
(写真:ロイター/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムはこのほど、米国で食料品の宅配サービス「Fresh」を拡大すると発表した。Freshサービスはこれまで有料会員プログラム「Prime(プライム)」の特典の1つとして提供していたが、非Prime会員も利用できるようにする。
3500都市・地域で非Prime会員に「Fresh」提供
これに先立つ2023年8月、アマゾンが米西部カリフォルニア州サンフランシスコや東部マサチューセッツ州ボストンなど一部の都市で、Prime非会員にFreshを提供すると報じられた。
今回のアマゾンの発表によると、現在Freshを提供している約3500都市・地域で、同サービスを非Prime会員に提供する。自宅への配達のほか、商品を店舗の駐車場などで受け取るピックアップサービスにも対応する。この非会員向けの新サービスは、傘下のスーパーマーケットチェーン「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」の商品にも広げる予定だ。
Prime会員がFreshを利用する場合、1回の注文金額が100ドル(約1万5000円)を超えれば送料は無料になる。注文金額が50~100ドルの場合の送料は6.95ドル。50ドル未満の場合は、9.95ドルになる。これに対し、非Prime会員には、注文金額や配達時間枠によって7.9~13.95ドルの送料がかかる。
アマゾンは、直営食品スーパー実店舗「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」も展開しており、先ごろ、中西部イリノイ州シカゴの店舗を改装し品ぞろえを拡充した。今後は同様の改装をロサンゼルスの3店舗でも実施する。Whole Foodsも含むこれらの実店舗は、Freshサービスのピックアップや返品の場所にもなっている。
外部サイト向けPrime特典拡充
アマゾンは11月14日、小売業者向けサービス「Buy with Prime(バイ・ウィズ・プライム)」の機能を拡充したことも明らかにした。
(1)注文履歴の表示、(2)テキストチャットによる24時間顧客サポート、(3)返品の簡素化、などの年末商戦向け新機能を導入した。
アマゾンは22年4月から外部の小売業者にBuy with Primeを提供している。小売業者はこのサービスで、決済や商品保管、配送などの業務にアマゾンのシステムと物流資源を利用できる。具体的には、自社の電子商取引(EC)サイトの商品ページに「Buy with Prime(Primeで購入)」ボタンを設置できる。アマゾンのPrime会員がこれを押すと、自身のアマゾンアカウントで決済できる。アマゾンサイトと同様にPrime特典の翌日配達や翌々日配達を送料なしで利用できるほか、返品の際に送料がかからない。
一方、小売業者はアマゾンに対し、Primeサービス料やフルフィルメント料、保管料、決済手数料を支払う。アマゾンは「Buy with Primeを導入した場合、導入しない場合に比べ注文顧客数が平均25%増加するというデータがある」と説明している。アマゾンでのカスタマーレビュー(評価)を、外部業者サイトに表示する機能も提供しており、これは「買い物客の信頼と注文件数を高めるのに役立つ」(同社)という。
ネット通販でSNSと提携
ロイター通信によれば、アマゾンはネット通販事業で、写真・動画共有アプリ「SnapChat(スナップチャット)」を運営する米スナップと提携する。これにより、米国内の利用者はSnapChatのアプリにとどまったままアマゾンの商品を購入できるようになる。
SnapChatの画面にはアマゾンの商品広告が表示され、それをタップすると決済できるという。この広告内では、商品の詳細や価格、Prime対象商品、配達日数などを確認できる。アマゾンは米メタのSNS(交流サイト)「Facebook」や、写真共有サイトの米ピンタレストとも同様の提携を結んでいる。
SNSがショッピングの傾向に影響を及ぼすなか、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が独自のショッピングサービスを立ち上げている。アマゾンはSNSとの連携を進め、これに対抗する。
全米小売業協会(NRF)によると、米国では23年の年末商戦に2737億~2788億ドル(約41兆~42兆円)がオンラインで支出されると予想されている。これは、前年比7~9%の増加になる。
小久保 重信