ガビのケガにスペイン中が泣いている。そして、誰が選手を守るべきか、という議論が起きている。
19日のEURO予選スペイン対ジョージアの22分、ハイボールを胸でトラップし反転しようとした瞬間、膝を抱えて倒れ込んだ。自分の足で退場したが、顔は歪めたままで、泣いているように見えた。
19分、1つ前のプレーで膝へのファウルを受けていた。イエローになるような激しいものではなく、一旦外に出た本人もライン際を軽くランニングしてから戻った次のプレーでの不幸な出来事だった。

重傷は間違いない。前十字靭帯断裂であることが濃厚だ。もしそうだとすると、今季のバルセロナとの残りゲーム、今夏のEURO、パリ五輪を失うことになる(その後、前十字靭帯断裂との診断が確定した)。
ガビはキプロス戦(先発フル出場)に続いて、連続で先発した2人のうち1人だった。試合前の会見でカビの過労ぶりについて聞かれたルイス・デ・ラ・フエンテ監督は「ガビはスーパーアクティブだ。決して休みたがらない。エネルギーにあふれているからこそ、たくさんの試合であれだけ良いプレーができる。良い選手というものは休まないものだ」と答えていた。それが試合後は「我われは不死身だと思っているが、実は脆いものだ」と一転した。
デ・ラ・フエンテ監督には酷使と負傷について質問をしたことがある。
私:「かつて16、17歳でシーズン、EURO、五輪でフル出場した後ケガをして今回も招集されていない選手がいます。今ラミン・ヤマルが同じ境遇にいることをどう思いますか?」
答えはこんな感じだった。
代表監督:「常に選手の健康が最優先だ。とはいえ、サッカーはリスクを負うべきスポーツだ。ケガはサッカーの最も醜い部分だが、それとも生きていかなくてはならない。(中略)彼は大変若いし忍耐力を持って接していく。(後略)」
ケガをした選手とはペドリのことだ。この答え、私には少し無責任に響いた。
“ケガはサッカーにつきもの”はわかっているが、若い選手には特別なプロテクションが必要だと思う。年長者から若者への親心が欠けている、と感じたからだ。
あれから2カ月、ヤマルは今回も招集され、ガビはデ・ラ・フエンテ監督下の全10試合に連続出場(うち9試合先発)後、大ケガを負った。
ジョージア戦では負けさえしなければ1位通過達成だった(結局3-1で勝利)。ガビの連続先発の必要は本当にあったのだろうか?
ケガをした後に監督を責めるのは、後出しジャンケンであることはわかっている。たまたま代表だっただけで、バルセロナだった可能性も大いにある。シャビを責めず、デ・ラ・フエンテだけを責めるのは不公平でもある。
だが、決して休みたいとは言わない選手にブレーキを掛けられるのは、監督だけであることも確かなのだ。
文:木村浩嗣