限られた収入で高級腕時計をお得に楽しむには? 腕時計投資家・斉藤由貴生の考え

限られた収入で高級腕時計をお得に楽しむには? 腕時計投資家・斉藤由貴生の考え

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2020/10/18

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

腕時計投資家の斉藤由貴生です。

腕時計投資家と聞くと、“腕時計を値段だけで判断している人”と思われることがあるのですが、これまで私は「欲しくないけれども、値段が上がりそうだから買う」という買い方をしたことはありません。

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斉藤由貴生

私の腕時計との付き合い方は、「買って⇒楽しんで⇒高く売る」が基本で、“好きな腕時計をお得に買う”ということが大前提であります。

本気で腕時計で儲けようと思ったら、今流行っているモデルを大量に買って、値上がり後に売るという行動が手っ取り早そうです。しかし私は、そういったことは文化的でないと思っているので、自分ではやりません。

私の場合、好きな腕時計がたくさんあるため、「欲しい」と思ったときに、購入額(資本金)と、将来の予想売却額(リターン)を考えて買うのですが、そういった買い方をすることによって、憧れの腕時計をぐっと身近にすることができるのです。

人の生涯年収は決まっていますから、高級腕時計のような高額アイテムの場合、「売る」を前提にしないと一生のうちで購入可能な本数はかなり限られるでしょう。

家やクルマなど高額商品の場合、将来の査定額を気にして買う行動は一般的なのに、腕時計におけるそれは、まだそれほどメジャーではないようです。

クルマの場合、「なるべく値下がりしづらい」といった観点が重要となりますが、腕時計の場合は「値上がり」も視野に入れることができる点が魅力的。ですから、腕時計こそ売る前提で購入したならば、“実質消費額”をかなり抑えることができるわけです。

ということで今回は、私が実質消費額を抑えて買った腕時計の事例をご紹介したいと思います。

◆腕時計選びの考え方の基本

私は常時、「欲しい」と思っている腕時計が何本かあるのですが、それらを天秤にかける際、基準となる観点がいくつかあります。

具体的には、

1 今買わないと、次はいつ買えるかわからない

2 売りやすそう(=リスクが低い)

という2つの点を重視しているのですが、1に該当する腕時計は実はあまりありません。

クルマの場合、評価額が安くなると廃車にされ、なくなってしまうことがあるため個体数が減ってしまうのですが、高級腕時計の場合、スクラップにはならないため、物理的に「買う難易度が上がる」ということはありません。

もちろん、将来的に値上がりすることによって「自分の予算では買えない」となる可能性はありますが、程度が良い個体が減るという観点とは異なるのです。

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筆者が2017年に購入したロレックス・ミルガウス

とはいえ、「これを逃すと次はほぼない」と思って買った腕時計もないわけではありません。

「オーデマピゲ ロイヤルオーク」の古いモデルや、「パテックフィリップ ゴールデンエリプス」の新しめのモデルが1に該当。どちらも私が買って以降、国内で中古を見かけることがありません。

次に、2の観点ですが、これはとても重要です。

腕時計選びの場合、熟考したのに「買った後気に入らなかった」ということがあり得るからです。

将来的に高くなるだろうという投資的な観点に限らず、「いくらぐらいで売れそうか」ということは、気に入らなかった場合のリスク回避策として重要なのです。

ですから私は、「売りづらそう」な腕時計は、欲しいと思ったとしても優先度が後になります。腕時計を買う際は、何本か候補を決めますが、「売りづらい」と思ったモデルはその時点で脱落するわけです。

◆マニアックなカルティエ・パシャを買ったときの話

今回お伝えするのは、カルティエ・パシャの事例ですが、私が検討していたのは、いずれもマニアックなモデルでした。

しかし、そのマニアックのなかにも「売りやすそう」「売りづらそう」があるのです。この「売りやすそう」という観点は、人気かどうかはあまり関係ありません。「売りやすそう」というと、人気がある腕時計、例えばロレックスなどというイメージとなってしまうかもしれませんが、腕時計マニア以外には知られていないような時計でも「売りやすい」「売りづらい」という傾向があるのです。

私がパシャを買おうと思った際、検討していたモデルは、

A パシャC 白文字盤

B パシャ38mm クロノグラフ(ブレスレット)

C パシャ パワーリザーブコンビ(革ベルト)

の3つでした。

◆この中でもっとも売りやすいのは?

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カルティエパシャ38mmパワーリザーブコンビ

このなかでもっとも売りやすいのはB。なぜかというと、相場がわかりやすいからです。

例えば、Bの価格帯が30万~40万円だとしたならば、「30万円で買えば29万円ぐらいで売れるだろう」という予測ができるのです。

Bは定価100万円クラスの高級モデルで、マニア界隈ではそれなりに知名度がある存在。「29万円ぐらいだったら遊び感覚で買っても良い」という需要が考えられるのです。

そして、次に売りやすいのがAです。Aも一定のファンがいるモデルで、Bと同じような感覚があります。ただしAの場合、Bと比べて“程度が悪いモノ”が多い傾向にあります。キレイなモノは購入後の満足度が高い半面、購入額も高めとなる場合があるでしょう。そうなると、「いくらぐらいで売れそうか」という想定がしづらいのです。

最後に、もっとも売りづらいのがCだと言えます。CはAやBと比べて知名度がないため、「これが欲しい」という人がどのぐらい存在しそうかという読みが難しく、内容的にも割高感がありました。

さらにCと同じ価格帯で、Cの後継モデルが売られているのですが、そちらのほうがより高級な要素を多々持っているのです。具体的には、ムーブメントが上級、裏蓋がガラスになっており、ムーブメントを見ることができる、文字盤が高級仕様といった具合です。

のちほど詳しく説明しますが、Cは、このなかでもっとも売りづらいのです。ですから通常であれば、最初に天秤から落ちるはずでした。

◆わかっていても売りづらいCを選んだ理由は?

しかし私は、そのときあえてCを選びました。なぜなら、このときパシャが欲しいと思った理由こそ「Cの見た目に惚れ込んだから」だったからです。

また、私が選んだCのパシャは当時、10年ぐらい前から「いつか買おう」と思っていたのですが、これまで述べてきたような懸念があったため、ずっと後回しになっていたということもあります。

このCのパシャがなぜ売りづらいかというと、それにはいくつか理由があります。

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パワーリザーブインジケーターと文字盤模様のバランスがとても美しい

まず、相場がわかりづらいという難点があるのですが、このパシャの場合、程度が悪いモノが多いことによって、相場が特にわかりづらいのです。

通常、高級腕時計の場合、程度が悪いということはあまり多くなく、程度が悪いモノが売られる傾向があるモデルの場合でも、「程度の良い」モノの相場は、ある程度決まっているのです。

しかしこのパシャの場合、程度が悪いモノの相場はそれなりに安定している一方で、程度が良いモノの相場が安定しなかったのです。

私としては、「程度が良いモノ」が欲しかったのですが、売る場合は「程度が悪いモノ」の相場を想定しなければならなかったのです。ですから、このパシャを買うということは、10万円ぐらいの損をする覚悟が必要だったわけで、私としては勇気のいる決断となりました。

◆買ったパシャは高く売れたのか? 損をしたのか?

買う前に、私はこのパシャを買った後のことまで念入りに考えていたのですが、これまでの経験上、いくら考えたところで買った後に「やっぱり違った」となることは避けられません。そして案の定、やっとの思いで手に入れたパシャを手にした私は「ちょっと違う」と思ってしまったのです。

もちろん、最初に「違う」と感じても、日を追うごとに気に入るということはありますから、私はしばらく積極的に使うことにしたのです。けれども、一向にお気に入りとはならず、時計ケースの中で眠っているという状態が続いていました。

買ってから10か月ぐらいが経過したころ、私はこの時計を持っていることに対する満足感を得られていないことを確信しました。

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このデザインが気に入って、10年以上頭の片隅で「欲しい」と思った後、購入したのですが……

使わない時計でも、ケースの中にある姿を見ているだけで気分が良いということがあるのですが、このパシャはなんとなくそういう気にはならなかったのです。

そして、ちょっと強気の値段でネットサイトに売りに出したところ、見事に海外から購入オファーをゲット。やはり、このようなマニアックなモデルの場合でも、コアなファンがいるということがわかりました。

最後に、私がこのパシャを買った値段と売った値段をお伝えします。買った値段が約23万円、売った値段が約23万円です。つまり、買った値段とほぼ同じ額で売れたわけで、「売りづらい」という予測とは逆の結果となったのです。

まあ、これはラッキーな事例とも言えますが、かなりマニアックなモノでも、それなりに魅力がある腕時計の場合、欲しいという需要はあるということだと思います。

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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