認知症患者の転倒負傷 訴訟判決に批判の声、ツイート噴出 夜間の職員配置など改善不可欠

認知症患者の転倒負傷 訴訟判決に批判の声、ツイート噴出 夜間の職員配置など改善不可欠

  • 神戸新聞NEXT
  • 更新日:2022/11/25

兵庫県立西宮病院で2016年に発生した認知症入院患者の男性=当時(87)=の転倒事故で、看護師の過失を認めた神戸地裁判決を巡って、ツイッターなどで「現場の感覚とかけ離れている」「責任を問うなら、人員を大幅に増やして」といった声が噴出している。医療訴訟に詳しい専門家は「看護師の過失は結果論で、判決を見て医療従事者が辞めてしまうのを懸念している」と指摘する。

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2016年に認知症患者の転倒事故があった兵庫県立西宮病院=西宮市六湛寺町

■ツイート噴出

判決によると、男性は16年4月2日午前5時過ぎ、看護師に付き添われて個室内のトイレに入った。排尿の間にナースコールが鳴り、看護師は別の患者の排便に対応した。男性は1人で廊下に出て転倒し、外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折のけがを負った。

男性は事故の2年後に心不全で亡くなった。男性の家族が兵庫県に損害賠償を求めて提訴し、1日の判決で、高松宏之裁判長は「看護師は転倒の可能性を予見できた」として、県が男性の家族に約530万円を支払うよう命じた。

この判決に対し、ツイッターでは、看護師が限られた人数で入院患者を受け持たなければならない現場の実情や、訴訟リスクに比べた処遇面での不満、認知症患者の医療・介護と、人権尊重のバランスの難しさなどを訴えるツイートが相次いだ。

■二者択一

裁判では、看護師に関して、男性患者の転倒を予測できたか▽結果回避に適切な対応を取ったか-が注目された。

男性はそもそも転倒によるけがで入院していた。入院後の認知症進行や看護師の制止を守らない点などから、病院側は安全確保が難しいと考え、ベッド周辺に動きを感知するセンサーを設置し、身体固定するベルトを使用したという。

高松裁判長はこうした状況を踏まえ、目を離せば男性は勝手に立ち上がってトイレから出歩き、「転倒する恐れが高いことは十分に予見できた」と認めた。看護師はベッドに戻るまで目を離さないか、他の看護師に見守りを頼むことで「結果を回避できた」とした。

ナースコールを鳴らした別の患者は脳性まひで、感染症腸炎や皮膚の細菌感染症を患っていた。夜勤看護師は他に2人いたが、1人は休憩に入り、もう1人は他の患者を看護していた。県は、看護師がこの患者の介助をしたのは「やむを得ない」と主張した。

高松裁判長は県側の主張を、男性と別の患者の状況を比較して検討。別の患者はおむつを着け、勝手に起き上がって歩けないとされていた。医師の証言では、おむつ内に排便しても問題はない。男性が転倒する方が危険性が高いと判断した。

■厳しい結果責任

神戸大の手嶋豊教授(63)=民法・医事法=によると、人が飛び出す可能性がある場所での交通事故で、運転手の過失を問われることが多いのと同様に、男性の転倒可能性が分かっていた中で起きた事故の責任を、看護師が厳しく問われたという。

ただ、手嶋教授は男性を優先した結果、別の患者の感染症が悪化して亡くなるケースが起こる可能性も指摘。「どちらを選んでもリスクを負う。看護師の判断は結果的に不幸な結末になったが、短時間での難しい判断であり、異論も理解できる」と話した。

日本医療労働組合連合会は、21年度夜勤実態調査で夜から朝までの深夜勤務帯の配置人数を調べた。病床数40~49床の病棟では、配置が3人以下だった病院が85%を占めた。

07年には、看護職員の配置基準を「夜間は患者10人に対して1人以上」を求める請願が参議院で採択されたが、抜本的な改善はなされていないという。手嶋教授は「判決を医療従事者や介護従事者を取り巻く環境の改善につなげなければならない」と訴えた。

神戸地裁での判決に対し、双方が不服として控訴している。

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