidates-2024-ranked/

党内分裂が続き、バイデン氏の統率力がぐらついている民主党の昨今を横目に共和党も本格的な2024年戦略を考えねばならない。

いつまでトランプ氏に引き摺られるのか、トランプ氏でホワイトハウスを奪還できるのか。共和党も疑心暗鬼の状態が続いている。こうした状況は来年の中間選挙まで続くのか。

先のオンラインによるバイデン氏と習近平国家主席との首脳会談を見た保守系シンクタンクのチャイナウォッチャーの一人は、ユニークな分析をしている。

「あの会談での勝者は習近平氏だ」

「台湾問題でも新疆ウイグル問題でも一歩も譲らなかった。『歴史決議』で自らを毛沢東、鄧小平と同列の歴史的指導者にまで昇格させて自信に満ちあふれていた」

「高齢のバイデン氏の足元を見る傲慢さが目立った。それにつけても、バイデンの今も以降も、米国は迫力に欠ける時代が続きそうだ」

高濱 賛

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