「ガッテン!」が消え「クロ現」は19時半開始...NHKの大番組改編は成功したのか?1か月を検証

「ガッテン!」が消え「クロ現」は19時半開始...NHKの大番組改編は成功したのか?1か月を検証

  • デイリー新潮
  • 更新日:2022/05/14

NHKが4月に総合とEテレを合わせて改編率42%の大番組改編に踏み切ってから約1カ月が過ぎた。これにより27年も続いた人気番組「ガッテン!」などが打ち切られたが、この大改編は成功したのか。検証してみたい(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

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「ガッテン!」が終わって一カ月…

【写真】新番組でMC初挑戦の石原さとみ

NHKの大改編は2003年に地デジ放送が開始されて以来、最大規模だった。

陣頭指揮を執ったのは一昨年1月に就任した前田晃伸会長(77)。みずほフィナンシャルグループ元会長である。

まず高視聴率番組「ガッテン!」(水曜午後7時半)が打ち切られた。2月2日放送の最終回の視聴率は「世帯12.7%」「個人7.4%」「コア(13~49歳)1.7%」だった。

この視聴率は世帯も個人も同時間帯で断トツのトップ。半面、コアではEテレを除くと最下位だった。

若者には関心が薄い健康をメインテーマとする教養番組だったからだろう。

最終回のテーマも「しつこい目のぼやけ 気づいて!本当の原因解明SP」。若者にはピンと来ないはずだ。打ち切りの理由の1つも若者ウケしないからとされた。

もっとも、ここで疑問が生じる。民放がスポンサーの意向で若者を狙うのは分かるが、年齢に関わらず同一の受信料を要求するNHKまで若者ばかり追い掛ける必要があるのか。視聴者の負担に応じた公平な番組配分が行われるべきではないか。

「クロ現」変化は

第一、NHKには既に若者向けの番組がふんだんにある。総合だけ見るとやや少なく感じるが、Eテレには多い。

例えば10代が好きなことを調査する「沼にハマってきいてみた」(月曜と火曜の午後7時半)である。

この番組は明らかに若者向けだが、視聴率は世帯も個人もコアも1%に届いていない。ごく限られた若者しか観ていない訳だが、2018年に始まり、ずっと続いている。

若者偏重が行きすぎると、高齢視聴者による受信料不払いなどの反乱が起こるのではないか。高齢視聴者が従順とは限らない。

放送枠が移動した「クローズアップ現代」(月~水曜午後7時半)はどうだろう。6年ぶりに午後10時台(火~木曜)から同7時台に復帰した。視聴率に変化はあったのか。

改編前の3月第1週(2月28日~3月2日)は「3日間の世帯平均値約4.7%」「同個人平均値約2.4%」「同コア平均値約0.8%」だった。

それが改編後の4月第4週(25~27日)はこう変わった。「3日間の世帯平均値約10.5%」「同個人平均値約5.9%」「同コア平均値約1.5%」。いずれの数値も倍増した。

民放の午後7時台はバラエティーとアニメのみ。硬派な番組を求めていた人が多かったようだ。高視聴率を誇る「ニュース7」(毎日午後7時)からチャンネルを替えない人が多いせいもあるだろう。

だが、良いことばかりではない。仕事などの都合で、午後7時台だと「クロ現」が観られない視聴者もいるはず。地上波での再放送の検討もすべきだろう。

現在の「クロ現」の再放送はBS1で火曜から木曜までの午後5時半から。衛星契約を結んでいない視聴者は蚊帳の外である。時間帯も見やすいとは言い難い。

「配信の『NHKプラス』で観ればよい」と言う人もいるだろう。NHKも普及に努めている。「クロ現」に限らず観られる。

だが、「NHKプラス」の4月現在の登録数は約250万件。受信契約件数4200万件のうち6%弱に過ぎない。まだ身近とは言えない。

「石原さとみ」新番組は

新番組の視聴率も見てみたい。まず、女優の石原さとみ(35)がMCに初挑戦していることで話題の「あしたが変わるトリセツショー」(木曜午後7時57分)。

4月7日に始まり、同28日までに4回放送された。「ガッテン!」の後継番組と目されている。計4回の視聴率平均値は次の通り。「世帯約7.5%」「個人約4.2%」「コア約1.4%」。

食や健康、生活などからテーマを選び、科学と実験、調査によって徹底解剖する生活科学情報エンターテインメント番組。初回のテーマは「トマト」だった。以降、「血管」、「アブラ」、「ギョーザ」が取り上げられた。

「ガッテン!」より科学色が薄れ、その分、エンタメ色が強まった。見やすい。「ガッテン!」より視聴率が落ちたが、放送時間帯が約30分繰り下がったので単純比較は出来ない。

半面、世帯も個人も高視聴率を得ていた「ガッテン!」を打ち切ってまで始めるべきだったのだろうか。どちらも放送したって良かったのではないか。

改革色と清新さを鮮明にするため、「ガッテン!」がスケープゴートになってしまった気がしてならない。

若者向け「夜ドラ」は厳しい

4月4日のスタート前から不思議だったのが月曜から木曜までの午後10時45分から15分間、「夜ドラ」枠を新設したこと。

民放のドラマとバラエティーが佳境に入る時間である。途中でチャンネルをNHKに替える人が多くいるとは思えない。

「夜ドラ」の第1作は青春ミステリー「卒業タイムリミット」だから、それまでNHKを観ていた人がそのまま視聴するとも考えにくい。午後10時台には「映像の世紀バタフライエフェクト」(月曜)や「歴史探偵」(水曜)などが並んでいるからだ。どう考えたって視聴者層が違う。

「卒業タイムリミット」の主演は井上祐貴(25)。面白い作品だ。ただし、明け方にお笑い番組をやるのと同じくらい条件が悪いから視聴率は大苦戦している。

放送開始から4月末までの平均値は「世帯約3.1%」「個人約1.6%」「コア約0.5%」。特にコアが1%にも届かないのは痛い。若者向けの作品なのだから。

NHKはこの改編から平日午後10時45分から同11時30分までの枠を「プライム帯・若年層ターゲットゾーン」と位置付けている。その狙いが最初から外れてしまった。

より細かく個人視聴率を見てみると、NHKの思惑が視聴者ニーズと噛み合っていないことが分かる。以下、4月21日放送のデータである。

「卒業タイムリミット」のターゲットであるはずのT層(男女13~19歳)の個人視聴率は0.5%。やはりターゲットのM1層(男性20~34歳)は0.2%でF1層(女性20~34歳)は0.7%。他局に完敗だ。

一方、ターゲットから外れているはずの男性50歳以上は2.2%。女性50歳以上は3.3%ある。「映像の世紀バタフライエフェクト」や「歴史探偵」から続けて観ている視聴者が多いのだろう。やはり、この放送枠で若者向けドラマはきつすぎる。

午後11時台で始まった新番組は概ね順調。「阿佐ヶ谷アパートメント」(月曜)は大家(司会)役の阿佐ヶ谷姉妹が、アパートの住人(出演陣)役と温かく愉快なトークを繰り広げる。

古くて新しい構成、内容であり、大化けしそうな番組だ。5月2日放送の視聴率は「世帯2.0%」、「個人1.0%」、「コア0.5%」だった。

織田裕二(54)がMCの「ヒューマニエンスQ(クエスト)」(水曜)は若者でなくても面白いはず。人間というナゾだらけの存在を、じっくり深く追求する。例えば「誕生」や「死」、「進化」などに迫る。

1年半前からBSプレミアムで放送されている番組の再編集版だが、焼き直し感はない。5月4日放送分の視聴率は「世帯2.1%」「個人1.1%」「コア0.6%」だった。

狙い通りだったのはEテレの幼児番組「おかあさんといっしょ」の平日の再放送を、午後4時20分から同6時に移したことだろう。

旧放送枠だった3月31日は「世帯0.4%」「個人0.2%」だったが、新放送枠となった5月2日は「世帯1.8%」「個人1.1%」と観る人が激増している。

放送枠を移動したのはターゲットである保育園児の帰宅時間のピークに合わせたため。平日朝の本放送は午前7時45分から同8時09分で変わっていない。

高視聴率番組が生まれた一方、まったく振るわない新番組もある。大改編の成否を一言で表すと、「ドロー」だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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