なぜ中古車はコロナ・戦争で「品薄」になったのか? 1から学ぶ「物流グローバル化」の正体

なぜ中古車はコロナ・戦争で「品薄」になったのか? 1から学ぶ「物流グローバル化」の正体

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  • 更新日:2022/08/06
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中古車のイメージ(画像:写真AC)

エアコン、炊飯器、給湯器なども

車の中古市場がにぎやかだ。希望の車種が手に入らず、価格も高止まり状態にあるという。新型コロナとウクライナ情勢による半導体などの部品不足と、それに伴う新車の納期遅れがあるためだ。

【なぜ!?】中古車がコロナ禍で品薄状態に(画像7枚)

半導体は車だけでなく、エアコン、炊飯器、給湯器など数多くの製品に使われている。そのためこれら身の回りのものも品薄状態にあり、一部価格が高騰しているものもある。

海外での出来事が日本に暮らす私たちの生活に影響するのはなぜなのだろう。多くの場合、背景にあるのはグローバル化だと言われる。だがグローバル化とは一体何なのだろうか。

本稿では物流のグローバル化が世の中にどのような影響を与えるのかをあらためて見てみたい。

国から企業へ 貿易の担い手が変化

従来、メーカーと生産国は同一であることがほとんどだった。製造業者は自分でサプライチェーンを管理していたので、モノの動きはシンプル。貿易収支や国民の対外資産額がその国の経済的成功をはかる尺度とされていたのである。

その様子に変化が訪れたのは1980年代後半だ。国家間の関係は変化し、貿易は国から企業、特に大企業の果たす役割が増大する。企業はライセンス契約や合弁事業などの長期的パートナーシップ関係を結ぶようになった。

わかりやすいのはAppleだろう。

AppleといえばiPhoneやMacが有名だが、同社はテクノロジー企業であり製造業者ではない。Appleが担うのはiPhoneやMacの開発と販売であり、製造そのものは世界中のパートナー企業に委託しているからだ。

なぜ企業はパートナーシップ関係を結ぶのか

こうしたパートナーシップ関係のメリットは主に三つある。

ひとつは、自社工場を所有する必要がないため、投資額が少なく済むことだ。工場用地の取得や建設費用、工場で働く人の人件費などが不要になるため、全てを自社で賄うよりも競争力のある価格設定が可能になる。

ふたつ目は、事業の特定の側面に専念できることである。商品開発、材料の調達から製造、販売までの全ての工程を自社で行おうとすると、人も金も分散してしまいがちになる。特定の側面のみに事業を集中できれば、限られたリソースを活かせる。

三つ目はその結果、短期間で成長できることだ。

一方、部品や原材料供給側である製造業者のメリットも大きい。

Appleのようなグローバル企業のサプライヤーになることは、特定の部品を世界市場向けに大量生産できるようになることを指す。材料の調達コストが下がり、工場の稼働率が上がるためスケールメリットをとりやすくなるのだ。

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海上輸送による物流のイメージ(画像:canva)

モノの動きがグローバルになった背景

では、なぜモノの動きは変化したのだろう。そこには物流をとりまく環境の変化と、資本家からの要請があった。

かつて海上輸送はとてつもない燃料費がかかる上、天候や海賊で到着が左右される採算の合わない輸送手段だった。今となっては大量に運べる海上輸送の方がコスト面で有利なケースが多いが、陸上輸送の方が安全でコスト的に有利な時代もあったのだ。

しかし、技術革新や国際的な枠組みが整うことで、徐々に貨物輸送の信頼性は向上する。運賃が安くなり、輸入関税が撤廃されると企業は必ずしも自国で生産活動を行う必要はない。そして生産コストの安さで外注先を決めるようになった。

環境の変化に伴って、投資家からの要請も変わっていった。企業が土地や建物、研究施設や機械・設備などに資本を投じることが嫌われるようになったのだ。身軽な経営が好まれるようになった結果、アウトソーシングが進んでいったというわけである。

工場の建設場所にも変化が起きている。かつては鉱山や船で荷物を運び出しやすい河川や海のそばが好まれた。ところがいまは特定の国の特徴や立地条件はほとんど問題にならない。代わって企業を引き付けるのは、補助金などの政府による支援だ。

実際、2022年6月、国は熊本県に建設中の台湾の半導体メーカーTSMCの工場に4000億円を超える補助を決めた。県も周辺道路などの整備を行うという。

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テレワークで働くビジネスパーソンのイメージ(画像:canva)

人・サービスが場所にひも付かなくなる

このようにコストカットに有効な地球的規模のアウトソーシングだが、一部で揺り戻しの動きも起こっている。

関係者の多さや、発注から納品までのリードタイムの長さ、単一業者へ依存するリスクなどグローバル企業はサプライチェーン全体の持続性への対応を迫られている。

対応にはコストを伴うため、もはやグローバル・バリューチェーンの恩恵はそれほどでもないという認識が広がるようになった。2022年7月に米上院で可決された半導体法案は、そうした動きのひとつだろう。

しかし、全体の方向感としてグローバル化が弱まることはないと見られている。

すでに貿易は生産地で起こるという従来の考え方は崩れている。輸出品の中には、さまざまな国から調達した部品や発明が含まれており、もはや輸出がその国の経済状況を反映しているとは言いがたい。

似たような状況はサービスにも起こっている。国内ではリモートワークがよい例だろう。

今後起こりうる社会経済の変化は何か

2022年7月からNTTグループは、全社員を対象としたリモートワークを導入した。まだまだ少数派とはいえ、新幹線通勤や飛行機通勤できる企業の話題も耳にするようになった。

すると今後は統計のあり方も変わってくるかもしれない。現在、家計調査は都道府県別に算出されているが、必ずしもそこに住む人が地元の企業に勤めているとは限らないからだ。

人が場所にひも付かなくなったら何が起こるのだろう。社会情勢の変化に対応しつつ経済活動と個人の暮らしを両立できる方策が求められている。

参考文献:『物流の世界史』マルク・レヴィンソン著/田辺希久子訳、ダイヤモンド社

筒井永英(コーポレートライター)

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