旬な人が深くハマっている趣味について聞く連載。
第7回のゲストは、ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さん。
東京ヤクルトスワローズ愛を語ります。
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年間15回は神宮球場に足を運ぶ
メジャーデビュー10周年を迎えたロックバンド「クリープハイプ」。「文学性が高い歌詞」と評されてきた楽曲、そのほとんどの作詞作曲を手がけるのが、ヴォーカル&ギターの尾崎世界観さん。
2016年に作家デビューし、21年発売の『母影』が芥川賞候補に。東京生まれで、熱狂的な東京ヤクルトスワローズファンでもある。取材当日は全国ツアーの合間を縫い、今シーズン5回目となる明治神宮野球場での応援。試合開始は18時だが、15時頃からそわそわしてしまうそう。

©Nobuyuki Seki
「年間15回は神宮球場に足を運びます。初めて球場で試合を観戦したのは、1992年、小学2年生の時で、最初はヤクルトファンの父に無理やりヤクルト対巨人戦に連れて行かれたんです。
人も多いし、騒いでる人たちも怖くて、何なんだろうと不思議でした。野球のルールも分からなかったので、打った後にバットを高く放り上げている選手に周囲が異常に盛り上がっていたのも理解できませんでした。のちに巨人の原辰徳選手が9回に同点2ランを放って、興奮のあまりバットを放り上げた有名なシーンだと判明したんですが、その瞬間を内野席で後ろ側から観ていた記憶があります。
でも、その年はヤクルトが久しぶりにリーグ優勝をして、父から『週刊ベースボール』の優勝記念号をもらったのが嬉しくて、分からないなりに夢中で読みました」
野球の知識を詰め込み、その年の日本一を決める日本シリーズは、最終戦の第7戦まで全てテレビにかじりついて観戦した。
「初戦で、12回裏に杉浦享選手が代打サヨナラ満塁ホームランを打ったのがカッコ良くて。結果的に、ヤクルトは西武に負けてしまったけれど、どんどん野球にのめり込んでいきました」
翌年の日本シリーズも西武ライオンズとの対戦で、再び3勝3敗で第7戦へ。
「その日は、家に帰ると間に合わないので、学校帰りに商店街の電器屋のテレビで見ていました。ヤクルトが日本一になった瞬間、最後に投げていた高津臣吾投手(現ヤクルト監督)がキャッチャーの古田敦也選手と抱き合うシーンは鮮明に記憶に残っています」
“負け”を見せてくれるところに、自分を重ねて救われた
昨年、ヤクルトは20年ぶりに日本一となったが、尾崎さんは30年間ヤクルト愛を貫いている。
「野村克也監督の黄金時代もそれはそれで嬉しかったけれど、チームが弱っている時にこそ、より愛着が湧いてきたんです。自分自身うまくいかないことはたくさんあるし、特に中学生ぐらいからは自分を周りと比べて落ち込むことも増えて、この先どんな大人になっていくんだろうという不安が大きくて。
そんな中、プロ野球はシーズンを通して、何十試合負けようとも、最後には優勝するチームがある。プロの選手でも負けるんです。その“負け”を見せてくれるところに、自分を重ねてすごく救われました」
小学生当時、同級生には巨人ファンが多く馬鹿にされることもあったが、そんなところにも自分を重ねた。
「広島東洋カープのホーム、マツダスタジアムが真っ赤に染まるのが羨ましいです。日本シリーズでさえ、神宮球場には相手のファンが半分いて、一色に染まることはめったにない。悔しいけれど、完全なホームにならないのもヤクルトらしいところです。そんなヤクルトファンも含めて応援したくなるんですよね。
どこか控え目で独特な雰囲気があって、負けているのに笑ってご飯を食べていたり。そういうファンの人たちを見ているだけでも癒されるし面白い。昔はよく、試合だけでなく、外野席のファンを観察していました」
※続きは発売中の『週刊文春WOMAN vol.14(2022年 夏号)』にて掲載。グラビア写真も多数掲載。
Photographs:Nobuyuki Seki
Styling: Hiroaki Iriyama
Hair & Make-up:Satoshi Tanimoto
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(大西 展子/週刊文春WOMAN 2022夏号)
大西 展子