「身を守ってくれるためのもの」応用神経科学者が解説する“ストレス”とのつきあい方

「身を守ってくれるためのもの」応用神経科学者が解説する“ストレス”とのつきあい方

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2022/11/25
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ストレスはなぜ起こるのか(写真/GettyImages)

嫌な出来事や人間関係などによる疲れ、イライラ、不安……。さまざまな原因で生じるのが「ストレス」。暗い話題が多かった今年、その頻度はより増えたのではないだろうか──。

「ストレスは、生物の必須システムです」。応用神経科学者の青砥瑞人さんは、そう切り出した。

「太古の人は、脅威になりうる未知のものに遭遇するたび、脳が『生命の危機だ』とアラートを発し、『Fight or Flight(闘うか逃げるか)』と呼ばれるストレス反応を起こすことで危機を回避し、生き延びてきました。その『危険だ!』と感じる状態が、ストレスの正体です。脳も進化していると思われがちですが、実は数万年前から大して変化していないのです」(青砥さん・以下同)

脳は、いまも生存するための機能に優れているのだ。

「たとえば、異質なものを“エラー”と検出し、粗探しが得意な『ACC(前帯状皮質)』という脳部位が発達しています。

このように、脳はネガティブなものに注意を向けやすい性質があるのです。“ストレス=悪”と決めつける前に、“身を守ってくれるためのものだ”という認識を持った方がいいでしょう」

人から「小心」「臆病」などと言われると落ち込んだりもするが、青砥さんは、「脳科学の観点だと、そういう人は危険察知能力や、他人を思いやる能力に長けていて、むしろ『強み』。ネガティブなレッテルを貼るのは、ストレスに対する理解不足です」と語る。

だが、古代人のように、野生動物に襲われたり、ほかの部族と争ったりといった、日常的な命の危険がなくなったいま、脳は新たな問題に直面している。

「現代は『VUCAの時代』といわれています。これは、

Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)

の頭文字で、『変化が激しく、世の中の仕組みが複雑化し、曖昧で不確実な情報にあふれている』現代社会を表した言葉です。

太古から変わらない脳は、当然、SNSやインターネットから流れる大量の情報の中でもネガティブなものに注意が向きやすい。つまり、情報を無自覚に浴び続けると、脳は処理オーバーとなり、ストレスがたまってしまいます。

しかも、脳はネガティブ情報には半自動的に反応するくせに、ポジティブ情報には、意識しないと注意が向きづらいようにできています」

解決策は、自分の「内側」に目を向けることだという。

「外側の世界(他人の評価や情報)ばかりに気を取られず、自分が本当に必要なものは何かを自分に問いかけ、取捨選択できる能力が必要です。

ストレスとうまくつきあうには、嫌な記憶を思い返すことをやめ、ポジティブなものに意識を向けるべきです。

なぜなら、嫌いな人を頭の中で思い返してストレスを作ってしまうのは、自分自身です。皮肉なことに、嫌いな人を思い返せば返すほど、細胞分子レベルで脳の内側にその人の記憶を刻み込んでしまうのが脳の性質だからです」

情報の氾濫は脳の退化につながる?

ストレスが平等なら、それをうまく処理できる人と、できずにためてしまう人の差はどこにあるのだろう?

「逆説的ですが、ストレスへの感受性が高い人の方がたまりにくいんです。早いうちから『おかしいぞ』と気づくことで、ストレスが大きくなる前に対処できるからです。

一方、ストレスに気づけない、あるいはなかったことにしようと放置してしまう人は、やがて手遅れになってうつ病を発症してしまうこともある。

世界的企業の経営者の多くがマインドフルネス(禅や瞑想で心を休める方法)を取り入れるのは、自分の内面と向き合い、内側が感じ取る力を高めているのです」

自分の内面と向き合わず、外側からの情報に頼ると、脳の働きにも影響が起こるそう。

「脳は強いシグナルに反応するため、スマホなどから流れる刺激的な情報に一喜一憂します。怖いのは、それに慣れてしまうと、ささやかなシグナルでは心を動かされなくなること。これは、脳の退化と言えるでしょう」

脳を退化させることなく、どうしたらハッピーに過ごすことができるのか……。

「脳の現象でいうと、瞬間的に脳細胞が活性化して気分が高揚し、時間が経てば失われる反応が『幸せ』です。それが消えたら、また満ち足りなくなります。

現代の私たちが目指したいのは、ささやかなことに幸せや満足を見出し、ポジティブな気持ちが持続する『ウェルビーイング』という状態です。

この場合、強いシグナルでしか幸せを感じられない人は、ささやかなことに幸せを感じられる人よりも“アンハッピー”といえます。ささやかな幸せには注意が向きづらい分、意識して能動的に見つけることが大切です。

ささやかとは『夕日がきれい』『おいしいものを食べた』など日常のことでいいのです。“ネガティブ好き”な脳の仕組みに抗ってポジティブな感情を脳に記憶させられれば、ささやかなシグナルに気づきやすくなり、前向きな思考が生まれ、脳も成長します。ストレスは、悪く捉えれば『ダークストレス』になりますが、『失敗にも学びがある』といい面を捉えれば、自分を成長させる『ブライト(明るい)ストレス』にもなります」

“ささやかな気づき”を取り戻す方法はあるのだろうか?

「私が実践しているのは、カレンダーを、ポジティブなことで埋めていく方法です。たとえば毎週月曜に、その週の空いている時間をワクワクできる予定で埋めていくのです。私の場合、一日をご機嫌に過ごしたいので、朝のルーティンを組み込んでいます。

具体的には、好きなお菓子を買う、推しグッズを作るなど、楽しく続けられることをたくさん入れていきましょう。慣れてくると、『今週も楽しみだ』と、前向きな気持ちが優勢になりますよ」

【プロフィール】
応用神経科学者・青砥瑞人さん/高校中退後、米国UCLA神経科学学部を飛び級で卒業。神経科学を心理学や教育学に結びつけ、新しい学び方や生き方を提案するDAncing Einsteinを創設。著書に『ハッピーストレス ストレスがあなたの脳を進化させる』(SBクリエイティブ)などがある。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/オオノマサフミ

※女性セブン2022年12月8日号

NEWSポストセブン

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