JCL丸の内クリテ、夜のレースが大盛況。世界と社会へ「自転車の価値」を発信

JCL丸の内クリテ、夜のレースが大盛況。世界と社会へ「自転車の価値」を発信

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/03/19

前回のコラムでご案内したJCL(ジャパンサイクルリーグ)主催「GRAND CYCLE TOKYO 丸の内クリテリウム presented by フィナンシェ」を、先月18日に無事開催することができ、ホッとしています。

レインボーブリッジなど東京のランドマークをみんなで自転車走行する、東京2020大会のレガシーイベント「GRAND CYCLE TOKYO」の一環として、今回は東京駅・丸ビルの目の前、行幸通りでのナイト・エキシビションレースはじめ、eバイク(電動アシスト機能付きスポーツ自転車)の試乗会やコンサートなどをお楽しみいただきました。

大変でしたが、足をお運びくださった皆さん、サポートいただいた開催地域、スポンサー、全ての関係者の皆さんに、心より感謝を申し上げたいと思います。

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自転車の「社会的な存在意義」を発信 他スポーツとのクロスワークも

シンポジウムでは、JCL顧問で元警視総監の樋口建史氏や橋本聖子JCL TEAM UKYO総監督、国土交通省の金籠史彦氏とともに、自転車、モビリティの在り方について、一緒に議論して発信しました。自転車競技を通じて、モビリティインフラとしての自転車の価値向上に寄与していきたいと考えています。

日本での自転車の地位は、まだまだ高いとは言えませんよね。ヨーロッパでは、自転車が優先され、車が一定距離を取らなければいけないといったルールも存在しています。

自転車=乗り物、に乗る以上、ゼロリスクはありえません。危険もしっかり理解した上で、モラルとリテラシーを向上させ、安心安全に自転車を楽しむことを、JCLとしてもっと発信していきたい。

そのためにも、この競技を日本でもっと多くの人に知っていただけるように、丸の内クリテリウムのような、都市型の興行的レースを今後も開催していきたいと思っています。

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加えて、他のスポーツとのクロスワークも実施していきます。

昨年は、サッカーJ3のFC岐阜さんと一緒にグルメライドを開催しました。今後もJリーグやBリーグクラブとのタイアップ強化、会場でのイベント開催などを計画しています。

また、他のスポーツからポテンシャルの高い選手を自転車競技に呼び込むことにも取り組んでいきたいと思っています。

実は、F1レーサーのほとんどが自転車トレーニングを採用していたりもします。身近で効率的に取り入れられるスポーツであることは間違いありませんから。

グランツール挑戦へはイタリアから

丸の内クリテを終えホッとしたのも束の間、3月に入り、イタリアを訪問しました。

世界へ挑戦するために、現地有識者との対話、JCL TEAM UKYOの欧州拠点候補の視察などを行いました。

日本国籍のチームとして史上初のツール・ド・フランス出場を果たし、表彰台に登ること」という至上目標のためのファーストステップとして、2024年中にイタリアにベースキャンプを張って、そこから欧州遠征をしていき、2025年にはUCIプロチームとしての活動を行うと方針を決めました。

そして、グランツール*出場も2025年に果たしたい。*欧州で開催される自転車プロロードレースのうちジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つのステージレースの総称

今年UCIプロチームに申請する段取りで資金準備していたのですが、現状の競技レベルとしてもちょっと背伸びしすぎかもしれない。そう冷静に経営会議で議論し、目標を再設定しました。

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日本人選手が欧州に挑戦にするには、すべてのケースではありませんが、機材はレンタルされたとしても、給料はほとんど出ず、精神的なサポートもさほど受けられないまま、武者修行のように実力で生き残ることが必要でした。

いつ潰れてしまってもおかしくない環境...。それをやり切ったタフな選手もいましたが、組織的な活動でなければ、やはり成果も出にくい。ずっとそう言われてきました。JCL TEAM UKYOでは、日本人選手が精神的・身体的に安定して、世界に挑戦できる環境を作っていきたいと強く思っています。

また、中長期的な取り組みとして、競輪場を活用して、長時間ハイパワー巡行が求められる欧州レースに適応できる選手を育成する、アカデミーの立ち上げも進めています。

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1月下旬~2月中旬の中東遠征でUCIポイントを獲得し、確かな手応えを掴んだJCL TEAM UKYOの選手たち

世界でも競技の在り方を模索

UCI(国際自転車競技連合)とは、日本からも毎日と言っていいほどディスカッションや情報交換をしています。

世界でも、自転車競技の在り方を模索しています。ツール・ド・フランスに出ているトップ選手で年俸億超えは何人もいますが、あれだけのレースでも賞金額はそこまで高くありません。
UCIは、権益を統合した新しいロードレースリーグ構想を検討しているようですし、トラック競技では、ショーアップして、相応の賞金を用意したチャンピオンズリーグ立ち上げにも取り組んでいます。常に新しいチャレンジをして、常に進化している。JCLも日本のロードレースシーンを盛り上げるために、世界と連携していかなくてはなりません。

JCLの強みは、東京オリンピック以降、UCIと信頼関係を作れていることだと思っています。全自転車競技の責任者を務め、かなり深い関係で仕事をしましたから。

国内の既存UCIレースとタイアップするだけでなく、JCLも国内レースをUCIレースに昇格させて、選手たちに海外チームと戦う機会、UCIポイント獲得の機会をもっと提供していきたいと計画しています。また、ツール・ド・九州のように、日本でも素晴らしいUCIレースが企画されていますので、それらが個別に開催されるのではなく、日本のUCIレースをまとめるシステムもあった方がいいと考えています。

もちろん、世界を見習うだけでなく、日本独自の在り方や価値観も発信していきたい。そして、地域社会の盛り上げにもつなげていく考えです。

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JCLが全国各地の競輪場を活用し開催している「BANK LEAGUE」。ナイトレースを光の演出などでショーアップ

困難な挑戦のライバルは自分。信じる力でファンの皆さんと夢を叶えたい

世界や社会的な挑戦をしていると、事情をよく知る方にほど「そんなの絶対できない!」と言われることがあります。

JCLの立ち上げ時には、「負け戦だ」「お金だけもらって逃げた方がいい」などと散々に言われました。JCL TEAM UKYOがサウジツアーやツアー・オブ・オマーンに出場した時にも、「UCIポイント獲得なんて100%無理」「映像に映ることもないでしょうね」と辛口批評をいただきました。

僕の好きな歌で、こんなフレーズがあります。

“いつだって物語の主人公は笑われる方だ 人を笑う方じゃないと僕は思うんだよ”(SEKAI NO OWARI『サザンカ』作詞:Fukase & Saori)

僕もF1レーサーになるまで色々言われたものです(笑)。

難易度が高いことは誰だってわかっています。でも、そんな時に信じてくれた仲間とはいい仕事ができていますし、できないと言ってしまったら、絶対に実現しませんよね。できるかどうかは、どれだけ強く信じられるか...。ライバルは、結局自分です。

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JCLは、僕が個人資金で立ち上げた組織です。ただ、多くの方々にサポートいただき、公器としての役割が求められていることを理解しています。

競技だけでなく、社会にも貢献していかなければなりません。自転車業界外からも、「できるぞ!」「次は何を見せてくれる?」と声援をいただいています。

応援してくださるすべての方々と一緒に、夢を叶えていきたい。平坦な道のりでは決してありませんが、皆さんに感謝して、全力を尽くして突き進んでいきます。

連載:片山右京の “Road to Tour de France”

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