鷲見玲奈が水谷隼に聞く東京五輪。丹羽孝希との異色ダブルスは「まったく違う競技を見ている感覚になる」

鷲見玲奈が水谷隼に聞く東京五輪。丹羽孝希との異色ダブルスは「まったく違う競技を見ている感覚になる」

  • Sportiva
  • 更新日:2021/06/11
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鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第9回
ゲスト:水谷隼(プロ卓球選手)

昨年から連載が始まったフリーアナウンサー・鷲見玲奈さんの連載企画。第9回は、東京五輪に出場する卓球日本代表・水谷隼選手(木下マイスター東京)を迎えた。

【写真】鷲見玲奈さんインタビューカット集

テレビ東京時代には世界卓球やTリーグのリポーターを務め、水谷選手を何度も取材してきた鷲見さん。久々の再会に、お互い笑顔で言葉を交わしながら対談がスタート。オリンピック延期後の1年間を振り返ってもらいながら、同じ日本代表メンバーの張本智和選手、丹羽孝希選手について話を聞いた。

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対談を行なった水谷準選手と鷲見玲奈さん

鷲見 まず2020-21シーズンを振り返っていただけたらと思います。コロナ禍で難しい状況だったと思いますが、どのような1年でしたか?

水谷 ほとんど試合がなかったので、なかなか自分の状態を確かめることができませんでした。唯一、Tリーグが1シーズン開催されたのは大きかったですね。残念ながら(所属する)木下マイスター東京は3連覇を達成できませんでしたが、個人としてはシングルスで13勝とけっこう勝つことができたので、悪くはなかったと思います。

鷲見 点数をつけるとしたら100点満点で何点くらいでしょうか。

水谷 70点ぐらいですかね。まだまだ伸び代はあると思っています。

鷲見 本来であれば昨年のTリーグ開幕前に終わっていたはずの、東京五輪が延期になった時のお気持ちを聞かせてください。

水谷 いろんな意味で「かなり難しいな」という気持ちはありました。国内外の試合がすべてなくなってしまいましたし、いつ試合ができるのかわからない。練習をするにもいろんな制限がありました。そういう経験をしたことがなかったので本当に苦労しましたね。

鷲見 その中で、モチベーションを維持するのは大変だったと思います。

水谷 そうですね。「オリンピックのために頑張らなきゃ!」と思いつつも、「やっぱり開催されないのかな......」と落ち込んでしまうこともあって。けっこう気持ちに波がありました。でも今は、本番が近づいてきて少しずつ現実味を帯びてきたので、モチベーションは非常に高まってきています。

鷲見 オリンピックが延期になった瞬間、私は水谷選手の顔が一番に浮かびました。「大丈夫かな?」「どうするんだろう?」と。

水谷 本当だったら昨年の8月ぐらいに引退していた可能性もありましたからね(笑)。今となっては、「まだまだ自分はできる」という自信があるので、もし再延期になったとしても、来年まで頑張れるんじゃないかと思っています。

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鷲見 それを聞いて安心しました。現在の自信につながるような、この1年で状態がよくなった部分はあるのでしょうか。

水谷 "昔に戻れた"ところでしょうか。最近、卓球をしていて、がむしゃらに打ち込んでいた高校生、大学生の頃のような感覚に戻ってきているんです。

鷲見 何かきっかけがあったんですか?

水谷 きっと、自分の残りの競技生活が短いと感じてきているからだと思います。今も昔も卓球はずっと好きですが、それができなくなってしまう。そういう寂しさがあるからこそ、昔のようにがむしゃらに、すごく強度を上げた練習ができているんじゃないかと。

鷲見 それはコロナ禍で卓球のことを考えたり、見つめ直す時間が増えたり、ということも影響していますか?

水谷 それはあると思います。逆に、卓球ができない時期は「何か違うことをやろう」といくつかチャレンジしたんですよ。けど、結局どれも長続きしなくて。それで久しぶりに練習してみると、「あ、やっぱり卓球が好きなんだな」って思えたんですよね。あらためて感じた「卓球が好き」という思いが、今の自分につながっているんだと思います。

鷲見 ちなみに、チャレンジした「何か違うこと」とは?

水谷 まずはゲームをしました(笑)。

鷲見 えー!?(笑)。あ、テレビ番組でも腕前を披露していた『クラッシュ・ロワイヤル』ですか?

水谷 よく知ってますね(笑)。自分で大会を開いたりもしました。張本ともお風呂でよくゲームの話をするんですよ。卓球とは関係ないプライベートのこと、オリンピックや中国選手についてなどいろいろ話すんですけど、5割はゲームの話をしています。

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鷲見 そうなんですね(笑)。張本選手がお話に出ましたけど、選手としての成長ぶりは、水谷選手の目にはどう映っていますか?

水谷 だんだんと責任感を感じてきているように見えます。最近の練習でも、みんながメニューを終えたあと、そこからさらに1時間ぐらい自主練をしていましたし。トレーニングにも必死に取り組んでいます。もう張本も高校3年生。この時期は卓球選手としても、ひとりの人間としてもすごく成長する時期だと思うので、彼もこれまで以上にしっかりと卓球と向き合っているんだなと感じます。

鷲見 頼もしいですね。張本選手は、これまで精神面のコントロールを課題に上げられることもありましたが、メンタルコントロールもうまくできている印象でしょうか。

水谷 今年に入ってからすごく上手にできていると思いますよ。代表だけじゃなくTリーグでもそうでしたが、昨年は試合で負けるとふてくされるというか、悔しさが表情にも出ていました。チームよりも、自分が負けたことに対してすごく落ち込んでしまうというか、なかなか吹っ切れずにいたんです。だけど、今年に入ってからはそういうこともなく、調子も非常にいい。3月にカタールで行なわれた国際大会もシングルスで優勝していますし、どんどん成長してきているのを感じますね。

鷲見 プレーの内容で成長しているな、と感じる点は?

水谷 昔のような攻撃的なプレースタイルに戻ってきていますね。張本が不調の時は、どうしてもプレーが守備的になってしまって、相手に打たれて守り切れないケースが多いんです。でも最近はその反省を生かして、自分から積極的に攻撃していこうと意識して試合に臨んでいるのが見て取れます。

鷲見 精神面もプレー面も、確実に進化してきているのですね。もうひとりの代表メンバー、丹羽選手についての印象も聞かせてください。

水谷 卓球への取り組み方が変わりました。丹羽はプレー面に関しては"天才肌"というか、あまり努力家に見えないプレースタイルだと思うんですが、練習ではものすごく動いているんですよ。「その動き、本当に試合でも使うのかな」と思うぐらい(笑)。試合であんなにめちゃくちゃなプレーをするのに、練習は基礎をメインでやっているのも面白いです。

鷲見 天才的なプレーをする丹羽選手ですから、基礎練習メインというのはちょっと意外でした。

水谷 昔はそうではなかったと思うんですけどね。前回のリオ五輪の直前には、何週間も練習ができなくなるぐらいストレスが溜まって、現実逃避していたこともありました。でも今回は、基礎練習を毎日みっちり行なっているので、大丈夫そうでよかったです。彼とはダブルスのペアなんですけど、すごく自分の世界を持っている選手なので、何を考えているのかをしっかり読み取ってあげなきゃいけないと思っています。

鷲見 丹羽選手とのダブルスは、どちらも利き手が左です。そこに関して不安はありませんでしたか?

水谷 確かに左・左のペアはここ15年間、世界を見渡してもほとんどいませんよね。動きが難しいので、僕か丹羽のどちらかが張本と組んだほうがいいんじゃないかという話もありました。ただ、やはり張本は「エース使い(シングルスに2試合出る選手)」したいので、自然と今の形になりましたね。丹羽とはかなり練習を積んでいますし、やる度に新しい発見があって、自分たちの弱点もわかってきているので、難しさがある中でも一歩ずつ成長している実感はあります。

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鷲見 難しい部分というのは、やはり動き方の部分でしょうか?

水谷 そうですね。サーブを出したあとも、レシーブしたあとも、すべてが難しいです。

鷲見 それでも、リスクだけでなく、強みもあるのでは?

水谷 確実にあります。左・左で組むメリットとしては、どちらもシングルスの時と同じようなサービスが出せて、レシーブでもチキータで攻めることが可能になること。そういう点では非常に優位に立てると思っています。それに相手からしたら、左・左ペアと対戦するのなんて絶対に初めてだと思うんですよ。僕も経験がないですし。

鷲見 確かに、左・左ペアとの対戦経験がない相手に対して、常にアドバンテージを握った状態で試合を展開できますよね。

水谷 気持ちの面でも、間違いなくアドバンテージがあります。ただ、こちらがまともにやったら100%勝てません。普通にプレーして勝てるなら、もっと左・左ペアがいるはずなので。だから僕たちの作戦としては、普通のダブルスの試合をするのではなく、トリッキーなプレーを多用して相手を混乱させていく形になります。なので、まったく違う競技を見ている感覚になると思いますよ。

鷲見 それはすごく楽しみです!

(後編に続く)

Profile
水谷隼(みずたに・じゅん)
1989年6月9日生まれ、静岡県出身。
両親の影響で5歳から卓球を始め、中学3年からドイツ・ブンデスリーガに卓球留学。
2006年に17歳7カ月で全日本選手権シングルスを優勝し、
2018年には10回目の優勝を果たす。
オリンピックには、2008年の北京五輪から3大会連続で出場。
2016年リオ五輪ではシングルスで日本人初のメダル(銅メダル)を獲得した。
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鷲見玲奈(すみ・れいな)
1990年5月12日生まれ、岐阜県出身。
趣味:サッカー、動物と触れ合うこと、愛鳥を愛でる
特技:詩吟
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佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

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