国を憂える韓国人が嘆く「韓国はどこに向かうのか」

国を憂える韓国人が嘆く「韓国はどこに向かうのか」

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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就任時、若い世代に圧倒的な人気を誇った文在寅大統領だが・・・(写真:ロイター/アフロ)

(呉 花梨:日韓通訳者・翻訳者)

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は2021年3月、過去最低を記録した。朴槿恵(パク・クネ)大統領が罷免に追い込まれ、それに伴う大統領選挙で20代から40代の熱狂的な支持を受けて当選した文在寅氏。2017年5月、公正と正義を語り、鳴り物入りで大統領に就任した。「文在寅派」を「ムンパ」と略す新造語も生まれるなど、若い世代に圧倒的な人気を誇り、国民から大きな期待が寄せられていた。

文在寅氏は大統領選挙の遊説で、金剛山観光や開城(ケソン)工団の再開など、北朝鮮にメリットになる政策を主張し続けた。そして大統領に当選すると、果たせるかな、北朝鮮と中国に好意的な政策が着々と進められた。

私はそれをテレビで見ながら、文在寅氏が当選したら北朝鮮寄りの政策や親中政策を採り、反米と反日につながるのではないかと危惧を抱いていた。北朝鮮は住民が深刻な貧困に苦しんでいるのにミサイルを撃ち続け、核開発を止めない。その北朝鮮を擁護する中国。韓国はその肩入れをすることになるのでは、と。

京畿(キョンギ)道議政府(ウィジョンブ)市で行われた大統領の遊説演説にも、日本人記者の取材の手伝いのために同行した。あの時の光景が今も脳裏を離れない。それほどショックを受けたのだ。文在寅候補は前方に座っている老人の手をぎゅっと握り、「基礎年金を2倍に上げてあげよう」と大きな声で約束したのだ。

「自分の当選のために国民が苦労して払っている税金を勝手にバラまく気か?」と私は心の中で毒づいた。50代以上の世代の文在寅候補に対する支持率が異様に低かったのだ。

現政権は政権初期、「増税のない福祉」と「電気料金引き上げなしの原発閉鎖」を幾度も強調した。私はその実現可能性に懐疑的だった。実現できたならすばらしい政策に違いない。だが、果たして可能なのか。私の周りにいたほとんどの人はこの公約を信じていた。それだけ文在寅政権への期待が大きく、不正腐敗とはかけ離れたクリーンな政権になると信じ切っていたのだろう。

案の定、国民の期待はやはり打ち砕かれた。文在寅大統領が法務部長官に任命した「たまねぎ男」、もとい曹国(チョ・グク)氏が引き金だった。

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5000ウォンで食べられたランチが1万ウォンに

文在寅政権は「勤労者の所得を上げると、消費が拡大され経済成長を誘導する」という「所得主導成長」を主張し、主要経済政策として急いで実行した。結果として最低賃金が急速に上昇し、市場経済は悪化した。政府が青年たちの就職を助けるために莫大な額を支援しているにもかかわらず、青年層の就職率はどんどん下落していったのだ。

韓国は学閥重視の会社が多い。いい大学を出なければいい会社に就職できない。したがって親は老後の資金も蓄えるよりも、子供をいい大学に行かせようと、精神的にも物質的にも「教育にオールイン」する。そこに「曹国問題」が起きたのだ。韓国最高峰の学府であるソウル大学法学専門大学院教授の曹国氏が、地方大学の教授である妻と共に書類や表彰状を偽造し、我が子を一流大学に入学させた。この事件に国民は心底がっかりした。

ちなみに、曹国氏を捜査した尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長は、与党から猛烈な攻撃を受けた。「検察の積弊清算(過去の政権時代の害悪)」という名分を立て、与党を捜査した検事は左遷されるなど、文在寅政権は自分側の人間を守るために手を尽くしている。

それでは、文在寅大統領の主張していた「所得主導成長」はどうなったのか。最低賃金を上げたことで物価は上昇した。肌で感じたのが食事代だ。5000ウォン(約490円)で食べられたランチが1万ウォン前後に値上がりしたのだ。飲食店やコンビニなど雇う側は時給を上げなくてはならないので雇用を減らす。家族中心の事業に切り替わり、最低賃金が負担になった中小企業は新入社員の採用を取りやめた。最低賃金は上がったが、物価も上昇し、就業率はどんどん下落していった。

確かに文在寅政権になって、さまざまな面で福祉は向上した。しかし、そのために莫大な予算がつぎ込まれた。福祉の恩恵を受ける国民がいる一方で、税金が上がって苦しむ国民がいる。ニュースでは「福祉に予算を使う」という内容が毎日報じられた。「わが国にこれほどお金があったのか」と不思議に思った。国のお金を使うという報道はあったが、そのお金はどうやって工面するのか、聞くことはできなかった。

公共放送であるKBSをはじめ、主要テレビ局の社長もすべて与党寄りの人物に入れ替わり、現政権を批判する声は次第に消えていった。日本と違い、韓国はマスコミの代表を政府が任命するケースがある。政府の意見を代弁するだけのニュースを国民は信頼しなくなり、視聴率はどんどん下がっていった。

与党側市長のセクハラに沈黙する女性人権団体

ソウルと釜山(プサン)は4月7日に市長補欠選挙を控えている。ソウル市長だった与党の朴元淳(パク・ウォンスン)氏は秘書のセクハラ問題で自ら命を絶った。同じく与党側だった釜山市長の呉巨敦(オ・ゴドン)氏もセクハラ問題で辞任した。女性の人権を強く主張してきた与党には女性の支持層が多い。与党を支持する女性人権団体は、「私も性暴力の被害者だ」と告発する「MeToo運動」の時とは異なり、なぜか沈黙を守っている。

ソウル市長候補として、与党陣営は朴映宣(パク・ヨンソン)候補を、野党陣営は呉世勲(オ・セフン)候補を擁立した。序盤有利と思われていた朴映宣候補だが、夫が日本にマンションを所有していることが明らかになり、非難を浴びている。中小ベンチャー企業部長官の朴映宣候補は、ソウル市長選挙に出るために申告した財産目録から、東京のマンションを漏らしていた。国民に日本製品の不買運動を主導した政府側の人物だ。反日を叫ぶ文在寅政権に反日ブーメランが返ってきたわけだ。

過去の大統領選挙の流れを見ると、ソウル市長選挙の結果は次期大統領選挙に影響を及ぼす。ソウル市長が誰になるのかがキーだ。ソウル市長と釜山市長が野党側から出れば、野党は勢いづき、2022年3月に行われる次期大統領選挙でも勝てるかもしれない。2020年4月に行われた第21代国会議員選挙で、今の与党は300議席のうち180議席を確保し、巨大与党になった。もはや国民の不満に耳を傾けなくなったようだ。

北朝鮮に対する無条件の支援、無分別な原発閉鎖、就職率の低さ、物価上昇、曹国氏問題、不動産政策の失敗など、どの問題も政策も「公正と正義」とは程遠い。とりわけ最近世間を騒がせている韓国土地住宅公社(LH)の不正と不動産政策の失敗は、国民の憤りを買っている。

韓国土地住宅公社の職員や公務員らが値上がりを見越して土地を購入するという不動産投機は、住宅価格の上昇により苦しむ無住宅者にとって、大きな裏切り行為だ。また、政府の不動産政策の失敗により、莫大な不動産保有税を抱えることになった住宅所有者も気が楽ではない。

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文在寅政権に痛撃を与えている韓国土地住宅公社の職員による不動産投機疑惑。写真はソウル近郊のマンション群(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

では文在寅政権になって米国との関係はどうなったのか。トランプ政権に防衛費引き上げを要求され、その後も摩擦が続いた。バイデン政権が発足した今は高高度防衛ミサイル(THAAD)配置問題に政府が協調せず進展していない。北朝鮮という脅威に対し、日米の同盟国として共に対峙しようとしていないのだ。

日本との関係はどうだろう。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代、1965年の韓日協定に基づき、「強制徴用問題」については韓国政府が補償することで終結した。しかし、韓国の裁判所は強制連行に関わった日本の企業が補償すべきだと判決を下し、日本との対立は激化した。

現在、新型コロナウイルスへの防疫措置を理由に、文在寅政権は光化門(クァンファムン)広場などを封鎖し、集会やデモを封鎖している。コロナウイルスを感染拡大させた中国に、非難の言葉も浴びせない。むしろマスクが足りないのに中国に送ったため、韓国内のマスクが不足する事態にまで陥った。原発に代わる代替エネルギーとして韓国全国にソーラーパネルを設置したが、パネルのほとんどは中国からの輸入品だった。

韓国人は本当に反日を望んでいるのか?

韓国の国民は本当に反米、反日を望んでいるのか。私は違うと思う。日本も韓国との関係が悪化することは望んでいなかっただろう。過去の歴史問題はいろいろあるが、多くの韓国人は日本が好きだ。日本に行く観光客が一番多く、日本に学ぶことが多いとよく話している。

2019年に日本は半導体など材料3品目の輸出規制をするに至った。残念ながら、その韓日間の背景を知らない国民が大部分だ。

韓国の報道だけを見ると、韓国に非友好的な極右の安倍政権が過去への反省もなく、突然輸出規制という不意打ちを食らわせたように思える。しかし実のところ、日本政府は輸出規制まではしまいと文在寅政権に何度も手を差し伸べた。だが、文在寅政権は朴槿恵政権時代に結んだ慰安婦合意を覆し、徹底的に日本を無視したのだ。

韓国のテレビや新聞などのメディアだけでは、自国をまともに知ることできなくなった。世界のマスコミの見る韓国と、韓国のマスコミが発信する韓国は全く違う国だ。韓国人は反日を叫んでいても和食を食べるし、日本の物が好きだから買う。資本主義国家では、消費者が質の良い物を選ぶのは当然だ。一方的な情報で反日をあおり、政治家の地位を固めるというやり方が続くなら、韓国の未来は絶望的だろう。

共産主義の中国と北朝鮮、そして自由民主主義の米国と日本。世界で常識が通じる国はどちらなのか。韓国は常識の通じる国と手を組むべきだ、と私は考える。もし常識の通じない国と手を組んだら、韓国を共産国家と同類だと受け止められ、世界の多くの自由民主主義国家に背を向けられるだろう。

呉 花梨

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