ランニング中に襲われ...性的暴行サバイバーの私が走り続ける理由

ランニング中に襲われ...性的暴行サバイバーの私が走り続ける理由

  • コスモポリタン
  • 更新日:2020/11/24
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性暴力や性的暴行を生き抜いたサバイバーたちは、被害を受けたその時から、身体的なものだけでなくトラウマなど精神的な傷との長い闘いが始まり、その苦しみは計り知れません。ふとしたときに被害当時がフラッシュバックすることで、中には大好きだった趣味や日課に取り組めなくなってしまう人も。

ランニング中に性暴力被害にあったキャット・クロフォードさんもその一人。本記事では、キャットさん本人が語る、性的暴行サバイバーとしてランニングを続ける理由をご紹介します。

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【INDEX】

夜明け前のランニング中に…

"ランニングは一生やらない"

ランニングを再開したものの…

3月4日は「サバイバーデイ」

夜明け前のランニング中に…

(語り:キャット・クロフォードさん本人)

恋人と一緒に、ニューヨークからカリフォルニアのシリコンバレーに引っ越してきた私は、サンフランシスコで行われる「ロックンロールハーフマラソン」に出場する準備をするのが当時の日課でした。サンフランシスコの街を走り回る日々が、とても楽しかったことを覚えています。

ある日、私は早朝シフトの仕事を終えて、朝の4時45分にスポーツウエアに着替え、街灯がある中心街のランニングコースに向かいました。その日は、10~12キロほど走る予定でした。

突然、茂みからナイフを持った男性が飛び出してきて私に襲い掛かってきたのは、3キロほど走ったときのことでした。その瞬間に感じたのは、恐怖よりも「これって現実? 夢を見ているの?」という当惑でした。なんだか、「犯罪特捜班」の番組を観ているような、自分に起きている状況をどこかで俯瞰して見ているかのような感覚でした。

ところが、その男が私を力ずくでつかんで口を押えた瞬間、夢ではないと確信しました。私はそれまで自分は強い人間だと思っていましたが、ナイフを持った男に力で勝ることはできず、車の中に引きずりこまれていきました。

車の中に閉じ込められ、抵抗もむなしく男性に襲われました。その時は、このような事態になる前に防ぐことができたかもしれないと自分を責めました。そして、「家族や友人たちに怒られる」とも考えていました。

私は、ちょうど身に着けていたアップルウォッチで緊急通報を試みましたが、それに気づいた男は焦りだし、私をさらに強くしばりつけました。そのとき、以前よく観ていた「犯罪特捜班」の番組で紹介されていた、強姦などの傷害事件の対処方法を思い出しました。それは、加害者にあえて近づき、相手と“人として対話”をするということ。

そこで私は、男をそれ以上興奮させないために、「今すぐ私を逃がしてくれれば、誰も私がいなくなったことに気づかない」と声をかけました。男に自分の仕事のシフトスケジュールを教えて、いつまでに戻らなければ、私の恋人や仕事仲間が心配しはじめると伝えたんです。護身用の武器になりえるものが身近にはなかったので、自分の頭を使うしかありませんでした。

私はそのまま男に話しかけながら、気づかれないように車のロックを解除し、徐々にドアに向かって体を近づけていきました。そしてここぞというときに、ドアを開けて外に出て、全力で逃げたんです。

走って逃げていると、アパートが見えたのでその中に入りました。見知らぬ人の家に入るのも怖く感じたので、駐車場にある車の裏に隠れて、警察と恋人に連絡。アップルウォッチの位置情報を確認した恋人がすぐに迎えに来てくれて、まもなくして警察も到着しました。

「ランニングは、一生しない」

警察は周辺を調べましたが、加害者を見つけることはできなかったそうです。私は病院へ行き、加害者を特定するための証拠収集をする「レイプキット」検査をし、性病予防の薬を渡されました。

加害者の特徴を証言する際には、ずっと気持ちが悪くて最悪な気分でした。一番印象的だったのは、加害者の車の匂い。ジム用バッグの汗のにおいや、デオドラント、そしてタバコが混ざったような匂いでした。今でもそれと似ている匂いを嗅ぐと、パニックになってしまいます。

ランニングをするときには、アップルウォッチでいつもトラッキングしているのですが、襲われたときには、走っていたペースが遅くなり、車に引きずり込まれるまでの抵抗がジグザグに表示されていて、生々しかったです。

事件が起こって何日間かは、薬などの影響で体調が優れず、仕事を休み、寝室にこもって過ごしました。そのとき、日課だったランニングを一切やらないと決めたんです。

目標にしていた大会で完走

あるとき、彼が寝室に入ってきて、私にランニングシューズを渡しながら「5分後に、近所を走りに行こう」と声をかけてくれたんです。私は言われるがままに、一緒に10キロほど走りました。

事件が起きてから、ずっと目標にしていたマラソン大会に出ることは諦めていました。でも、彼が誘ってくれたおかげで背中を押され、ランニングを再開することにしました。

結果、その事件の3週間後には大会に出場。無事にゴールしたときには涙が止まりませんでした。加害者から逃げる際に活躍した“自分の脚”で、レースを走りきることができたことは、私を一歩前に押し出したように感じました。それこそが、何があっても私なら乗り越えられるという自信に変わっていったのです。

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ランニングを再開したものの…

その後、西海岸から反対側に引っ越しましたが、今でも薄暗い夜明けの時間帯が怖くなります。平日には、ジムでランニングを済ませ、週末だけ明るい時間帯に外を走るようにしています。護身のための武器は携帯していませんが、走るときには常にスマホとアップルウォッチを身に着けるようにしています。

現在も、悪夢や睡眠障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされていますが、走ることで自分の強さを実感することができて、もっと強くなりたいという気持ちを持ち続けています。

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3月4日は「サバイバーデイ」

被害に遭って1年がたった日、とても感情的になって、まるで自分の心の中で嵐が起こっているような一日を過ごしました。事件は私の人生をガラッと変えてしまった気がして、その事実が悲しくて仕方ありませんでした。

そのときに思い出したのが、父の存在でした。父は11年前に生死を彷徨うような大事故に遭遇し、困難な手術の末に一命を取り留めることができました。父は毎年その日になると、「今日はお父さんの“命の日”だよ」と家族に連絡を入れるんです。

そんな父の考え方に触発され、私も3月4日を憎みながら人生を過ごすのではなく、「サバイバーデイ(私が生き残れた日)」として祝福していこうと思えるようになったんです。

毎年3月4日は、仕事を休んで、その他すべてのやるべきことから距離を置く日にしています。その日は、まず走ることから始めます。そして、大好きなカフェでコーヒーを頼み、ネイルサロンとマッサージを予約。そしてその日の終わりには、花の飾りがたくさんあしらわれたケーキを頼んで、「Happy Survivor Day」とデコレーションしてもらうんです。

私は、自分の自由を取り戻して心の平和を保つために、ランニングを続けます。走ることは私を救ってくれたし、今生きていることを実感させてくれるんです。

相談窓口

性犯罪被害相談電話

Tel. #8103

男女共同参画局による公式サイト

※相談に関するQ&A、警察や病院に行く時に持って行った方がいいものなどが解説されています

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧

※この翻訳は抄訳です。

Translation: ARI

RUNNER'S WORLD

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