「違います!僕はホストです!」歌舞伎町の男たちが次々と“武闘派ヤクザ”にボコボコにされていた〈終わらない「スカウト狩り」〉

「違います!僕はホストです!」歌舞伎町の男たちが次々と“武闘派ヤクザ”にボコボコにされていた〈終わらない「スカウト狩り」〉

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/11/22

「この野郎!」片っ端からボコボコの“歌舞伎町スカウト狩り”はなぜ起きた? 潰された武闘派ヤクザの「メンツ」から続く

【画像】関係者に流出した歌舞伎町の「スカウト狩り」とみられる動画

コロナ禍で閑散とした夜の新宿駅東口。若いホスト風の男が、暴力団組員の男に追いかけられていた。逃げ惑ったホストが暴力団組員に取っ捕まると、殴られた上に、大声でこう怒鳴られていたという。

「ホストだろうが、スカウトのこと、何か知ってんだろうが?」

国内最大の繁華街、新宿・歌舞伎町を舞台にした「スカウト狩り」事件。6月4日夜、区役所通でスカウトたちが住吉会系加藤連合会傘下組織の組員約100人に追い回されて、殴る蹴るの暴行を受けた一件だ。

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「スカウト狩り」では、無関係のホストたちも被害を受けたという ※写真はイメージ ©文藝春秋

しかし、事件は1日では収まっていなかった。事件のあった4日以降も、暴力団組員の「狩り」は続いていたのだ。区役所通だけでなく、歌舞伎町全域、さらには新宿駅東口周辺まで戦線を広げて、暴力団組員がスカウト風の男を見付けては暴行を加える事件が繰り返されていたのだ。

暴力は戦線拡大していった

当時、歌舞伎町に勤務するホストやボーイなど“夜の街”風の男性は次々と、加藤連合会傘下の組員たちに、対立するスカウト会社のメンバーの疑いをかけられていた。

「お前スカウトだろう!」

「違います。僕はホストクラブで働いています。ホストです」

そして、冒頭で紹介したように逃げ出そうとすると、暴力団組員からつかまれてさらに大声で怒鳴られたうえに殴られる。「信じて下さい。何も知りません」と懇願しても、「スカウトのことで何か知らないのか。あいつらが、どこにいるか教えろ」と脅され続けたという。

暴力団業界の間でも“武闘派”として知られる加藤連合会傘下の暴力団組員らが目の色を変えて、スカウトを探し回っていることは瞬く間に知れ渡った。

スカウトだけではなくホストクラブ勤務のホストやキャバクラのボーイなど、夜の街で働く男性は多いが、歌舞伎町を歩いているだけでいつ暴力を振るわれるか分からない状態となり、あっという間に街の目立つところから男性が姿を消した。それでも、出勤しなくてはならないホストらは、目に留まらぬように足早で移動する姿が見られたという。

いったん発見されてしまえば、男性たちがどれほど「自分はスカウトではない」「スカウトのことは知らない」と説明しても納得してもらえない。暴力に怯える、緊張する日々がしばらく続いた。

スカウトたちが姿を消したのは新型コロナウイルスの感染拡大の時期とも重なり、歌舞伎町の街頭は一時期、より一層、閑散とした。

歌舞伎町からホストが消えた

ライバルグループから優秀なスカウトの引き抜きを繰り返していたスカウトグループ「ナチュラル」の幹部が、「歌舞伎町の顔役」ともされる加藤連合会傘下組織に反抗的な態度を取ったことがスカウト狩りの騒動のきっかけだったことは、前編で紹介した。

暴力団側がメンツをつぶされたことで、歌舞伎町でスカウトを見つけては暴行を加えていく事件へと繋がっていったのだ。

歌舞伎町の飲食業界の女性が、スカウトの活動地域や区役所通からスカウト狩りが始まった事情を明かす。

「この街のスカウトは大きく3つのグループがあり、縄張りという訳ではないが、それぞれテリトリーが分けられている。問題の発端となったナチュラルは歌舞伎町の東側の『区役所通』が活動スペース。ほかに、歌舞伎町のほぼ中央の新宿東宝ビル(旧コマ劇場)から靖国通に面したドン・キホーテ新宿歌舞伎町店までの『セントラルロード』を主な活動地域とするグループと、新宿駅東口周辺を主とするグループに分けられている」

最初のスカウト狩りが行われたのはキャバクラやホストクラブなどが軒を連ねる区役所通だった。「この通りがナチュラルのスカウトたちの主な活動場所だったためではないか」(前出・飲食業界の女性)と推測する。

4日の深夜は区役所通が主なスカウト狩りのステージだったが、翌5日以降はさらに「戦線」が拡大していった。

「歌舞伎町にスカウトたちが戻ってきたのは、9月ごろではないか。10月に入り、ようやく以前の姿になった」(同前)

「とにかく女はカネになる」

今回のスカウト狩り事件の背景には、スカウト業界の繁栄ぶりがあるという。歌舞伎町の事情に詳しい男性が解説する。

「スカウト側はキャバクラなどに女性を紹介すると、店で働いている期間は売り上げのうち数%がバックされる取り決めがある。このシステムを業界では『スカウトバック』と呼んでいる。かなりな金額になるいい商売だ。かわいい顔していれば客はいくらでも付く。とにかく女はカネになる」

前出の飲食業界の女性は、スカウトによる紹介先について説明する。

「スカウトからすれば女の子のスペックによって売り上げが変わる。まず顔が美人であることが必須。顔のレベルによって紹介する店が違う。まず美人はキャバクラ。そうでなければ、それなりの店に紹介する。

歌舞伎町の特徴としては、若くて美人であればそれでよいという土地柄。銀座や赤坂とは違い、20代という若さは必要だけれど多少は下品で構わない。最初はキャバクラで働いていても、中には稼げない子もいる。稼げなければ風俗店に転籍することもある」

ひとたび稼げる女性を“夜の街”に送り込めば、巨額の利益を得る。だからスカウトは、歌舞伎町を歩いている女性に必死に声をかけ続け、しつこく付きまとうことになる。

スカウトは、まずは女性とLINEの連絡先を交換することがマニュアル化されている。「30~40人と連絡を取れるようにしておいて、1人でもカネになる女がいればよいという感覚」(前出・飲食業界の女性)という。

全国から集まってくる女性たち

かといって、歌舞伎町で女性が強引にスカウトされて働かされているという訳ではない。歌舞伎町のスカウトが隆盛である理由には、“夜の街”で稼ごうという若い女性が、関東だけでなく全国各地から集まってくることがある。

コロナ禍とはいえ、忘年会シーズンを目前に控え、飲食店にとっては稼ぎ時であると同時に、女性たちの間ではサイドビジネスも盛んになるという。

スカウト狩り事件の容疑者も逮捕され、歌舞伎町で吹き荒れたスカウト狩りの暴力が収束を見せたことで、ようやく落ち着きを取り戻した。夜の街で働くスカウトの男性だけでなく、スカウトされて夜の店で働く女性たちもたくましさ、したたかさを取り戻しつつあるようだ。

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

尾島 正洋

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