
患者ごとに違う乳がんの手術や治療。どこまで知っている?(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
今年2月に乳がんが判明した38歳のライター、島田みゆさん。3月末には右胸の全摘手術を受け、現在は薬物療法中です。同世代の女性に乳がんのことを知ってほしいという思いで始めたこの連載では、さまざまな実体験を綴っています。第7回は罹患して初めて知った乳がんの種類、サブタイプやステージ、術後の治療方法などの複雑さについてです。(監修:みやびクリニック院長 日本乳癌学会乳腺認定医 矢加部文医師 ※本記事は調べた情報や担当医の話などを基に筆者が執筆した内容を、専門医が改めて監修したものです)
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乳がんには2つの種類がある
乳がんと聞くと、多くの人が「胸を全部取る(全摘)」「抗がん剤治療をする」というイメージを抱くかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。乳がんと一言で言っても、種類や進行度、サブタイプ、状態によって、手術の方法や薬の内容、抗がん剤の必要、術後の治療方法など、あらゆるものが細かく違ってきます。
まず、乳がんには「非浸潤がん」と「浸潤がん」という2つの種類があります。乳管の中にとどまっているものが「非浸潤がん」、乳管の外に出て成長しているものが「浸潤がん」です。
○非浸潤がん自覚症状:ない場合が多いステージ:0期転移:基本的にはない手術:あり薬物治療:不要
○浸潤がん自覚症状:しこりなどで気づくステージ:I~IV期転移:可能性がある手術:あり薬物治療:必要※必ずしも上記に当てはまらない場合もあります
「非浸潤がん」は早期で自覚症状がほとんどないことが多く、対してしこりやひきつれなど自分で気づく場合の多くは「浸潤がん」だといわれます。0期(ステージ0)の非浸潤がんなら、術後の薬物治療もなく手術もかなり小さい切除で済むのかと思いきや、乳管の外に出ていないからこそ内側で広がっている可能性があり、全摘を必要とされる場合もあるのです。
治療方法も性質はさまざま…乳がんのサブタイプやステージ
さらに乳がんには、サブタイプという分類があります。ホルモン受容体、HER2(ハーツー)、Ki67(ケーアイ67)というタンパク質を調べ、それが陽性(○)か陰性(×)か、数値が高いか低いかなどで、主として5つに分けられるのです。

【画像:Hint-Pot編集部】
このサブタイプによって、ホルモン剤や抗がん剤、分子標的薬など、どの薬が効くのかが異なります。また、抗がん剤を使用してから手術をすることもあれば、術後の再発予防のために抗がん剤治療をすることもあり、その投薬期間も薬によって変わります。
加えて、がんの進行具合は「ステージ」で分類されます。乳がんでは、がんの大きさ、リンパ節や他臓器への転移の有無や程度によって、0期(ステージ0)~IV期(ステージ4)のいずれかに当てはめられるのです。
こうした総合的な要素と合わせて、手術で胸を全摘する方が良いのか、部分切除でも可能なのか、術前術後にどの薬物治療を取り入れるのか、期間はどれくらい行なうのかなどを、主治医とともに決めていきます。
早期といっても拭えない不安
もちろん、早期であればあるほど予後が良いことは確かです。ただ、どんなに早期であっても胸から離れた臓器に転移する可能性もあり、手術や術後の薬物治療をしながら再発という不安を抱えていくことになります。
自覚症状がないステージ0期の非浸潤がんでも胸の全摘が必要になるケース、しこりが小さくても他の臓器に転移しているケース、主にホルモン療法のみと言われるサブタイプでも抗がん剤治療が必要なケース、しこりが大きくても抗がん剤が不要なケースなど……患者一人ひとりの病状によってさまざまなのです。
術式は? 乳房再建は? 検査結果から発生するさまざまな選択
前回の記事の一通りの検査を終え、結果を聞くため二度目の診察へ。私の診断結果は、以下の通りでした。
○病名:浸潤性乳管がん○サブタイプ:ルミナルA○しこりのサイズ:2.4センチ○リンパ節、他臓器への転移:なし○ステージ:IIA
ホルモンが大きく影響しているタイプのためホルモン療法が効果的、しこりの大きさや転移有無からステージIIAと診断されました。まず手術の術式(全摘か部分切除か)で放射線治療の有無が決まり、薬物治療という流れです。
ただし、これはあくまでも術前のもので、最終的なステージや薬物治療の方針は、術中のリンパ節生検と術後の病理結果で決まるとのことでした。
ここからまた、術式はどうするか、乳房再建をするかしないか(同時にするか、する場合は人工物か自家組織か)、手術のタイミングはいつにするか、卵子凍結をするかしないかなど、いろいろな選択が必要になります。

いろいろな可能性を信じて向き合っていくことが大切(写真はイメージ)【写真:写真AC】
乳がんは複雑 だからこそいろいろな可能性がある
私自身、自分が罹患するまで、乳がんのサブタイプやステージの決まり方などをまったく知らず、患者になって初めてその複雑さを知りました。周囲にこうした詳しい話をすると、ほとんどの人が同じように「まったく知らなかった……」と口を揃えます。
ケースバイケースではあっても、胸は残せるかもしれないし、取ってもきれいに再建できる。抗がん剤は不要かもしれないし、必要であっても期間は短いかもしれない。これまでになかった新しい薬が開発されて、今後の治療において定番になるかもしれない。
乳がんの治療は長く続きますが、単純に病気=悪とイメージするのではなく、こうしたいろいろな可能性を信じて向き合っていくことが大切なのだと思います。
島田 みゆ