ジェーン・スー「不安の許容量が異なる社会でJリーグに続き『声援』が解禁になるためには」

ジェーン・スー「不安の許容量が異なる社会でJリーグに続き『声援』が解禁になるためには」

  • AERA dot.
  • 更新日:2022/06/23
No image

Jリーグに続き「声援」が解禁になるためには(イラスト/サヲリブラウン)

作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

*  *  *

839日ぶりに、Jリーグで声出し声援が条件付きで許可されたニュースを見ました。Jリーグファンのみなさん、おめでとうございます。

私の祝福を、軽率ではないかと訝しがる方も少なくないと思います。とは言え、声出し応援エリアを設け、観客の間にも十分と思われる距離を空け、データを取りながらの試験運転。東京都に関して言えば現時点での重症者数は少なく、解除を始めるに適切な時期と判断されるタイミングが来たのでしょう。

こういう時、頼りになるのは野球やサッカーなどの国民的スポーツです。その他のスポーツや音楽ライブで声出しはまだご法度で、見切り発車をするわけにもいきません。Jリーグの声出し応援エリアで取られたデータは運営と政府で共有されるとのことで、市民の不安を煽らないためにも、やはり順を追って解禁していくのが妥当なのでしょう。合理的かどうかは、また別の問題ですが。

情報を精査し、自分の意見をしっかり持つこと。いらぬ波風を立てぬよう、慎重になること。思考停止の末に、非合理的な判断を鵜呑みにするようなことがないこと。たとえ遠回りでも、丁寧に順を追っていくこと。社会という枠組みのなかで生きていくのに、どれも大切なことです。

しかし、これら要素のバランス取りが難しい。人によってもかなり比率が異なります。分断や対立の一部は、このバランス比の違いによるものだと、新型コロナウイルスが教えてくれました。

およそ2年が経過したいまも、「もう、いいじゃないか」「まだまだ気が抜けない」と、さまざまな声が聞こえてきます。持病の有無や従事する仕事の内容によっても、不安の許容量が異なります。一度罹患した私にも、軽症だったとはいえ不安は残っています。長い隔離期間が必要なのもネックです。どんなに予防しても、罹る時には罹ってしまうと身をもって理解しましたし。

個人的には小さなライブハウスで大きな声が出せるようになる日を心待ちにしていますが、どのタイミングで自分の漠とした不安が決定的に解消されるのか?を考えると、やはりそれは、治療薬が開発されて誰にでも処方されるようになる日なのでしょう。

飲食業やエンターテインメント業界の機会損失も甚だしいため、一日も早くその日がやってくることを願ってやみません。

○じぇーん・すー/1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中。

※AERA 2022年6月27日号

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加