国交省「プラトー」の衝撃 3D都市モデルはまちづくりをどう変えるか

国交省「プラトー」の衝撃 3D都市モデルはまちづくりをどう変えるか

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/05/04
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いま、日本のまちづくり、そして都市の在り方が、ひとつの計画のもとで大きく変わろうとしている。プロジェクト名は「Project PLATEAU(プラトー)」。国土交通省主導で「3D都市モデル」の整備を進めるプロジェクトだ。

3D都市モデルとは、地図上の建物や地形に高さや形状などを組み合わせ、実際の都市空間をそのままサイバー上に再現したもの。都市の形態をデジタルで再現しているだけでなく、建物ごとの用途や階数、建設年などの仔細なデータが付与されており、さらにその区画における人の流れなど多様なデータを重ね合わせることができる。

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渋谷駅周辺の様子(PLATEAU VIEWより)

Project PLATEAUでは、全国約50都市の3D都市モデルを整備し、これを活用した都市計画、防災政策の高度化や、都市サービスの創出をめざす「まちづくりのDX」を推進している。具体的にはどのようなことに役立てられようとしているのか。プロジェクトのコアメンバーである国土交通省 都市局 都市政策課課長補佐の内山裕弥に聞いた。

都市の「形」がわかることの意味

3D都市モデルを活用すると、まちづくりはどう変わるのか。想定する1つ目のユースケースとして、都市活動の可視化が挙げられる。

街中のカメラやセンサーが集めた人の流れや時間ごとの密集度などを計測したデータを3D都市モデルに重ね合わせて可視化することで、効果的な空間設計を行うことができる。

例えば、ある一定の時間帯に混雑する空間を割り出すことができれば、混雑を緩和するための動線を敷く空間設計を考えることができる。それにより密を避けた新型コロナ対策を行うことが可能になる。内山は言う。

「他にも、広場に置かれているベンチを実は誰も使ってないことがセンシング技術を用いれば可視化される。そこに賑わいをもたらすために、例えばキッチンカーを置いたらどうかというシミュレーションを、3D都市モデル上で行うことができます。こうしたデータと3D都市モデルでのシミュレーションの掛け合わせは、政策やマーケティングにおいても有効です」

Project PLATEAUが整備する3D都市モデルには、建物の高さや構造、建築資材は何なのかといったデータが、特に建物に関して事細かに格納されている。こうしたデータと浸水想定区域図などの災害リスクデータを掛け合わせることで、いざという時最適な避難場所はどこかを割り出すことができ、自治体と住民が連携して有効な避難計画を立てることができる。防災政策においても極めて有用だ。

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浸水状況を3D都市モデル上で可視化することにより、より有用なハザードマップを作成することができる(PLATEAU VIEW)

さらに、現実空間と同等の情報をもつ3D都市モデルを使うことで、都市開発・まちづくりの高度なシミュレーションが可能となる。この道路を狭くして広場をつくった場合、どういった人の流れが予想できるのか? はたまた中心市街地が縮小しているがそれに対する有効な政策はどのようなものか? これまでは限られたデータと経験則に則って行っていたまちづくりを、より綿密に、科学的に、行えるようになる。

VR上の人が見える? デジタルツインが可能にする新サービスも

今年3月からProject PLATEAUの「G空間情報センター」上では、オープンデータとして順次3D都市モデルが公開され、誰でも自由にデータを使用することができるようになっている。とはいえ、まちづくりに直接の関わりがないようにも思える一般の人は、どのようにこれを活用することができるのか。内山はこう語る。

「3D都市モデルの優れたビジュアライズ機能を活用すれば、まちの課題や将来像について、具体的なビジョンを共有することができます。あるいはそれを見た市民がこんな風にまちを変えていったらいいのではと、市民のアイデアをまちづくりに取り込むことができるようになる。こうした市民のまちづくりへの参加のツールとして使えるのではないかなと考えています」

3D都市モデルがオープンデータ化されるとまもなく、SNS上では「富士山見えるマップ」や「AR初音ミク」など、自らのアイデアを掛け合わせた創作物が披露されるようになった。

#PLATEAUのオープンデータをオクルージョンとしてHoloLens2で使ってみた!

やばいわ。まじの一切の調整なしでこのレベル!時代が変わりそうだ。。

特に20秒〜エヴァの”ガフの扉”をHoloLens2で出してみたけどこれめっちゃまじでわかりやすいと思うpic.twitter.com/UhFPa0LKI9— YORIMIYA@xRMV (@jav6868)March 26, 2021

「例えばARで建物と建物の間に初音ミクを出すには、建物同士の位置情報や大きさがわからないとできない。その位置合わせにPLATEAUを使うという、新しい使い方ですよね。また、3D都市モデルは形状の面で優れていますが、実はそこに入っているデータも重要なので、それを活用してくれるソリューションがもっと生まれてほしいなと思います」

Project PLATEAUは3D都市モデルを活用した、民間企業とのサービス開発にも力を入れている。例えばARやVRによる空間コンピューティング技術を用いたサービスを企画するスタートアップ「MESON(メザン)」とは、渋谷を舞台にしたAR/VR融合の周遊体験の実証実験を行っている。

ARとVRの融合とは要するに、3D都市モデルがあるサイバー空間上にVRでログインするユーザーと、現実世界のARユーザーとがあたかも同じ渋谷の街にいるかのように、両者を横断してコミュニケーションを発生させることができるのだ。

VRユーザーはVR空間でアバターを動かして渋谷の街を歩き、対して実際の渋谷にいる人はARグラスやスマホをかざすと、VRでログインしている人が街を歩いているように見えるのだ。ARユーザーとVR上のユーザーはボイスチャットで会話することもできる。

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PLATEAUはリアルとバーチャルの繋ぎ役としての役目も担っていくかもしれない

「ARグラスから自己位置を特定するのは実は簡単ではありません。ARを見ている人とVRの人が位置を合わせてコミュニケーションを取るのは実は結構難しい。このような場合に、測量データとして位置情報をしっかりと取っている3D都市モデルを、位置合わせに活用できます。3D都市モデルを位置測定の基準にして、ARから見ている建物と背景にある3D都市モデルを照合することで、正確に自分の位置がわかるようになります」

3D都市モデルは、データの集まりだ。データはあくまでバーチャル上のものであり、形をもたないもののようにも思える。しかしデジタルツインの都市の出現により、バーチャルの世界と垣根なくコネクトできるこのサービスなどは、都市の「形」があってこそのものだとわかる。3D都市モデルはまちづくりという文脈を超えて、新たなコミュニケーションを生み出す。

この他にも、物流ドローンの配送ルートのフライトシミュレーションや、空間認識技術を活用したAR観光ガイドなどのサービスも開発されている。

内山は「結局データを整備しても、それを活用して何を生み出すのか、役人だけで考えても限界がある。昨年のプロジェクトでは、民間のアイデアを募って具体的なサービスをリーディングケースとしてつくることで、『自分だったらこう使いたい』といろいろなイノベーションが生まれてくるきっかけにしたいという思いで取り組んでいました。課題解決のみならず、面白さを感じながらやっていきたい」と話す。

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内山裕弥

さらに今後の展開についてこう語る。

「昨年は始まりの年でしたが、PLATEAUという新しい取り組みを定着させていくためには、今年度、来年度にプロジェクトをどう動かしていくかが重要です。今後は、ユースケースの深掘りや、データ仕様の拡充に注力したいと思っています。ロボティクスや自動運転、脱炭素など、新たなソリューションが望まれる分野で、実際に社会にインパクトをもたらすような具体的なユースケースを生み出していき、スマートシティを社会実装していく一翼を担っていきたい。

長期的には、3D都市モデルを全国の市町村で当たり前のようにつくってほしいと願っています。というのも、Project PLATEAUの都市モデルは基本的に、自治体がこれまでの仕事のなかで測量や調査したデータをもらってきてつくっているのです。基本的には、自治体側で新たな調査などの必要はなく整備できる仕組みを整えています。

あとは、3D都市モデルが具体的にどのように政策や生活に役立つのか、我々がリーディングプロジェクトとして事例を見せていき、うちでもつくりたいと思ってもらえるようになったらいいなと思っています」

Project PLATEAUは今後まちづくりのDXを推進するだけでなく、官民が一体となって「叶えたい未来」を考える機会を提供していく、新たな事例となっていくのかもしれない。

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