はっきり言う。菅さん、小池百合子に負け続けで悔しくないのか?/倉山満

はっきり言う。菅さん、小池百合子に負け続けで悔しくないのか?/倉山満

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2021/05/03

―[言論ストロングスタイル]―

◆世界の首脳の中で真っ先にバイデンと会談した菅義偉首相

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4月16日、ジョー・バイデン米大統領(左)との会談に臨む菅義偉首相。日米共同声明では台湾についても言及するなど、中国への強硬姿勢をアメリカとともに示した形だ 写真/時事通信社

政治家を褒めるのは最もリスクがある言論なのだが、叩くだけなら素人でもできる。世間に向かって政治の話をする時点で玄人と呼ぶならば、自己の言論に責任をもって褒めるべきは褒めるべきであろう。もちろん、御用言論であってはならないが。

今回ばかりは手放しで褒めることができると思ったが、世の中そう上手くもいかない。是々非々で論じるしかない。

先に称揚すべき点である。菅義偉首相はジョー・バイデン米国大統領と会談し、共同声明を発表した。コロナ禍にもかかわらず、世界の首脳の中で真っ先にバイデンと会談し、日米同盟の強固さを訴えた。共同声明の内容も、中国との対峙を明言し、香港やウイグルでの人権弾圧も非難、言うべきことを言っている。

軍事抜きの外交としては、到達できる最高点数ではなかろうか。

ここで注目すべき人物を一人挙げておく。今回の菅首相の訪米に随行した阿達雅志補佐官だ。阿達補佐官は外交の世界では、知る人ぞ知る人物だ。参議院議員で当選2回。通常、首相補佐官が外遊に同行することはないので、この一事でも異例だ。

安倍晋三前内閣はドナルド・トランプ前大統領との協調関係の構築に成功したが、それには菅官房長官(当時)の進言が大きかったし、この動きの黒子として阿達参議院議員の存在を指摘するプロも少なくない。

菅外交は常道を歩んでおり、あまり心配はしていない。軍事力抜きの外交としては、との留保がつくが。

◆アメリカの対中国施策に乗っかった日本

バイデン政権は、中国との対決に舵を切っている。これに日本は真っ先に加勢した格好だ。ならば、中国にかける圧力に、裏付けを持たせねばならない。外交における裏付けとは、何をさておいても軍事力だ。コロナ禍をいち早く抜け出し、経済成長を軌道に乗せつつある中国は、近い将来にアメリカの覇権を奪おうと虎視眈々だ。

それに対しアメリカは許すまじと包囲網を構築しようとしている。では、日本は軍事力を増やす努力をしなければ何もできない。期待は裏切ったらゼロになるのではなく、倍のマイナスになる。

戦いの準備をすることと本当に戦いをすることはまったく別だ。本当に戦いたくない、あるいは戦わずして屈服したくないなら、軍事力を持って対抗しなければならないのが国際社会の掟だ。覚悟も力も無い者の言葉など、無力だからだ。

戦いの準備をするとは、防衛費を増やすことだ。アメリカのトランプ前政権は日本に「GDPの2%は防衛費をかけろ」と要求してきた。ロシアとの慢性的な対立に悩むウクライナなどは7%だ。この2%とは、文明国として最低限の基準だ。

◆防衛費を増やすためには景気回復がマスト

日本の基準では「防衛費倍増」になるが、相手は中国だ。自己採点で「倍増など無理だ」と言ったところで、中国は今や日本の四倍の防衛費をかけている。そして「量より質」で軍隊全体のハイテク化も進んでいる。甘い相手ではない。

防衛費をかけようと思えば、経済力の強化が必要だ。今の我が国の経済力は、世界第三位ではあるが慢性化した長期デフレ不況に苦しんでいる。とうてい「防衛費倍増」など言い出せる空気ではないのは、確かだ。ならば、簡単な話だ。景気を回復させればよい。

そもそも安倍前政権は、「さっさと2年で景気回復する」が公約だったはずだが、いつのまにか反故にされていた。菅内閣とて条件は同じはずだ。菅首相は、景気回復の天王山である日銀人事で野口旭委員を送り込み、政策決定会合の9人中4人をリフレ派(景気回復派)で占めた。安倍前首相も3人までだったのだから、快挙だ。菅首相が決心すれば、黒田東彦日銀総裁とリフレ派で即座に過半数だ。大規模な景気回復策も可能となる。

皇室問題の有識者会議でのヒアリングも順調のようだし、規制改革も進んでいる。景気回復さえ成し遂げれば選挙も乗り切れるし、国民は菅内閣に政策を実行する基盤を与えるだろう。

◆菅さん、小池百合子に負けっぱなしで、悔しくないのか?

だが期待するからこそ、批判すべきは批判する。

またぞろ小池百合子都知事が「緊急事態宣言を」などと言い出す。菅首相の外遊中に、二階俊博幹事長が「オリンピックはやめるとなればスパッとやめるべきだ」などと言い出した。最近の菅首相は麻生太郎財務大臣(と、その背後の財務省)に接近して政権運営しているのが、気に入らないから「小池カード」で牽制しようとの魂胆か。

菅首相はあっさり屈して、またもやの緊急事態宣言の発出を受け容れた。はっきり言う。菅さん、小池百合子に負けっぱなしで、悔しくないのか?

◆今の日本政治は、すべての政策にコロナ対策が優先

医師会(つまり中川と尾崎、その傀儡の尾身)を黙らせて先の緊急事態宣言を解除して、まだ一か月しか経っていない。医師会どもは競うように「医療体制の充実」を言っていた。昨日まで「ロックダウンを」と言っていた医者が「緊急事態宣言に意味が無い」と言を翻した。

ところが同じ医者がまたもや言を翻し緊急事態宣言を求める。科学的根拠以前に、言論の一貫性すら存在しない。単なるパニックだ。

だから政策一新のため、「4月26日に内閣改造を!」と私は先週の本欄で訴えたのだが、届かなかったか。GWにはインドなどへの外遊も控えていたが、取りやめとなった。

今の日本政治は、すべての政策にコロナ対策が優先する。コロナが片付かないと何もできないし、その次に景気回復だ。外交も規制改革もその他の重要な問題も、その後だ。

足元がふらついていては何もできまい。

◆小池百合子とは何者なのか

ところで、小池百合子とは何者なのか。今度は「飲食店に酒類の提供を自粛するよう要請」と言い出した。

そもそも「自粛を要請」など日本語として矛盾しているのだが、何の根拠があるのか。これまた何度も指摘したが、今の特措法自体が憲法違反のオンパレードだ。いつもの護憲派は何をしているのやら。

コロナ禍で、「国民は政府の言うことに従い不平を言わずに我慢すべきだ」との風潮が強い。だが、国民が自由を捨てれば幸せになれるとの根拠は何だ?

総理大臣がおかしな世の中を打開できないとすると、誰ができるのか。

いいかげん、「コロナはペストのように危険な伝染病だ」との前提を、疑ってはいかがか。医師会と小池に振り回される政治にはウンザリだ。

―[言論ストロングスタイル]―

【倉山 満】

’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、最新著書に『保守とネトウヨの近現代史』がある

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