『後継者難』の倒産状況調査 2020年(1-12月)

『後継者難』の倒産状況調査 2020年(1-12月)

  • 東京商工リサーチ(TSR)
  • 更新日:2021/01/13

人口減少と経営者の高齢化が進むなか、新型コロナ感染拡大を契機に、中小企業の後継者問題が深刻さを増している。2020年(1-12月)の『後継者難』を起因とする倒産は、370件(前年比37.0%増、前年270件)と急増した。 300件を突破したのは、調査を開始した2013年以降で初めて。
代表者の平均年齢は年々上昇をたどり、2019年は62.1歳に達した。業績不振の企業は、同族の継承や後継者育成が進まず、事業承継が後手に回っている。このため、代表者の死亡や体調不良など、緊急事態や健康問題に直面すると倒産に至りやすい。さらに、倒産を避けるため資産超過のうちに廃業を決断するケースも増えている。
2020年の「後継者難」倒産370件のうち、代表者死亡が163件(前年比26.3%増)、体調不良が132件(同37.5%増)で、この2要因だけで「後継者難」倒産の約8割(構成比79.7%)を占める。
中小企業では経営の全権を代表者が握り、後継者育成が遅れた実態をさらけ出している。
産業別では、最多が建設業の85件(前年比70.0%増)。次いで、サービス業他76件(同15.1%増)、卸売業65件(同47.7%増)と続く。
また、業歴別では、1980年代以前の設立(創業)が182件(前年比43.3%増、構成比49.1%)と約5割を占めた。
新型コロナの第三波が襲来し、1月7日に1都3県に緊急事態宣言が再発令された。近畿、中部、関東、九州でも「緊急事態宣言」の発令を政府に要請(を検討)する府県も出てきた。収束が見えないコロナ禍を契機に、中小企業の「社長不足」が倒産や廃業を加速する事態が危惧される。

※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2020年(1-12月)の「後継者難」倒産を抽出し、分析した。

調査開始以来、最多の370件

2020年(1-12月)の「後継者難」倒産は370件(前年比37.0%増)で、前年(270件)の1.3倍に急増した。10月までで集計を開始した2013年以降、年間最多の2015年の279件を超え、最多記録を大幅に更新した。
リーマン・ショック後、企業倒産は減少をたどり、2013年は倒産した1万855件のうち、「後継者難」の倒産は234件(構成比2.1%)にとどまっていた。
新型コロナ感染拡大のなか、政府の支援策などで企業倒産は低水準に抑え込まれ、2020年(1-12月)の企業倒産は7,773件(前年比7.2%減)と減少した。
だが、「後継者難」倒産は1-12月で累計370件と過去最多を記録し、構成比は4.7%に上昇。好対照となった。

金融機関は、取引には企業の将来性を重視する「事業性評価」に重きを置き、後継者の有無も重要事項の一つになっている。
多くの中小企業は、代表者が経理や営業、人事など経営全般を担っている。代表者の死去や、病気などで体調不良に直面すると、事業運営に支障をきたすリスクが顕在化しつつある。

要因別 「死亡」と「体調不良」で約8割

「後継者難」倒産の要因別では、最多は代表者などの「死亡」の163件(前年比26.3%増、構成比44.0%)。次いで、「体調不良」が132件(同37.5%増、同35.6%)、「高齢」が40件(同33.3%増、同10.8%)と続く。
代表者などの「死亡」と「体調不良」の合計は295件(前年比31.1%増、前年225件)で、「後継者難」倒産に占める構成比は約8割(79.7%)を占めた。
また、「高齢」はまだ少ないが、2年連続で増えている。
中小企業は、代表者の高齢化が進み、事業承継や後継者の育成が大きな課題になっている。

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業歴30年以上の老舗企業が約5割

「後継者難」で倒産した企業の設立時期(個人企業は創業)は、最多が1980年代の80件(構成比21.6%、前年52件)だった。次いで、1990年代が72件(同19.4%、同53件)、2000年代が57件(同15.4%、同51件)、1970年代が55件、1960年代以前が47件の順。
最少は、2010年代以降の45件(構成比12.1%)。
業歴30年以上の1980年代以前の設立は182件で、全体の約5割(同49.1%)を占め、過去最多になった。
増減率では、1970年代が前年比111.5%増、1980年代が同53.8%増と、業歴の長いレンジで増加率が高い。
一方、業歴10年未満の2010年代以降の設立も同55.1%増(29→45件)と高い。

産業別 10産業のうち、7産業で増加

産業別では、10産業のうち、7産業で前年を上回った。
「建設業」が85件(前年比70.0%増、前年50件)で最も多く、2年連続で増加し、調査を開始した2013年以降、最多になった。「後継者難」倒産に占める構成比は22.9%(前年18.5%)になった。
「サービス業他」は76件(同15.1%増、同66件)で、5年連続で前年を上回った。飲食業(15→31件)、宿泊業(3→6件)などで、増加した。
このほか、「小売業」42件(前年比20.0%増、前年35件)が2年連続、「製造業」60件(同76.4%増、同34件)と「卸売業」65件(同47.7%増、同44件)が2年ぶり、「運輸業」13件(同85.7%増、同7件)が3年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、「情報通信業」9件(同10.0%減、同10件)が2年連続、「不動産業」13件(同35.0%減、同20件)で2年ぶりに、それぞれ前年を下回った。
「金融・保険業」は2年ぶりに発生がなかった。

負債額別 負債1億円未満が7割以上

負債額別では、「負債1億円未満」が271件(前年比38.2%増、前年196件)だった。「後継者難」倒産に占める構成比は73.2%(前年72.5%)と、7割以上が小・零細規模で、調査を開始以降、最も高い水準となった。
内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が193件(前年比30.4%増前年148件)、「5千万円以上1億円未満」が78件(同62.5%増、同48件)だった。
このほか、「1億円以上5億円未満」が86件(同32.3%増、同65件)、「5億円以上10億円未満」が7件(同75.0%増、同4件)、「10億円以上」が6件(同20.0%増、同5件)だった。

形態別 消滅型の破産が9割以上

形態別では、最多が「破産」の333件(前年比38.1%増、前年241件)で、3年連続で前年を上回り、過去最多を記録した。「後継者難」倒産に占める構成比は90.0%(前年89.2%)に達した。
また、「特別清算」が8件(同14.2%増、同7件)で、2年連続で増加した。消滅型の「破産」と「特別清算」は合計341件(同37.5%増、同248件)に達し、9割以上(構成比92.1%)を占めた。
一方、再建型の民事再生法は2件(前年比50.0%減、前年4件)、会社更生法は調査を開始以降、発生がなく、後継者不在の企業の再建が難しいことを浮き彫りにした。

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資本金別 1,000万円未満が5割強

資本金別では、1,000万円未満(個人企業他を含む)が206件(前年比27.9%増、前年161件)と、4年連続で前年を上回った。「後継者難」倒産に占める構成比は55.6%(前年59.6%)で、前年より4.0ポイント低下した。
内訳は、「100万円以上500万円未満」が101件(前年比16.0%増、前年87件)、「500万円以上1,000万円未満」が59件(同51.2%増、同39件)、「個人企業他」が34件(同25.9%増、同27件)、「100万円未満」が12件(同50.0%増、同8件)だった。
このほか、「1,000万円以上5,000万円未満」が152件(同47.5%増、同103件)、「5,000万円以上1億円未満」が11件(同83.3%増、同6件)。
1億円以上は、1件(前年ゼロ)だった。

都道府県別 増加31、減少8、同数8

都道府県別は、増加が31道府県、減少が8県、同数が8都県だった。
2年連続で「増加」が「減少」を上回った。
「後継者難」倒産が10件以上は、12都道府県だった。このうち、増加率では新潟1400.0%増(1→15件)、広島125.0%増(8→18件)、群馬116.6%増(6→13件)、千葉85.7%増(7→13件)、福岡64.2%増(14→23件)、愛知58.3%増(12→19件)、埼玉33.3%増(9→12件)、神奈川と北海道が各14.2%増(14→16件)、大阪10.5%増(19→21件)。
減少はゼロで、東京(59件)、兵庫(11件)が前年と同件数だった。

地区別 9地区のうち、四国を8地区で増加

地区別では、四国を除く8地区で前年を上回った。
近畿49件(前年比22.5%増、前年40件)が、3年連続で前年を上回った。また、北海道16件(前年比14.2%増、前年14件)、北陸11件(同120.0%増、同5件)、九州44件(同51.7%増、同29件)が2年連続、東北24件(同50.0%増、同16件)、関東145件(同33.0%増、同109件)、中部38件(同40.7%増、同27件)、が2年ぶり、中国34件(同112.5%増、同16件)が5年ぶりに、それぞれ増加した。

東京商工リサーチ(TSR)

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