お酒大好きな人気声優が難病「ALS」に罹患して変えた「食生活」

お酒大好きな人気声優が難病「ALS」に罹患して変えた「食生活」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/21
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ALS(筋萎縮性側索硬化症)を検索すると「感覚があるままに体が動かなくなる病気」という説明が多くあります。もう少し詳しい記事を探すと「筋肉が動かなくなってしまう」という説明がなされています。さらに「現在、効果の認定されている治療法が無い」と言われていることでも知られています。筋肉の治療法はないことをお話した前回に引き続き、体重減少が敵であると言われているALSの食生活やそれにまつわる考え方について、私の例をお話したいと思います。

先日公開したアニメ映画『魔女見習いを探して』。これは1999年から4年間放送された「おジャ魔女ドレミ」シリーズ20周年記念作品だ。おジャ魔女ドレミの声優陣はそのままに、森川葵さん、松井玲奈さん、ももクロの百田夏奈子さん、三浦翔平さんといった豪華な俳優陣が声優に名を連ねている。そして、当時のアニメ放送ではあいこパパを演じていた津久井教生さんも、映画にも出演している。ニャンちゅうとはまた違った津久井さんの声を楽しむことができるのだ。そういう新作映画出演の話や実際の声を聴く限り、この声の人がALSという病気に罹患しているとは思えない。

津久井さんが異変を感じたのは2019年3月のこと。突然歩きにくさを感じ、半年の検査を経て、9月にALSであることがわかったのだ。10月に公表し、現在では要介護4となったことはブログにも綴っている。その率直な想いを伝えている連載「ALSと生きる」、今回はお酒が大好きな津久井さんが今どのような食生活を送っているのかお伝えする。

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2020年の「ニャンちゅう」チームの皆さん。左から比嘉久美子さん、津久井さん、鎮西寿々歌さん 写真提供/津久井教生

津久井教生さん連載「ALSと生きる」今までの連載はこちら

検査前から言われた事

「そりゃ、飲み過ぎは駄目ですよ、でもほどほどであれば我慢をすることはありません」
これは検査前からALS罹患後にも医療関係者の方より何度か言われてきた、「お酒に関するアドバイス」です。そして付け加えてお酒に関しての質問をするとだいたい、「出来れば、この機会に止められるような方向にいければ良いですね」切り返されました。

私はお酒が大好きで、足の異常を感じてからも毎晩のように発泡酒の350ml缶を最低1缶飲んでいました。晩酌は習慣のようになっていて、そんなに深酒まではいかないものの、生活の一部になっていたといっても過言ではありません。ドンドン足が動かなくなるのを感じた時に「お酒が要因の1つではないか」と自ら疑ってしまったくらいです。

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毎晩の「プシュッ」が大好き。これが悪なのか…と思ったという 写真提供/津久井教生

しかし最初の整形外科の受診の時、飲んでいる量を聞いた主治医は冒頭のように「大きな関係性はない」と言ってきました。その後も関わった医師全員に、このお酒に関しての質問をしてきましたが、答えはほぼ一緒でしたし、即答に近い形で返ってきた記憶があります。

つまり、「お酒をやめる効果」よりも「お酒を我慢することが強いストレスになる」のであれば、そちらの方がマイナスと判断されたのではないかと思います。特にALSと言う難病は、ストレスを感じるとスイッチが発動する気がするのです。

医療関係の方たちは「駄目とは言わず、無理な事はしない方向にもっていきましょう」というアドバイスが多かったのです。

検査入院を機に「規則正しい食生活」を

杖を使わないと歩けなくなっていた検査入院直前まで、毎晩とはいかないまでもお酒はたしなんでいました。仕事終わりや稽古の終わった後は、さすがに転ぶことを考慮して飲まなかったですし、飲ませてもらえませんでした(笑)。仲間たちの優しさです。

「教生さん、病名がはっきりしたら飲みましょうね、付き合いますよ!」

こう言われてしまっては、足の状況に合わせてお酒に対するブレーキも効いてきます。それでも過度な我慢はせずに、深酒はせずに楽しく飲んでいました。

ただ、初めから主治医にいわれていることがありました。

「いずれにしても入院したら禁酒ですから」

そうなのです、検査入院での2週間から4週間はお酒が飲めるはずがなかったのでした。それも自分の中でわかっていたので、この入院時にあることを自分に対して計画していました。それは「毎日の朝・昼・晩の3回の食事をしっかりととる習慣を身につける」ということでした。

入院直前はなるべく体力をつけるために食べていましたが、それまで長い間私は、「朝食はコーヒー1杯」ということが通常でした。といっても食が細いということはありません。お昼ごはんから人の1.5倍くらい食べる大食漢ではありました。ただ、毎回の食事量のバランスがあまりにも悪かったのです。

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食べるときと食べないときの差が激しかった Photo by iStock

体重を減らさない習慣

歩けなくなり始めて、明らかに筋肉量が減り、3~4キロ体重が落ちました。特に入院前は如実でしたので、体重を減らさないようにするにはどうしたらいいか調べてみると「1回の量ではなく、朝昼晩の摂取が大切」と書かれていることが多くありました。

すでに何らかの難病である可能性があった私は、入院時に体重の推移と食欲に関しての話になるたびに「よく噛めるか?」「食事でむせないか?」という確認をされていました。この4週間余りの入院中は、そのようにきちんと管理され毎日3回の食事摂る習慣を身につけていったうえに、入院時の食事はすべて完食するという結果も残しました。

病院で出された1日の食事のカロリーは1800カロリー。運動をあまりしていない、私の年齢(当時58歳)に必要な標準のカロリーです。しかし、病院の食事はそれなりの量があります。何も動いていないと食欲がわかないので、食べられなくなります。そこでリハビリを全力でやるように心がけました。そうする事によって、動いてお腹をすかせ、ちょうど食べきって腹8分目の状態になるようにしたのです。

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ある日の病院ご飯。ここから自身の食生活見直しも 写真提供/津久井教生

自分の食環境がこういう状態だと把握したうえで、なるべく病院での食事だけで過ごす生活をスタートしていきました。始めは体重が徐々に減ったのですが、2週間を過ぎる頃には、体重が58キロ前後で落ち着いていきました。このラインがが暴飲暴食をしないで、そこそこ運動している時の私の体重の目安として、現在もなるべく守っています。

仲間のALSの患者さんからは「食べられるのは今だから、好きなものはしっかりと食べた方が良いですよ!」と強く勧められることが多くありましたが、好きなものを腹八分目食べることを心がけています。

そしてあれほど毎晩呑んでいたお酒に関しては、自分でも驚くほどに、入院中さほど飲みたいと思わなかったのです。結果、私の場合は入院を経て、「適度にお酒を飲む」ことが習慣になりました。これは自分でも想定外の好結果でした。

きちんと食べるために必要なこと

以前の連載でも書いた通り、主治医の方に「やってはいけないことはなんですか」と聞いた時、「自分の判断で好きなことをやってください」と言われたことがあります。その時はちょっとショックでしたが、はっきりと「そういう難病なんだ」と分かった瞬間でもありました。ただ単純に「やってはいけないことなんてありません、食べてはいけないものもないんです、好きなものを好きなだけどうぞ」となると、これは駄目です。出来る限りの体質改善や食事に対する興味を持って、少しでも進行を遅らせるようにしてきたのです。

今では、色々な食に関する文献が出ています。食と人間の関連についても個人差があることを含めて文献もたくさん目にすることが出来ます。これらのもので自分に合ったものを見つけていくことが大切です。「そのものの良さの説明」で判断するのではなく、「自分に良いのか?」「自分の病気に効いている実績があるのか?」「試すことが可能なのか?」も判断材料です。

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「食べる」は人生の楽しみにもつながる。そして美味しく食べるためには歯も大切 Photo by iStock

「良いと言われている飲食物はたくさんありますが、万人にではなくフィットする人に効くと考えた方が良い」と思うのです。

そうそう、食事のことを考える際に、私が思うに、とにかく歯の治療はやった方が良いです。
歯が万病のもとです。長生きの秘訣は80歳までに自分の歯を7割残すこと。などと言われていたりしますが、確かに歯の変調はALSの進行とともにあったような気がします。

ALSに罹患して生活の基盤を整えていくようになって、歯の不具合が顕著に感じられるようになりました。8年くらい前の親知らずの抜歯から始まって、必ずどこかに違和感があったようでした。この機会に奥歯を2本抜歯して口腔内の違和感をなくしました。治療を終えた6月以降は噛む力が安定し、首の違和感も減りました。

歯の治療はもっと早くにやるべきだったと思っています。

「食事を減らすこと」も必要な場合がある

私は10年以上前から定期的に食品やサプリメントを愛用していました。疲労を感じるとニンニクやショウガの入ったラーメンなどの食事を摂り、それから基本的に焼き肉。ご飯も大好きで、疲れると3合くらい食べてしまいます。自分としては食事でパワーアップを狙ったつもりです。

鉄・亜鉛・ブルーベリー・ルテイン・エビオス・ビタミン剤は毎日飲んでいました。他にも蜂蜜・青汁・野菜ドリンク・豆類など「健康に良い」と言われているものや勧められたものなども食べていました。確かに入院期間はお酒と同じようにこれらのサプリメントも摂取しなかったのですが、ALSに罹患してからはますます拍車がかかり、プロテイン・勧められた健康食品・試供品の健康食品など色々と手を出しました。摂取しなかったのはドリンク剤だけです。

良いと言われるものをとりあえず摂取する。そして「何が効いているか分からないけれども効かないよりもいいだろう」と考えていたのです。実際に周囲にもこんな話をしていたこともあります「治療法がないのだから、とにかく色々と試してみるしかない」と。

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こちらは田中真弓さんからの差し入れ。おやつも身体によいものを選んで送ってくれ涙が出そうに 写真提供/津久井教生

しかし夏くらいから、これらのサプリメントや食品をかなり絞って摂取するようにしています。これらのものが悪かったわけではありません、体調自体は良い感じで罹患から1年が過ぎています。しかしながら食生活の体調と違って「ALSの病状」は確実に進んでいるのでした。

現在は飲み水は炭酸水を中心として、コーヒーや紅茶など水分は自由にいただきます。お酒もたまにいただきますが、かなり酔うようになりました。食品ではニンニクやショウガは変わらずにアマニオイルとMCTオイル、そして友人ご本人が効くと確認した健康食品。

身体に良いと言われるもので、しっかりと素性の分かるものを試させてもらってきて、分かったことがあります。「身体にいいからALSに効果がある」ということはないのです。でも「ALS治療には効果がない」かもしれないけれど、食生活で体重維持や基本的な健康管理に直結する事はあると思います。自分に合ったものを模索していくことが大切なのです。

いま、私はALSの治療薬の開発に期待しつつ、できる限りの健康を維持しているのです。

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『魔女見習いを探して』の関弘美プロデューサー・佐藤順一監督(右上)、川崎公敬録音エンジニア(左上)とともに 写真提供/津久井教生

【次回は12月5日(土)公開予定です】

津久井教生さん「ALSと生きる」今までの連載はこちら

津久井さんが2020年9月から放送を開始した朗読動画。『魔女見習いを探して』のことや今のことを語ったYouTubeはこちら↓

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