渋沢栄一が関わった企業、時価総額を合計したら一体いくら?

渋沢栄一が関わった企業、時価総額を合計したら一体いくら?

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/22
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2月14日、大河ドラマ『青天を衝け』の放送がスタートし、初回の視聴率が20%を記録して話題を呼んだ。吉沢亮さんが演じる今作の主人公は、明治から昭和にかけて日本経済をけん引した企業家・渋沢栄一(1840~1931)。「日本の資本主義の父」と呼ばれ、その生涯で数百の企業に関わったとも言われている。その中にはJR東日本、三菱UFJ銀行、電通、東京ガスなど、現在まで続く一流企業も少なくない。

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大河ドラマ「青天を衝け」公式ホームページより

そこでふと、疑問が生じる。渋沢栄一が現代の日本経済に与えたインパクトを金額に換算すると、一体いくらになるのだろうか。大河ドラマが放送され、2024年からは新1万円札の肖像になることが決定しているこの機会に、彼が日本経済に与えた影響を明らかにしてみたい。

現在まで続く171社を完全集計

生涯で500社以上の企業に関わったと言われる渋沢栄一。今回、彼が関係している企業をリストアップするにあたって、公益財団法人渋沢栄一記念財団が公開している「渋沢栄一関連会社名・団体名変遷図」を参照した。

同ページでは、「渋沢栄一が直接関わった会社・団体」として653の会社、団体を挙げている。そこで今回は「渋沢が関わっていた企業、あるいはその後継である企業の、現在の時価総額の合計を求める」ことを目標として、以下の3つの条件すべてに当てはまる171社を選び出し検討の対象とした。

1. 渋沢が関与した後、少なくとも現在まで一部事業が存続している企業
2. 社会福祉や慈善事業ではなく、営利を目的としている企業
3. 日本の株式市場に上場している株式会社、あるいはその持株会社

また株価と発行済み株式数については、Yahoo!ファイナンスの2月12日20時38分のデータを使用した。

なおこの試算は、今回限りの基準に従ってある意味「恣意的に」算出したものに過ぎない。他の方法はいくつも考えられるが、どれだけ細かく計算してみたところで、数百社の価値を正確に算定するのはほぼ不可能だろう。

そこで今回は、あくまでも「一つの試算を示す」ことを目標として、以上のような基準を用いて計算してみたい。

それでは渋沢栄一記念財団による分類を参考にしつつ、各企業の時価総額を見ていこう。

日本各地の「銀行の祖」

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渋沢が関わった金融・保険分野の企業

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まずは金融・保険分野から見ていこう。渋沢栄一と言えば、銀行のイメージが非常に強いのではないだろうか。彼は日本銀行を初め、第一国立銀行や日本勧業銀行など数々の銀行の設立に関わっていた。

中でもいわゆる「3大メガバンク」と言われる三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行すべてに、渋沢の後継企業が含まれているのは、驚くべきことだろう。

その他にも北は青森の第五十九国立銀行(現在の青森銀行)から南は第二十三国立銀行(現在の大分銀行)まで、日本各地にある地方銀行の前身にも関係している。

また保険分野に目を向けると、東京海上日動火災保険やあいおいニッセイ同和損害保険など、損害保険の大手が並んでいる。かつては日本徴兵保険や万歳生命保険といった、渋沢にゆかりある生命保険会社も複数存在したが、現在日本の市場に上場しているのはT&Dフィナンシャル生命保険を残すのみとなった。

これら47社の時価総額を合計すると、29兆1600億円に達する。単純な比較は禁物だが、これは千葉県や埼玉県の県内総生産を超える金額になる。この時点ですでに、渋沢が現代の日本経済に与えた影響は非常に大きいと言えるだろう。

全国の鉄道をほぼ網羅

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渋沢が関わった交通・通信分野の企業

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続いては、交通・通信分野だ。渋沢が生きた明治から昭和にかけては、日本各地で交通網が発達した時代だった。旧国鉄、現在のJRに限っても、JR東日本、JR西日本、JR東海、JR九州の前身の設立に関係しており、現JRの路線の大部分は、ルーツをたどると渋沢の関連企業に行き着く。

なおJR北海道と東京地下鉄(東京メトロ各線を運行する企業)のルーツである企業にも関係していたが、両社とも未上場のためカウントしていない。

一方、渋沢と関係がある私鉄も多い。関東では、東横線、田園都市線などを運行する東急が代表的だ。1942年から44年にかけて、小田急電鉄、京王電気軌道、京浜電気鉄道といった都心部の他の私鉄と相次いで合併したものの、戦後には元の各社に分離したため、今回は東急のみ集計対象としている。関西では阪急や阪神、京阪を運行する各社のルーツをたどると、渋沢が関わった企業に行き着く。

通信の分野では、1919年に成立した日米電信の創立委員を務めていた。こちらは1947年の解散、逓信省(当時)への吸収を経て、現在のKDDIへと至る。これら26社の時価総額を合計すると、18兆9500億円にもおよび、昨年12月、コロナ対策のために成立した第三次補正予算と同程度の額だ。

世界遺産とも関係していた

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渋沢が関わった軽工業分野の企業

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渋沢の前半生、明治時代初期の近代化のシンボルは、繊維産業を中心とした軽工業だったと言えるだろう。1872年の設立時に渋沢が事務主任を務め、2014年には世界遺産にも登録された官営の富岡製糸場は、後に民間へと払い下げられ、現在も片倉工業として存続している。

他にも日常生活で耳にする企業が多い。代表的なのは、大手飲料メーカーのアサヒ、キリン、サッポロ。この3社で国内ビールシェアの8割以上を占めており、日々口にする日本のビールにも実は渋沢が関わっている。

他にも繊維事業で有名な帝人や製紙業界大手の王子製紙、日本製紙など各分野の大企業がいくつもあり、これら27社の時価総額の合計は約11兆1800億円に達する。

日本のインフラを支えた男

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渋沢が関わった重化学工業分野の企業

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「軽工業の時代」にあたる前半生を終えた渋沢だが、その人生の後半では日本の重化学工業も大きな発展を見せた。当然ながら、渋沢が関係する企業もその一翼をになっている。

リストアップした31社の中でも特に目を引くのは、日本全国のエネルギー関連会社。東京ガス、大阪ガス、北海道ガスなど各地の都市ガス会社や、東京電力に中部電力といった電力会社が並び、大手インフラ企業のオンパレードだ。なお渋沢が発起人を務めた東京水道会社は、後に市営化されて東京市の水道事業の一部となっている。

そして工業分野に目を向けると、JFEスチールや三菱重工業、川崎重工業など大手メーカー、さらには5大ゼネコンの一角を占める清水建設や国内大手製薬会社の第一三共などがある。大規模な企業がひと際多い分野であるため、合計すると時価総額は18兆5000億円にも及ぶ。

身近にもある、渋沢ゆかりの企業

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渋沢が関わった商業・サービス業分野の企業

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銀行や富岡製糸場のイメージが強い渋沢だが、意外なことに商業やサービス業など身近なB to C企業のルーツにも数多く関わっている。小売りでは三越伊勢丹ホールディングス、ホテル業では帝国ホテルなど、その分野で「老舗」と呼ばれるような、歴史と伝統ある企業が多いの特徴だ。

ゴジラやTOHOシネマズでおなじみの東宝や、今回の試算の肝である日本の株式市場を運営している日本取引所グループなども、元をたどれば渋沢が関わった企業にたどり着く。この分野の24社の時価総額合計は約7兆7500億円で、東京都の予算を上回る。

第一次産業との意外すぎる関係

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渋沢が関わった第一次産業分野の企業

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先述の商業・サービス業同様に、渋沢との関わりが想像できない第一次産業。しかし上の表の通り、農業水産業や鉱業分野の企業のにも幅広く関わっている。中でも多いのは鉱山経営から出発した企業であり、現在では石油製品を精製、販売するENEOSホールディングスや、銅・アルミニウムの製錬、セメント製造で有名な三菱マテリアルなどがある。

特に興味深いのは、福島県と茨城県の炭鉱会社が合併して成立し、現在へと至っている常磐興産。企業名そのものよりも、福島県いわき市にある大型レジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営する会社と言った方が親近感がわくだろう。

農林水産分野では、魚肉ソーセージで有名な日本水産がある。実は真珠製品の販売で世界トップシェアを誇る御木本真珠の設立にも関わっていた渋沢だが、現在ミキモトは上場していない。

これら企業の時価総額を合計すると、約2兆円。ここまで10兆円越えの大台が続いたために少なく感じてしまうが、実は鳥取県の県内総生産より大きい。

マスコミ・広告会社も…

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その他の分野の企業

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渋沢栄一記念財団のホームページにて、旧植民地の企業をまとめた「対外事業」と、それ以外の「社会公共事業」の中から、現在後継の企業が株式会社として上場しているものを「その他」としてまとめた。

目を引くのは、電通グループと博報堂DYホールディングスという、二大広告代理店がリストアップされていること。もともと三井物産の機関紙的な役割を果たしていた中外物価新報にも援助しており、現在はテレビ東京系列の日本経済新聞として存続している。

これら6社の時価総額を合計すると約2兆1600億円。そのうち半分以上を電通グループが占めており、圧倒的な存在感を放つ。

上場していない、あるいは企業ではないため、今回の集計には含んでいない団体も多い。有名なものを列挙すると、毎日新聞や共同通信や時事通信、一橋大学に法政大学、日本赤十字社、さらには明治神宮と東京都の誕生にも関与していた。もはや日常生活において、渋沢栄一と無関係に生きていくほうが難しいのではないだろうか。

合計は、なんと約90兆円!

ここまで、渋沢栄一が設立に関係した171社の後継である企業の現状を見てきた。これまでに挙げた企業すべての時価総額を合計すると、「89兆7461億1530万8653円」になる。

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171社の時価総額合計

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約90兆円と言われてもピンとこないが、東京都の県内総生産が約100兆円程度。つまり渋沢栄一は、東京に匹敵するほどの富のルーツに関与していたことになる。

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171社のうち時価総額トップ10社

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また分類を越えて、現在の時価総額トップ10のランキングを作成すると、このようになった。やはり各業界でトップクラスに位置する名の知れた大企業ばかりが並び、渋沢の影響力の大きさを感じざるを得ない。あらためて「日本の資本主義の父」という呼称が、決して誇張ではないことがわかるだろう。

なお今回リストアップした企業の株は、どれも市場で実際に買うことができる。大河ドラマの放送を機に、この中から興味を持った「渋沢銘柄」を買ってみるのも一つの楽しみ方ではないだろうか

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