
上昇基調が続く日経平均株価(写真は11月15日。時事通信フォト)
日経平均株価が11月20日に33年ぶりの高値を更新するなど、株式市場には楽観ムードが漂っている。だが、年末に向けてさらなる株高が期待される一方で、いくつかのリスク要因も見受けられる。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんがテクニカルやファンダメンタルズの視点から、日本株の見通しについて解説する。
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株式市場は執筆時点で、楽観ムードに包まれています。11月20日には、日経平均株価が一時33年ぶりの高値を更新する場面があり、今後の高値を期待する声も高まっています。2023年、残り1ヶ月余りで年末株高が実現するのでしょうか。この記事では、楽観ムードに一石を投じかねない3つのリスク要因について考察してみたいと思います。
【1】過熱感に要警戒
株価が短期間で急上昇すると、通常は利益確定の売りが出やすく、短期的な調整が予想されます。
日経平均株価は、10月30日から11月17日までの14営業日で3000円以上上昇しており、一時的な調整が近づいている可能性は高いでしょう。
しかし、一般的な過熱感を示すテクニカル指標であるRSI(相対力指数)や25日間の騰落レシオを確認すると、まだ過熱と呼べる水準までは、わずかに達していないことがわかります。とはいえ今後の上昇局面で過熱感が高まる可能性もあるため、緊張感を持って市場を注視しましょう。
【2】年末の損失確定売りに備える
これは毎年恒例の話題なのですが、年末には意図的に損失を確定させる投資家が増えます。これは、今年の確定利益と相殺させることで、累計の利益額を少なくしたり、来年以降に損失を繰り越して、将来の利益と合算し、譲渡益に対する税金を軽減するための戦略です。
特に2023年は、株式市場が概ね上昇トレンドで推移していたため、多くの投資家が利益を出していると考えられます。そのため、今年は従来よりも損失確定売りのリスクが高まっているかもしれません。
【3】円高トレンドへの転換を警戒
現在の株価上昇の主な要因は、米国のインフレ鈍化とFRB(連邦準備制度理事会)による利上げ懸念の後退です。その結果、米国の長期金利が低下しており、株価の下落圧力が減少。これが米国株式市場の上昇につながり、日本の株式市場にも好影響を与えている構図です。
しかし、同時に日本と米国の金利差が縮小しており、ドル円レートが足元で円高方向に修正され始めています。
これにより、円安トレンドを背景に上昇していた自動車大手などの輸出企業の株価が徐々に重たくなってきています。
11月20日には1ドル=148円台をつける場面があり、ドル円の日足チャートにはダブルトップと呼ばれる天井チャートパターンが形成されています。今後、円高方向へとトレンドが転換する場合、円高メリットのある内需株にとっては好感されたとしても、日本株全体では下落圧力の方が勝る可能性が高いです。
11月と12月は、過去の月間騰落率の統計から見ると上昇しやすい傾向があり、多くの投資家が期待する年末株高のシーズンです。ただ、先ほど紹介したように、「過熱感への警戒」「年末にかけての損失確定売り」「円高転換」といったリスク要因から、一時的に調整局面を迎える可能性が高まってきている点には警戒を持っておきましょう。
また、円高トレンドへの転換が起きた場合には、全体相場が上昇していても、業種や銘柄によって株価の方向性が大きく異なることが想定されます。年末相場を迎えるにあたり、これらの要因に注視しながら、最後まで集中して相場を見ていきましょう。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。
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